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経営者のためのコンサルティング > 経営に役立つヒント 第25回

経営者のためのビジネス講座

2017.9.12 働き方改革の実現と実行計画
-(第2回目)柔軟な働き方の実現と企業の対応など-

この文章は、株式会社名南経営コンサルティングによるものです。

※この文章は2017年7月31日現在の情報に基づいて作成しています。具体的な対応については、貴社の顧問弁護士や社会保険労務士などの専門家とご相談ください。

2017年3月28日に公表された「働き方改革実行計画(以下、本計画という)」※1の中で、企業への影響が大きい点とその対応方法について、第1回目は、時間外労働の上限規制と企業の対応について解説しました。第2回目の今回は、本計画において提唱された柔軟な働き方の実現と企業の対応などについて解説します。

※1:首相官邸「働き方改革の実現」
http://www.kantei.go.jp/jp/headline/ichiokusoukatsuyaku/hatarakikata.html

第2回目 柔軟な働き方の実現と企業の対応など

時間外労働の削減とともに求められているのが、柔軟な働き方の実現です。昭和の時代は、モーレツ社員と言われるような「男性」「総合職」「長時間労働」「全国転勤」という条件を満たす社員がモデルであり主力でした。しかし、非正規従業員の比率が約4割となった現在では、先のモデルのような無制約に働くことができる人材の母数は大幅に減少し、育児や介護、持病、障害といったように何らかの制約を持った従業員が多くの割合を占めるようになってきており、今後も増加するであろうと考えられます。そのため、柔軟な働き方ができる制度や職場環境が求められるようになってきています。具体的には、「働き方改革実行計画」においては、次のような働き方が挙げられています。

1. テレワーク

一つ目は、テレワークです。テレワークとは、「tele(遠方)」と「work(働く)」を合わせた造語で、会社のオフィスなど通常の勤務場所において就業するのではなく、例えば自宅などで、時間や空間の制約に捉われることなく働くことができる手段として、注目されています。特に、育児、介護、持病や障害などの制約を抱えており、通常の職場や勤務時間帯での就業が困難である場合であっても働ける手段としての活用が見込まれます。他にも、通勤時間の省略による効率化、災害発生時などにおけるBCP(事業継続計画)対策としても有効な手段として考えられています。

テレワークの形態としては、主に、「①在宅勤務」「②サテライトオフィス」「③モバイルワーク」の3つがあります。
「①在宅勤務」は、自宅においてパソコンや電話を使って勤務する形態です。
「②サテライトオフィス」は、通常の勤務先以外のオフィススペースで働く形態であり、例えば、利便性の高い主要駅の近くに専用オフィスを設置したり、複数社の共同利用でレンタルオフィスなどを利用したりするケースがあります。
「③モバイルワーク」は、顧客先や移動中、カフェなどさまざまな場所で働く形態です。

テレワークを導入する場合には、「①労務管理」「②労務環境・設備」「③セキュリティ」の3つの準備をする必要があるでしょう。
「①労務管理」については、会社の通常の職場であれば直接上司や同僚などの目が届く環境で働くのに対して、テレワークの場合はそれが見えないため、労働時間の管理や仕事のアウトプット、人事評価をどのように行うのかを考えておかなければなりません。その検討結果は、テレワーク規程などとして会社のルールとしてまとめておきます。
「②労務環境・設備」については、会社の職場ではない場所での就業となるため、社外で利用できるパソコンや携帯電話、インターネット接続環境などを用意することになります。また、サテライトオフィスでの業務を認める場合には、オフィス環境の設置やレンタルなどの準備も必要となります。
「③セキュリティ」に関しては、会社の職場とは異なり、在宅勤務であれば家族、モバイルワークであれば他者の往来があるような場所も就業場所となるため、会社貸与物品が自宅などで格納できる金庫などの用意をしたり、通信機器についてはセキュリティソフトなどを導入したりすることで情報漏えいが起きないような対策を講じておく必要があります。

政府は企業がテレワークを導入しやすいよう、ガイドラインを制定することで後押しをしていく予定です。また、2020年の東京オリンピック・パラリンピックの会期中は国内外の観光客が集まることで首都圏の公共交通機関のさらなる混雑が予想されることを見据え、2020年までの毎年、東京オリンピック開会式予定日である7月24日をテレワークデイと銘打ち、企業などが一斉にテレワークを実施する日として呼びかけがされています。

2. 副業・兼業

柔軟な働き方としてもう一つ挙げられているのが、副業・兼業の推進です。従来からの副業に対する企業の見方は、副業は疲労を抱え、本業に悪影響を及ぼす可能性があるものとしてネガティブな捉え方をすることが多く、実際に、中小企業庁の「平成26年度兼業・副業に係る取組み実態調査事業報告書」※2によると、中小企業の85.3%が副業を認めていないという結果となっています。しかしながら今回、副業に対する見方が見直され、副業において知識や経験、人脈を形成することが、本業との相乗効果を生み出すことが期待されるという副業のメリットに重点を置き、政府としては積極的に認めていくという推進の姿勢を取ることが示されました。

※2:http://www.chusho.meti.go.jp/koukai/nyusatsu/2016/161128kengyo1.pdf

企業としては、今後、副業を考える従業員が増えることを想定し、自社として副業を認めるのか否かをあらかじめ検討しておくべきでしょう。副業はメリットだけではなく、疲労の蓄積や情報漏えいの懸念などのデメリットもあるため、事前許可制にすることが一般的な対応になるでしょう。事前許可制にする場合、例えば、健康管理上の問題もあることから副業は1週間に一定時間内とすること、近隣の同業他社では働かないことなど、一定の制約を設けた上で許可し、それを就業規則に明記しておくとよいでしょう。

3. その他の重要項目

その他の重要項目についてもいくつか紹介します。

(1) 同一労働同一賃金

「同一労働同一賃金」とは、非正規雇用労働者の処遇差を改善するため、雇用形態に関わらない均等・均衡待遇の確保を行うものです。具体的な施策としては、雇用形態に関わらない均等・均衡待遇の確保に向けて、政府が2016年末にすでにガイドライン案※3を策定しており、それを基に法改正の立案作業を進めます。当該ガイドライン案においては、正規雇用労働者と非正規雇用労働者との間で待遇差が存在する場合に、どのような待遇差が不合理なもので、どのような待遇差が不合理なものでないのか、例を挙げて示されており、その対象範囲は、基本給・昇給・賞与・各種手当といった賃金にとどまらず、教育訓練や福利厚生もカバーされた内容になっています。同一労働同一賃金の法改正については、時間外労働の上限規制の導入と同様、2019年4月の導入を予定し、関係する法令を一斉に改正することで法制化される見込みです。現時点では、自社において、正規雇用労働者と非正規雇用労働者との間で待遇差が存在しているか、相違点の洗い出しをしておくとよいでしょう。

※3:厚生労働省「同一労働同一賃金ガイドライン案」
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/hatarakikata/dai5/siryou3.pdf

(2) 最低賃金の引き上げ

非正規雇用労働者の処遇改善施策の一つとして、最低賃金の引き上げが見込まれています。都道府県ごとに違いはありますが、2015年度の全国加重平均の最低賃金は798円でした。
今後、年率3%程度を目途として引き上げていき、最終的には全国加重平均で1,000円を目指そうとしています。この最低賃金の大幅な上昇により、最低賃金該当者の賃金引き上げが行われれば、時給が最低賃金よりも何十円か上位に位置している者であっても数年経てば最低賃金に飲み込まれてしまったり、最低賃金該当者の昇給率(年3%程度以上)に比べ、その上位に位置する者の昇給率が低かったりという逆転現象も起こりかねません。頑張っても頑張らなくても一緒、という職場環境となってしまう危険性があるため、昇給の在り方を含め、時給者の賃金制度について改めて考えておく必要があるでしょう。

(3) 2015年4月に国会に提出された労働基準法改正法案の内容

すでに2015年4月に国会に提出されながらも検討が棚上げとなっている、残業代ゼロ法案と批判された「労働基準法等の一部を改正する法律案の概要(下記図表)」についても、法案に修正をかけた上で今秋の臨時国会で検討がされる見込みです。特に企業への影響が大きいと考えられるものとしては、現時点では適用が猶予されている中小企業への月60時間超の時間外労働に対する高い割増賃金率(5割増以上)の適用開始が挙げられます。月に60時間超の時間外労働のある職場では単純にコストアップになってしまうため、時間外労働の上限規制への対応と併せて時間外労働の削減を行うことが望まれます。またもう一つは、一定日数の年次有給休暇の取得義務化です。年10日以上の年次有給休暇が付与される従業員に対して、そのうち年5日の取得が義務となるため、より一層、年次有給休暇が取得しやすい職場環境を創るとともに、特に例年取得がゼロやゼロに近い従業員については年次有給休暇を取らなければならないという意識改革をしてもらう必要があるでしょう。

労働基準法等の一部を改正する法律案の概要 拡大して見る

  • 出典:厚生労働省「労働基準法等の一部を改正する法律案の概要」
    http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/soumu/houritu/dl/189-41.pdf

4.最後に

今回の改定点の多くは、今秋の臨時国会に法案が提出され、順調にいけば、2019年4月の施行が見込まれています。新制度の施行まで2年を切っており、企業は、今のうちから本計画の内容を押さえて今後の対応策を検討し、具体的な取り組みに着手していくことをお勧めします。

【株式会社名南経営コンサルティング】

名南コンサルティングネットワークグループの一社として、幅広い顧客層にさまざまな経営コンサルティングなどを実践している。

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