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経営者のためのコンサルティング > 経営に役立つヒント 第32回

経営者のためのビジネス講座

2018.3.27 2018年度 中小企業向け優遇税制について

この文章は、税理士法人名南経営によるものです。

※この文章は2018年3月1日現在の情報に基づいて作成しています。具体的な対応については、貴社の顧問税理士などの専門家とご相談ください。

中小企業には大企業に比べて税制面での優遇措置が多く用意されています。今回は、中小企業向けの優遇税制のうち主要なものについて解説します。

1.法人税率の軽減

中小法人(※1)については、原則として23.4%とされている法人税率について、2019年3月31日までに開始する事業年度の年800万円以下の所得金額の部分が15%に軽減されています。

<図表1> 普通法人区分別法人税率表

区分 所得 税率
普通法人 中小法人 年800万円以下の部分 15%
年800万円超の部分 23.4%
中小法人以外の法人 全額 23.4%
  • (※1)中小法人とは、各事業年度終了時において次のいずれかに該当する法人をいいます。
  • 資本金の額または出資金の額が1億円以下の法人
  • ただし、大法人(資本金の額または出資金の額が5億円以上である法人等)による完全支配関係(100%の出資関係)がある法人および完全支配関係にある複数の大法人に発行済株式等の全部を保有されている法人を除きます。
  • 資本または出資を有しない法人

「中小法人」と、後で出てくる「中小企業者」とは必ずしも一致しないため、各制度の利用にあたっては注意が必要です。

2.欠損金の繰越控除の特例

青色申告書を提出した事業年度において欠損金が生じた場合には、翌事業年度以降に繰り越して控除することが可能です。中小法人以外の法人については繰り越した欠損金の利用に一定の制限があるのに対して、中小法人については、繰り越した欠損金の利用に制限はありません。
なお、欠損金の繰越期間については、図表2の通り2018年4月1日以後開始事業年度では10年間となります。

<図表2> 欠損金の繰越期間表

欠損金発生事業年度 繰越期間
2018年3月31日以前開始事業年度 9年
2018年4月1日以後開始事業年度 10年

3.欠損金の繰戻還付

青色申告書を提出する事業年度(当期)に欠損金が生じた場合、「欠損金の繰越控除の特例」制度の利用ではなく、その欠損金を欠損金が生じた事業年度開始の日の前1年以内に開始した事業年度(前期)の所得金額に繰り戻し、すでに納めた法人税から還付を受けることができます(図表3)。
この制度について、中小法人以外の法人は2018年3月31日までに終了する事業年度においては適用を停止されていますが、中小法人は適用が可能です。なお、2018年度税制改正において、中小法人以外の法人の適用停止措置は2020年3月31日まで2年間延長される予定となっています。

<図表3> 欠損金の繰戻し還付制度のイメージ

欠損金の繰戻し還付制度のイメージ

このほか、国税である地方法人税についても同様に、還付請求を行うことができます。
一方、欠損金の繰戻還付制度は、地方税である法人住民税や法人事業税については適用することができない点に注意が必要です。

4.交際費等の損金不算入の特例

交際費等については、原則として全額損金不算入とされていますが、2018年3月31日までに開始する事業年度においては、接待飲食費の50%の損金算入が認められています。
中小法人については、これ以外に特例として、2018年3月31日までに開始する事業年度において、年間800万円までの損金算入が認められています。ただし、接待飲食費の50%損金算入制度との選択適用となります。

なお、この制度は2018年度税制改正において2020年3月31日まで2年間延長される予定です。

5.特定同族会社の留保金課税の適用除外

特定同族会社については、各事業年度の留保金額が一定の留保控除額を超える場合に通常の法人税額に加えて、一定の留保金額に対する法人税額が加算されますが、中小法人にはこの制度が適用されません。

6.貸倒引当金の損金算入

中小法人以外の法人には、銀行や保険会社など特定の会社についてのみ貸倒引当金の損金算入が認められています。これに対して、中小法人には、業種などに関係なく貸倒引当金の損金算入が認められています。また、貸倒引当金の繰入限度額の計算は、貸倒実績率による方法だけではなく、業種に応じた法定繰入率による方法も認められています。

7.少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例

青色申告書を提出する中小企業者(※2)は、2018年3月31日までに取得等し、事業の用に供した取得価額30万円未満の減価償却資産について年間300万円を限度として取得価額の全額を損金算入することができます。この制度の特徴は、すべての減価償却資産が対象であり、また、中古品も対象となっているところです。ただし、中小企業者であっても、常時使用する従業員の数が1,000人を超える法人は対象外です。
なお、この制度は2018年度税制改正において2020年3月31日まで2年間延長される予定です。

  • (※2)中小企業者とは、次のいずれかに該当するものをいいます。
  • 資本金の額または出資金の額が1億円以下の法人
  • ただし、発行済株式総数等の1/2以上が同一の大規模法人(資本金の額もしくは出資金の額が1億円を超える法人または資本もしくは出資を有しない法人のうち常時使用する従業員の数が1,000人を超える法人をいい、中小企業投資育成会社を除く)に所有されている法人および発行済株式総数等の2/3以上が2以上の大規模法人に所有されている法人は除きます。
  • 資本金または出資金を有しない法人のうち常時使用する従業員の数が1,000人以下の法人
  • 常時使用する従業員数が1,000人以下の個人事業主

8.中小企業経営強化税制

青色申告書を提出する中小企業者が、中小企業等経営強化法の認定を受けた経営力向上計画に基づき、2019年3月31日までに一定の設備を取得等して、国内にある指定事業の用に供した場合には、その設備について即時償却または税額控除の選択適用が可能です。

<図表4> 中小企業経営強化税制の特例措置

  資本金3,000万円以下 資本金3,000万円超1億円以下
特別償却 即時償却 同左
税額控除(※) 取得価額×10% 取得価額×7%
  • (※)「中小企業投資促進税制」「商業・サービス業・農林水産業活性化税制」と合わせて当期の法人税額の20%が上限です。

(イ)指定事業の範囲

設備を事業の用に供する際のその事業が、次のいずれかの事業に該当することが要件となります。なお、その事業が主たる事業である必要はありません。

農業、林業、漁業、水産養殖業、鉱業、建設業、製造業、ガス業、情報通信業、一般旅客自動車運送業、道路貨物運送業、海洋運輸業、沿海運輸業、内航船舶貸渡業、倉庫業、港湾運送業、こん包業、郵便業、卸売業、小売業、損害保険代理業、不動産業、物品賃貸業、学術研究、専門・技術サービス業、宿泊業、飲食サービス業、生活関連サービス業、映画業、教育、学習支援業、医療、福祉業、協同組合(他に分類されないもの)、サービス業(他に分類されないもの)

電気業、水道業、鉄道業、航空運輸業、銀行業、映画業以外の娯楽業(例:遊技場業)などは指定事業から除かれます。また、性風俗関連特殊営業に該当するものも指定事業から除かれます。

(ロ)対象設備

対象設備は、図表5の生産性向上設備(A類型)または図表6の収益力強化設備(B類型)のいずれかに該当するもので、認定を受けた経営力向上計画に記載されたものになります。また、自社で利用する新品が対象であり、中古品や貸付用の設備は原則として対象外となります。
生産性向上設備(A類型)に該当することの証明のためには「工業会等の証明書」の取得が、収益力強化設備(B類型)に該当することの証明のためには「経済産業局の確認書」の取得が必要です。

<図表5> 生産性向上設備(A類型)

対象設備 取得価額要件 販売開始時期 生産性要件
機械装置 単品160万円以上 10年以内 旧モデル比で
生産性が年平均
1%以上向上
測定工具・検査工具 単品30万円以上 5年以内
器具備品(試験・測定機器、冷凍陳列棚など) 単品30万円以上 6年以内
建物附属設備(LED照明、空調など) 単品60万円以上 14年以内
ソフトウェア(※) 単品70万円以上 5年以内 不 要
  • (※) 設備の稼働状況等に係る情報収集機能および分析・指示機能を有するものに限ります。

<図表6> 収益力強化設備(B類型)

対象設備 取得価額要件 投資利益率要件
機械装置 単品160万円以上 経済産業大臣の確認を受けた
年平均の投資利益率5%以上の
投資計画に記載されたもの
工  具 単品30万円以上
器具備品 単品30万円以上
建物附属設備 単品60万円以上
ソフトウェア 単品70万円以上

ただし、これらに該当する設備であっても事務用器具備品、本店・寄宿舎などに係る建物附属設備、福利厚生施設に係るものなどは該当しません。また、医療保険業における「医療機器」と「建物附属設備」は例外的にこの制度の対象外になっています。

9.固定資産税の特例

青色申告書を提出する中小企業者が、中小企業等経営強化法の認定を受けた経営力向上計画に基づき、2019年3月31日までに一定の設備を取得等した場合、固定資産税が3年間にわたって1/2に軽減されます。
対象設備は図表7の通りで、工業会等の証明書の取得が必要になります。また、対象設備は新品が対象となるため、中古品は対象外となります。

<図表7> 対象設備

対象業種 対象設備 取得価額要件 販売開始時期 生産性要件
全業種 機械装置 単品160万円以上 10年以内 旧モデル比
で生産性が
年平均1%
以上向上
業種制限(※) 測定工具・検査工具 単品30万円以上 5年以内
器具備品 単品30万円以上 6年以内
建物附属設備
(償却資産に限定)
単品60万円以上 14年以内
  • (※)埼玉県・千葉県・東京都・神奈川県・愛知県・京都府・大阪府においてのみ制限あり。
    以下中小企業庁ホームページ参照
    「経営力設備等に係る固定資産税の特例に関する対象地域・対象業種の確認について」

    http://www.chusho.meti.go.jp/keiei/kyoka/2017/170404kyokakotei.pdf

なお、2018年度税制改正において、集中投資期間中(2018年度~2020年度の3年間)における中小企業の生産性革命を実現するための臨時・異例の措置として、償却資産に係る固定資産税を3年間にわたって「ゼロ~1/2」に軽減する特例を予定しています(図表8)。
この特例措置が創設されれば、現行の上記特例措置は適用期限(2019年3月31日)で廃止されます。

<図表8> 中小企業の投資を後押しする大胆な固定資産税の特例の創設

改正概要 拡大して見る

  • (出典)経済産業省「平成30年度 経済産業関係 税制改正について」平成29年12月
    http://www.meti.go.jp/main/zeisei/zeisei_fy2018/zeisei_k/pdf/zeiseikaisei.pdf P8

10.中小企業投資促進税制

青色申告書を提出する中小企業者が、2019年3月31日までに対象設備を取得等して指定事業の用に供した場合には、特別償却または税額控除の選択適用が可能です。

<図表9> 中小企業投資促進税制の特例措置

  資本金3,000万円以下 資本金3,000万円超1億円以下
特別償却 取得価額×30% 同左
税額控除(※) 取得価額×7% 適用なし
  • (※)「中小企業経営強化税制」「商業・サービス業・農林水産業活性化税制」と合わせて当期の法人税額の20%が上限です。

(イ)指定事業の範囲

設備を事業の用に供する際のその事業が、次のいずれかの事業に該当することが要件となります。なお、その事業が主たる事業である必要はありません。

製造業、建設業、鉱業、卸売業、道路貨物運送業、倉庫業、港湾運送業、ガス業、小売業、料理店業その他の飲食店(料亭、バー、キャバレー、ナイトクラブその他これらに類する事業を除く)、一般旅客自動車運送業、海洋運輸業及び沿海運輸業、内航船舶貸渡業、旅行業、こん包業、郵便業、損害保険代理業、情報通信業、駐車場業、学術研究、専門・技術サービス業、宿泊業、洗濯・理容・美容・浴場業、その他の生活関連サービス業、映画業、教育、学習支援業、医療、福祉業、協同組合、サービス業(廃棄物処理業、自動車整備業、機械等修理業、職業紹介・労働者派遣業、その他の事業サービス業)、農業、林業、漁業、水産養殖業

不動産業、物品賃貸業、電気業、映画業以外の娯楽業(例:遊技場業)などは指定事業から除かれます。また、性風俗関連特殊営業に該当するものも指定事業から除かれます。

(ロ)対象設備

対象設備は図表10の通りで、自社で利用する新品が対象であり、中古品や貸付用の設備は原則として対象外となります。

<図表10> 中小企業投資促進税制の対象設備

設備 取得価額要件 その他要件
機械装置 単品160万円以上 なし
測定工具・検査工具 事業年度の取得価額の合計120万円以上 なし
一定のソフトウェア(※1) 事業年度の取得価額の合計70万円以上 なし
普通貨物自動車(※2) なし 車両総重量3.5t以上
内航船舶(※3) なし なし
  • (※1)複写して販売するための原本や研究開発用ソフトウェアなどは対象外
  • (※2)道路運送車両法に規定する普通自動車で貨物運送の用に供するものが対象
  • (※3)取得価額×75%が対象

11.商業・サービス業・農林水産業活性化税制

青色申告書を提出する中小企業者が、アドバイス機関(認定経営革新等支援機関、商工会議所、商工会、都道府県中小企業団体中央会、商店街振興組合連合会など)から指導および助言を書面で受け、2019年3月31日までに対象設備を取得等して指定事業の用に供した場合には、特別償却または税額控除の選択適用が可能です。

<図表11> 商業・サービス業・農林水産業活性化税制の特例措置

  資本金3,000万円以下 資本金3,000万円超1億円以下
特別償却 取得価額×30% 同左
税額控除(※) 取得価額×7% 適用なし
  • (※)「中小企業経営強化税制」「中小企業投資促進税制」と合わせて当期の法人税額の20%が上限です。

(イ)指定事業の範囲

設備を事業の用に供する際のその事業が、次のいずれかの事業に該当することが要件となります。なお、その事業が主たる事業である必要はありません。

卸売業、小売業、情報通信業、一般旅客自動車運送業、道路貨物運送業、倉庫業、港湾運送業、こん包業、損害保険代理業、不動産業、物品賃貸業、専門サービス業、広告業、技術サービス業、宿泊業、飲食店業、洗濯・理容・美容・浴場業、その他の生活関連サービス業、社会保険・社会福祉・介護事業、サービス業(教育・学習支援業、映画業、協同組合、他に分類されないサービス業(廃棄物処理業、自動車整備業、機械等修理業、職業・労働者派遣業、その他の事業サービス業))、農業、林業、漁業、水産養殖業

風俗営業に該当するもの(①料亭、バー、キャバレー、ナイトクラブその他これらに類する飲食店業で生活衛生同業組合の組合員が営むもの、②宿泊業のうち旅館業、ホテル業で風俗営業の許可を受けているもの以外)は指定事業から除かれます。また、性風俗関連特殊営業に該当するものも指定事業から除かれます。

(ロ)対象設備

対象設備は、経営の改善に資する資産として、その交付を受けた経営改善指導助言書類に記載されたものが対象となります。自社で利用する新品が対象となるため、中古品や貸付用の設備は原則として対象外となります。

<図表12> 商業・サービス業・農林水産業活性化税制の対象設備

設備 取得価額要件
器具備品 単品30万円以上
建物附属設備 単品60万円以上

12.研究開発税制

青色申告書を提出する法人に試験研究費の額がある場合には税額控除が適用できます。中小企業者については、その税額控除率について図表13の通り、試験研究費の増加割合が5%を超える場合に優遇措置が設けられています。

<図表13> 中小企業者の税額控除率・税額限度額

  増加割合(※)5%超の場合
(2019年3月31日まで)
左記以外
税額控除率 12%+(増加割合-5%)×0.3
ただし17%が上限
一律12%
控除限度額 当期の法人税額×35% 当期の法人税額×25%
  • (※)増加割合=(試験研究費の額―比較試験研究費の額)÷比較試験研究費
    比較試験研究費=前3年度の試験研究費の平均

13.所得拡大促進税制

青色申告書を提出する法人が、2018年3月31日までに開始する事業年度において、従業員への給与等の支給を増加し、一定の要件を満たした場合には、税額控除の適用を受けることが可能です。中小企業者については、適用要件、控除限度額に優遇措置が設けられています。
なお、所得拡大促進税制については、2018年度税制改正において改組されたうえで2021年3月31日まで3年間延長される予定です。その内容については、「2018年度税制改正の大綱について」コラムの「1.所得拡大促進税制の改組」をご参照ください。

14.適用除外事業者

2019年4月1日以後に開始する事業年度から、中小企業であっても平均所得金額(前3事業年度の所得金額の平均)が年15億円を超える大企業並みの法人の場合には、その事業年度の租税特別措置上の中小企業向け特例措置の適用が停止されます。
この制度により、本コラムに記載した制度のうち中小企業の特例の適用が停止されるものは図表14の通りです。適用時期の前日に期限切れになる特例制度も掲載しています。

<図表14> 特例措置の適用が停止されるもの

税制特例項目 内容など
法人税率の軽減 年800万円以下の所得金額に対する税率15%の特例措置が対象、ただし2019年3月31日で期限切れ
貸倒引当金の損金算入 法定繰入率による計算方法が対象
少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例 2018年度税制改正で2020年3月31日まで延長予定
中小企業投資促進税制 現行制度は2019年3月31日で期限切れ
商業・サービス業・農林水産業活性化税制 現行制度は2019年3月31日で期限切れ
研究開発税制 中小企業者向けの特例措置が対象
ただし2019年3月31日で期限切れ
所得拡大促進税制 2018年度税制改正で2020年3月31日まで延長予定

以上、中小企業向けの優遇税制について主なものをご紹介しました。その他2018年度税制改正において中小企業の代替わりを促進するため、事業承継に係る税制の特例措置が創設される予定です。これらについては、「2018年度税制改正の大綱について」コラムの「3.事業承継税制の特例の創設」をご参照ください。

【税理士法人名南経営】

名南コンサルティングネットワークグループの一社として、幅広い顧客層にさまざまな経営コンサルティングなどを実践している。

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