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経営者のためのビジネス講座 > 不透明な時代の業績向上法 第1回

経営者のためのビジネス講座

2010.11.16現在の時流と業績を伸ばす戦略キーワード

この文章は、株式会社船井総合研究所によるものです。

はじめに

はじめまして。船井総合研究所の菅原と申します。私が所属する船井総合研究所は、1970年に船井幸雄(現・最高顧問)が設立した日本におけるマーケティング分野のコンサルティングにおいて草分け的企業であり、現在は、東証・大証一部に上場する日本でも最大クラスのコンサルティングファームです。
船井幸雄は、現在、船井総合研究所からは身を引いておりますが、現役の頃、企業の業績を伸ばす方法について、事ある毎に言っていたことがあります。それが、以下です。
「企業の業績を伸ばすことは簡単です。たった二つのことを実践すればいいだけです。一つ目は"時流に適応すること"、そしてもう一つは"経営原則も守ること"です。」
入社して間もない頃、上記を聞いたときに「業績を伸ばすことは簡単?!」というがよく分からないというのが本音でした。それから20年、経営コンサルタントとして経営の第一線でさまざまな経営者の方々に鍛え、教えていただいたことにより、上記の意味が少しだけ分かるようになりました。
それを、今後数回にわたり、この先行き不透明な変革期時代の業績向上法というテーマで記載させていただきます。

ここで1点だけ、根底にある一貫したテーマのみ記載しておきます。それは「景気は確かに悪く、何が起こってもおかしくない大変革期であるが、この変革期こそ中小企業にとっては最大のチャンスである」ということです。ただし、このチャンスを生かすには、あらゆる面で自社が"変革"しなければなりません。
たとえば、私どものご支援先事例を少しご紹介させていただきます。

・超営業会社から、わずか3年で口コミ70%超・売上げ2倍の会社変貌に成功したトップ・旅行不況・鳥インフルエンザをものともせず、破綻寸前の旅館がわずか1年で社員のリストラなしに、客数120%アップ、償却前利益額3千万円から約1億円にまで伸ばした会社のマーケティング・売上げ10億円の卸企業がわずか1年で1000社以上の新規取引開拓に成功した会社の仕組み・「そろばん」という衰退業種を成長業種に変貌させた会社の行動力・タクシー業界という不況業種の中、社員満足と顧客満足を徹底追及、社員同士の「ありがとうカード」が最高1人5000枚の会社にした社員育成法

皆さま、なんとなくワクワクしませんか?
上記は、すべて事実ですが、すごく難しいことを実施しているわけではありません。時流と経営原則に基づき、一つの方向性にむかって努力をされている会社です。これらの会社の成長に共通する要素を、成功ポイントとともに、今後数回にわたり解説させていただきます。

現在の時流を制する4つのキーワード

さて、第1回目の今回は、テーマである「時流」と今後5回にわたって記載する、この時流を制するキーワードについて、そのポイントと位置づけを記載していきます。

まず、皆さまが何よりも気にするのが「景気」でしょう。
日本国内の景気に関しては、2013年度まで、少なくとも後2年は悪いということを前提に経営を組み立てる必要があるようです。日本は、戦後9~10年のスパンで景気変動を繰り返しており、2013年までは景気回復は難しいと予測しております。(図1を参照)

(図1)景気循環図

まず、現在、最も危惧されている要素の一つが「円高」でしょう。この円高は中期的にみると進行する可能性が高いと船井総研では考えています。ただし、来年秋口までは、円高ながら、「中国を中心とした消費好景気」にかくれて安定するかもしれません。
しかし、2011年の秋口に、ヨーロッパもしくはアメリカを端にして急激なインフレが起こることも懸念されています。もし、それが起こると、世界経済は少なくとも1年間、停滞する可能性もあります。これとは逆に、「世界的な経済危機は脱した」との予測もあり、予測も真っ二つに割れている状況です。
予測は割れていますが、中期予測になるとこの数年は、相変わらず世界的に厳しい状況が続くのではないでしょうか。
そのため、中期的にみると、円高基調が予測されますし、株価・地価はダウントレンドにあるようです。逆に石油などの原材料や穀物、金(ゴールド)などは上がるようです。

このような環境の中、もう一度、日本国内に目を向けてみましょう。リーマンショックに端を発する世界不況は、現在でも回復しきっておらず、メーカーの生産状況も2008年における好調時の約8割程度の回復状況といえるでしょう。現在は、中国を中心とするアジア経済成長の波に乗り対応していますが、円高や国内不景気など先行きの不安感はぬぐえていない状況です。また、この円高に対して、国内メーカーの多くは海外生産シフトを強めようとしており、国内の空洞化は早まる可能性があります。そして、国内消費は不況感と相変わらずのデフレスパイラルにより、回復の糸口も見えていません。
書いている私が言うもの変ですが、何か暗い気持ちになってきますね。

しかしながら、この不況と変化を、先に紹介した会社のように、逆にチャンスに変えるキーワードがあります。それが以下の4つです。

ポイント1:トップに変化の覚悟があるか(まずトップが変わり、自社の変化を決断すること)
ポイント2:顧客は流動化している(流動化を最大のチャンスに変えるマーケティング戦略)
ポイント3:変化は現場で起こっている(現場社員が企業の差別化を行う)
ポイント4:時代はグレートカンパニーを必要としている

ポイント1 トップに変化の覚悟があるか

船井幸雄は「会社はトップで99%決まる」といっています。そのため、まず、トップが自社の顧客変化、環境変化に敏感になり、時流が激変していることを認識する必要があります。
その上でトップとして、自社の成長、事業の方向性をどう位置づけるかが重要です。その中で「さらなる成長路線」に軸足をおくという経営者もいるでしょう。たとえば、すぐ隣をみれば急成長を遂げる中国を中心としたアジア大陸が横たわっています。「中国進出はもう遅い」という声を聞きますが、中国はこれからであると思われます。これまで中国は「生産国」として捉えられてきましたが、これからは「一大消費国」に変わってきます。労働ではなく、消費地として捉えれば、その力を発揮するのはこれからであり、この時流に乗ることも可能です。
ただし、自社の成長における軸には、「量的成長軸と質的成長軸、そして本当にしたいことを経営として成り立たせる思いの軸」という3つの軸で構成されています(図2を参照)。これらの成長軸を自社でどのように位置づけ、決定していくかを「まず決めること」が重要です。そこには、事業戦略のあり方が大きく関わってきます。自社事業のあり方、成長の方向性を決定するのは、トップです。変化の時流だからこそ、自らも変わる必要があります。
この点に関して、次回の第2回で詳しくご説明させていただきます。

(図2)3つの成長軸

ポイント2 顧客流動化という時流をとらえるマーケティング戦略

先ほど、「不景気ほど、中小企業にとってチャンスの時はない」と述べさせていただきました。その最大の理由の一つが、「顧客の流動化」です。
たとえば、これまでお小遣いとして月5万円あったサラリーマンがいたとしましょう。それが不景気の影響を受けて、妻から「今月からお小遣い3万円ね。」と言われたとします。すると、これまで常連で通っていた店には行く回数を減らすか、もしくは通えなくなります。でも質は落としたくないので、同じ質でより安いところを探そうとします。つまり、一気に顧客の流動化が起こります。これは、好景気には起こりえないことです。この現象はあらゆる業界で起こっています。船井総合研究所では、業種別コンサルティング部隊を編成しています。そこで、各業界の専門コンサルタントに話をきいても、まず、出てくるのが「客単価ダウン」と「リピート率の低下=客数ダウン」です。小売・サービス業において、この2点は致命的といえます。
これが企業の財布に変わっても同じです。売上げがダウンすると、企業が真っ先に実施するのが、コストダウンです。景気は、そう簡単には回復しません。つまり収入が増えないのであれば、経費を削って利益を確保するしかなくなります。
まず、実施されるのは、今までの取引先の見直しです。特に、今回の不景気における特徴として、取引価格ダウンの要請ではなく、いきなり「あなたの会社とは、来月で契約を切らせてもらいます」と、バッサリきられる現象が出ています。つまり、顧客の流動化が一気に起こっているということです。 これは、逆にいうと大チャンスです。2番手以下のブランドがない企業でもシェアを大きく伸ばすことが可能です。そのため、いい商品・サービスに対して適正価格を打ち出せる企業に関して、思い切った営業戦略をとることをお勧めします。上手に新規顧客にアプローチできれば、自社の顧客層は一気に広がります。
特に対消費者向け(BtoC)マーケティングにおけるキーワードは、「バリュー(高品質低価格)とワース(こだわり)」といわれる価格と商品品質を中心とした展開方法です。
また、対事業者向け(BtoB)マーケティングにおけるキーワードは、産業構造上からの「上流対応と下流対応」といわれるビジネスモデルに関わる仕組みの転換です。
これらのマーケティング戦略について、第3回・第4回の2回にわたり詳しくご説明いたします。

ポイント3 変化は現場で起こっており、その最前線の現場社員が差別化を生み出す

"大変革期"というだけあって、現場における変化のスピードは、ますます早くなっています。いちいちトップが判断し、指示を出していては間に合いません。この変化を的確にとらえ、対応するには、何よりも現場社員が大きなポイントとなります。現場社員が、「変化をいち早くとらえ、自分の判断で、それに対応することができれば」企業の業績を大きく伸ばすことができます。この「変化をとらえ自ら行動する社員」をいかに育てるか、また、育てることのできる企業が今後の市場を制することができます。この重要性はご理解いただけることと思います。
これに反して多くの社長さま、特に中小企業の社長さまは、「自社の社員は自ら考え行動する力が弱い」と嘆きます。しかし、そうさせている本当の理由は、社員を信じ、任せることができないという会社の仕組みとトップの考えにあります。なぜ信じることができないのか、どうすれば任せ、自ら行動でき、ワクワク・イキイキ稼ぐ社員をつくることができるのか、ということを第5回ではご説明いたします。
とにかく、変革期のキーワードは、「変化の最前線にいる社員にある」ということです。

ポイント4 時代はグレートカンパニーへ

最後に、グレートカンパニー化について述べたいと思います。
今後、日本国内の企業数は、人口減少もあいまって、確実に減少していくことでしょう。それに関して、少し以下を考えてください。
これまで、100億円の市場規模がある業種があったとします。その市場に100社の会社が存在していました。単純計算で、1社1億円となります。これが、不況の影響で市場規模が一気に80億円にまで縮まったとします。すると企業数は何社になるでしょうか?また、1社あたりの売上げはいくらになるでしょうか?
答えは、市場規模に伴い企業数も80社(1社=1億円)ということにはなりません。また、100社がそのまま残り1社0.8億円ということにもなりません。多くの場合、一気に市場が収縮すると、顧客はより上位の企業に集中するという現象が起こります。おそらく市場に残る企業は50社程度になるでしょう。そうすると1社あたりは1.6億円に上昇します。つまり、残る企業のシェアが急上昇し、売上げも増加します。先にあげた企業が売上げを伸ばしている理由をご理解いただけますか?
その時に残る企業の特徴は、「その企業しかない価値を提供できる、またある領域で圧倒的1番をもっている企業」です。この大変革期に本当に市場に必要とされ、生き残る企業の本質とは何か、これを船井総研では、一言で「グレートカンパニー」と言っています。
「グレートカンパニー」とは、決して売上げ規模が大きい、利益の高い会社のみを指しているのではありません。市場に対して独自の価値観と商品を提供でき、社員もそれらを誇りに思いイキイキと働いている会社のことです
このグレートカンパニー化について、最後の第6回目に記載したいと思います。

以上、今後の連載に期待してください。

【筆者プロフィール】

菅原 祥公(すがはら よしひと)
1991年 株式会社船井総合研究所入社
2011年 株式会社船井総合研究所 執行役員 第二経営支援部部長

事業の方向性転換、新規事業の立ち上げなど、企業を新しい方向に導くためにマーケティングからマネジメントにいたるトータルでの事業計画構築およびその現場での展開を得意としている。近年では、不採算に陥った企業の事業再生やM&A先の企業バリューアップなどを現場で実践している。
著書に「最新ビジネスデューデリジェンスがよく分かる本」、「中期経営計画がよく分かる本」、「経営の極意」(共著)、などがある。

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