ホーム > 時代が求める企業テーマ >
経営者のためのビジネス講座 > 不透明な時代の業績向上法 第2回

経営者のためのビジネス講座

2010.12.14企業はトップで99%決まる

この文章は、株式会社船井総合研究所によるものです。

わずか3年で、超営業会社から口コミ顧客70%超・売上げ25億円から45億円の会社に変貌したストーリー

船井総研のご支援先に、今、全国から注目を浴びているリフォーム会社があります。今回は、ここから始めたいと思います。

この会社が創業した1995年当時、リフォーム業界は「プッシュ型」といわれる訪問販売的な売り方が中心で、「あやしい業界」とも言われていました。その中で、この会社は船井総研が提唱していたチラシなどの販促を利用して、リフォームに興味のある人から電話をかけさせるという「プル型」営業に着目し、急成長した会社です。また、アイデアマンであった社長は、商品をより買いやすくするために、価格不透明なリフォームを「パッケージ商品」にして価格の明瞭化に取り組み、その相乗効果で爆発的にヒット。当時は、電話の鳴り止む時がないほどの盛況ぶりだったそうです。

その勢いで、創業から10年たたない間に売上げ40億円、従業員数も150名を超える成長を遂げました。このような絶好調な時期に、大事件が起こります。 それは、社長が友人の運転する車で高速道路を走っていた時に起こりました。気が付いた時には、社長は病院のベッドの上にいました。そうです。交通事故です。結局、社長は1年間近くの入院を余儀なくされました。それだけでなく、事故の後遺症で一時的な記憶喪失にもなり、お見舞いに来られる社員の顔も名前も分からない状態だったそうです。
会社の方はというと、優秀な右腕がいらっしゃったおかげで、売上げも落とさず、順調に回っていきました。
この病院のベッドの上で、社長の頭からある一つのことが離れなかったそうです。それは、
「売上げの増加に伴い、クレームも急激に増加する」
という現象でした。売上げを優先するためにやや強引な営業を実施することや、お客さまのニーズを捉えきらないまま施工を実施するということも少なからずあったようです。
「自分の会社は、世間一般には順調に成長しているように見られているが、それが本当にお客さまにとって、また、社員にとっていいことなのか?」何度も考えたそうです。「これが本当に自分の創りたかった会社だったのか?」と。そして、ある結論に至りました。
「会社の方向性を変えよう!」

1年後、会社に復帰した社長は、まず全社員を集めました。社員は社長復帰を喜びながら、第一声を期待しました。そこで発した内容が以下です。
「当社は、環境と人に配慮した会社に変貌します。そのために、まず、当社の取り扱う商品から環境や人体に悪影響を及ぼすと思われる素材は一切使わないことを宣言します。また、営業も価格一辺倒のチラシ反響型営業から脱却します。」
この発表を聞いた社員の中には「交通事故で頭がおかしくなったのでは?」という社員もいるほどで、社員の間には大きな動揺が走りました。最も反対したのは営業側の社員です。
これまで自社が大きくなってきたのは、低価格のリフォームと強い営業力であるのに、それを捨てるのか!
そんな環境配慮型リフォームの市場などまだ存在していない。そんなことをすると仕事が取れなくなる!

社長は、そのような社員の反対にあいながらも、強引に変革に着手していきました。その結果、どうなったか。

同社を取り巻くリフォーム環境も、悪いことに偽装建築や強引なリフォーム営業に対するバッシングなど、業界全体の向かい風も重なり、売上げが50億円に届く状況まできていたところが、一気に半減。社員も半数近くが離れていったそうです。辞めていく社員は、「この会社はもうつぶれるよ」と口を揃えて出ていきました。

しかし、社長はそんなことにもめげず、取り扱い商品をすべて環境配慮型にし、自社オリジナル商材の開発も実施。また、リフォーム売上げの一部を世界の環境保全基金に回す活動などを着々と実施していきました。さらに、営業においてもお客さまの要望を徹底的に聞いて対応するための来店型店舗を構築し、デザイナーを多く雇うことも実施しました。
その結果、一般的な安売り競争からは脱却、客数こそ減ったものの、
客単価は100万円程度だったのが200万円へと急上昇。また、面白いことに客単価が上がっていくごとに顧客の満足度も向上していきました。その結果、「口コミ」も右肩上がりになり、売上げに関しても、3年で最盛期の売上げに迫る実績にまで回復しました。

現在では、そのリフォームが全国的にも認められ、数々の賞を受賞するとともに、販促に頼らない「口コミ顧客率70%」と誰もがうらやむ会社に変貌を遂げました。

この変貌ストーリーは、実話です。
さて、今回、皆さまにお伝えしたいポイントは、「トップの決断」と「企業成長の方向性」ということです。
この企業におけるポイントを少し整理してみましょう。

ポイント1:トップが会社のあるべき方向にむかうための大きな決断をした
ポイント2:方向性や理念を概念に終わらせるのでなく、徹底的に現場に落とし込んでいった
ポイント3:他社にない独自性を徹底的に追求し、伸ばした

トップに変化の覚悟があるか

船井幸雄は「会社はトップで99%決まる」と言っています。
先の事例でも分かるように、数百人の会社でもトップの決断一つで、会社の方向性を180度転換することも可能です。
トップは、自社の取り巻く環境と自社の状況を加味しながら、自社の成長、事業の方向性をどう位置づけるかが重要な業務となります。特にこのような変化の激しい状況下では、その舵取りも難しいでしょう。ましてや事例企業のように、これまでの「成功要因」を否定して全く違う方向性に向かうということは実際には難しく、極端な例かもしれません。
しかしながら、今一度、自社の方向性を考えてみてください。そして、
トップの決断一つで会社は変わる
ということを認識してほしいと思っています。
皆さまもご存知のように、国内産業に関して日本経済が右肩上がりで成長していくストーリーは、現在の政治・経済下では考えられません。輸出産業に関しても、円高や中国問題、メーカーの国内工場から海外へのシフトなどを加味しても、やはり国内での経済成長は難しいかもしれません。
支援先では、よくこのような話をさせていただきます。
図1をご覧いただきながら、この説明をお聞きいただければよりご理解いただけることと思います。
仮に100億円の市場があり、そこに参入している企業数が100社という分かりやすいマーケットがあったとしましょう。単純計算で1社1億円となります。
【問題です!】
この市場が環境の変化で、80億円にまで縮小したとします。その場合の参入企業数は何社に変化するでしょうか?

少しお考えください。
100社のままで80億円の市場を分け合うでしょうか?それとも市場縮小と同じスピードで企業再編がおこり、80社に落ち着くでしょうか?それともさらに企業数の減少が加速するでしょうか?
これは、現在の日本市場を表していると思っていただいても結構です。リーマンショック以降の日本は、回復したといえども、約8割経済になっており、そこからの回復は見えません。
その答えですが、このように考えています。市場が収縮した場合、顧客は一番企業に集中するという傾向に拍車がかかります。そこで体力のない企業は、つぶれるか、上位企業の傘下に入るしか残れなくなります。
その結果、市場に参入している企業数は半数ほどになると予測します。
これを計算すると分かりやすく、1社=1億円から80億円÷50社=1.6億円となり、市場全体は収縮しても、逆に市場に残っている企業の規模は大きくなります。この50社もさらに集約されていくことになります。

(図1)市場縮小に伴う企業数の変化

時流適応力相応一番戦略

これが、日本の市場における現状と認識してください。
ここで重要なことを一つだけ記載しておきます。
それは、船井総研のマーケティング原則である
時流適応力相応一番戦略
というものです。時流の変化に常に適応しながら、自社の持てる力相応で一番を取れるものを育てることに集中する戦略をさします。
もうお気づきの方もいると思いますが、先の市場変化に伴い、市場に残ることのできる企業の条件を考えてください。
市場が縮小していくと、顧客は「一番企業に集まる」
という現象です。しかしながら、市場において規模で一番になれる会社は、「たったの1社」しかありません。船井総研では、すべての企業に規模で一番になれとは言っていません。これは、現実的に不可能です。しかし、顧客に認められ時流の変化にも対応し、生き残る方法があります。それが
力相応で一番を目指す
ということです。何も規模で一番になる必要はありません。その会社が持っているものの中で、独自固有の長所を探し、それで一番を目指すというものです。これなら、あらゆる企業がチャレンジできます。

3つの成長軸

そこで、もう一度、自社の成長軸というものを考えてください。
会社における成長軸は、「量的成長軸」と「質的成長軸」、そして本当にしたいことを経営として成り立たせる「思いの軸」という3つの軸で構成されています(図2を参照)。
これらの成長軸を自社でどのように位置づけ、決定していくかを「まず決めること」が重要です。そこには、事業戦略のあり方が大きく関わってきます。自社事業のあり方、成長の方向性を決定するのは、トップです。変革期の時流だからこそ、自らも変わる必要があります。
それでは、まず「量的成長軸」を考えましょう。企業は会社を維持していくために最低限の「売上げ」を確保する必要があります。急速な成長が望める市場は、日本国内にはそれほど残っていません。このような中、自社の量的成長をどこに見定めるかということを、「まず決めなければ」なりません。
次に「質的成長軸」を考えましょう。自社が生き残るためには、顧客に提供する商品やサービスといった内容・質を常に向上していかなければなりません。しかし、そこにも自社の売上げ規模の中でできる限界があります。購買は「価格と価値のバランス」で決まります。質をとことん高める代わりに価格もとことん高くすると、その商品は売れなくなります。特にメーカーにおいては、この品質へのこだわりは並ではありません。しかし、自社の力の中で、できること、目指す方向性は、しっかりと定めておかなければならないでしょう。
そして、最後に「思いの軸」です。トップが本当に自社で実現したいこと、自社を通して社会に貢献したいこと、を極めていく軸です。しかしながら、思いだけが先行してしまうと企業は成り立ちません。そこで、この思いの軸に以下の条件を加えてください。
会社というものは、「法人」というだけあって、人格があります。その企業が世の中に誕生したからには、その会社にしかできない貢献ポイントがあるはずです。それは、必ず会社の中に存在しています。それが強みであり、独自固有の長所と呼んでいます。これを伸ばすことが、結果的に先に述べた
「力相応一番=その会社にしかできないことで市場に貢献し、一番と認められる」
にいきつきます。
先の会社は、極端な例に映るかもしれません。しかしそこには、力相応一番を目指し、それに成功した結果であり、他の会社ができないということではありません。
もう一度、先の会社を検証してみましょう。トップの決断で、量的成長を一旦ストップさせ、思いの軸達成を加速させました。その結果、成長軸は一時期マイナスになったものの、まわりの企業が実現できていない「環境配慮型リフォーム」という独自の一番領域を創り出し、それに共感する顧客がそこにしかないために、放っておいても集まってくるという好循環を生み出しているのです。
もう一度いいます。確かに量的成長は重要です。しかし、市場の変化に応じて、自社にしかできないポイントがあるはずです。その成長も考えてみてください。
「甲子園で優勝できる高校は1校しかありません。市場においても規模で一番になれる会社は1社しかありません。でも力相応で一番になれる領域は、会社の数だけ無数にあります」

(図2)3つの成長軸

【筆者プロフィール】

菅原 祥公(すがはら よしひと)
1991年 株式会社船井総合研究所入社
2011年 株式会社船井総合研究所 執行役員 第二経営支援部部長

事業の方向性転換、新規事業の立ち上げなど、企業を新しい方向に導くためにマーケティングからマネジメントにいたるトータルでの事業計画構築およびその現場での展開を得意としている。近年では、不採算に陥った企業の事業再生やM&A先の企業バリューアップなどを現場で実践している。
著書に「最新ビジネスデューデリジェンスがよく分かる本」、「中期経営計画がよく分かる本」、「経営の極意」(共著)、などがある。

ページの上部へ
総合受付はこちら
メールニュースお申し込み