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経営者のためのビジネス講座 > 縮小均衡時代における売上拡大ビジネスモデル 第1回

経営者のためのビジネス講座

2012.9.18待機児童80万人時代に 成長する次世代型保育施設

この文章は、株式会社船井総合研究所によるものです。

はじめに

さて、私が所属する船井総合研究所は、1970年に船井幸雄(現・最高顧問)が設立した日本におけるマーケティング分野のコンサルティングにおいて草分け的企業であり、現在は、社長である高嶋の下、東証・大証一部に上場する日本でも最大クラスのコンサルティングファームです。
船井総合研究所は、創業以来、お客さまの業績向上にこだわり続けてきたマーケティングを主体としています。その中でも、特に業種・業態ごとの成功モデルというものを見出し、そのビジネスモデルをパッケージ化することで、多くの企業に導入いただけるようにすることに力を注いでいます。それを船井総合研究所「ズバリソリューション」と呼んでいます。
6回に渡る連載では、毎回1つのソリューションを紹介させていただきます。一定の業種やテーマに特化した内容となっており、皆さまには当てはまらない事項も多々あることと思います。しかし、どれもかなりの確率で成功を収めているものであり、そこには、時流と経営原則に即したポイントがあります。そのポイントをつかみ、経営に活かしていただければ幸いです。

待機児童80万人時代の裏側

今回、ご紹介させていただく内容は「次世代型保育施設」です。幼児向け施設は、大きく3つに分かれます。厚生労働省管轄の「保育所」と文部科学省管轄の「幼稚園」、そして届出のみの「託児所」(※俗に無認可保育所とも呼ばれる)です。近年では、小学生を放課後預かる「学童保育」という領域も出だしています。
子供の出生数は、1970年前半の200万人台から、現在は100万人程度と、この40年間で半減しており、その影響は、あらゆるところで出ています。このような減少マーケットの中で、実は保育業界は活況で、民間の保育サービス市場は毎年2桁成長をしています。共働き世帯が急増していることが理由です。核家族化が進み、両親に預かってもらうこともできないといった背景もあります。
また、0~5歳の子供のいる共働き世帯数は2004年に164万世帯であったのが、2009年には184万世帯に増加しているとも言われており、2020年にはそれが220万世帯になると試算されています。国が認可した保育所に入れない待機児童も年々増加しています。この数は2010年の公開数字で26,275人です。厚生労働省は、潜在的な待機児童数は80万人を超えていると推測しています。国も対策を行っていますが追いついていません。このため市場は今後も拡大していくことが予想されています。

従来型保育ビジネスの採算性

従来型保育ビジネスの経営実態について触れておきます。まず、保育と教育の中間に位置する幼稚園の経営は、少子化の影響をもろに受け、非常に苦しく採算面で苦戦しているところが多く出ています。
これに対して「認可保育所」は、都道府県からの委託事業となるため、採算割れすることもほぼないという状況です。各地域での需給バランスをみながら参入許可をしているため、簡単に参入することもできません。(※逆にいうとぬるま湯につかっているともいえます)
これに比べ、無認可保育所は、需要は大きいものの、採算をあわせるのが難しいという事情があります。一般に民間企業が保育に参入する場合、認可保育所の認可を取りにくいため、どうしても無認可保育所での参入になります。公的補助金がないため、民間の無認可保育所は認可保育所に比べ料金が高くならざるを得ません。
地域やその世帯年収によって料金相場は違いますが、たとえば1カ月3万円程度で認可保育所に預けられる地域であれば、無認可はその倍近い6万円で料金設定されている場合が多いのです。よって、待機児童が多くない地区だと、無認可保育所は敬遠されてしまうので採算をとることが難しいのです。
また、教育サービス産業全体を見ると、既存の英会話や水泳、カルチャースクールといったスクールビジネスは競合が多く、少子高齢化問題もあり、激しい生徒の獲得競争が起きています。生徒の早期囲い込みによる見込み客作り対策と、増加している共働き世帯の子供の預かり需要への対応は今後の課題となっているのです。

保育と教育の隙間を埋める新しいビジネスの可能性

こうした教育サービス産業全体の課題と、保育業界の課題を踏まえたソリューションが、船井総合研究所の提案する「教育特化型の保育所事業」です。
このソリューションの特徴は、公立や私立保育所とは異なり、教育性が高く、圧倒的な専門性を持った教育プログラムを導入するところにあります。特に保護者からの人気が高く、多くの園で満員になっているのが子どもの将来を見据えた「英語教育」を主体とした保育所であり、外国人の先生とバイリンガル保育士がタッグを組み、日常生活の中で自然に英語に触れながら過ごすスタイルです。「将来、グローバルで活躍できる人材育成」をコンセプトに日本文化を織り交ぜながら国際感覚を身につけています。
また、それ以外の特徴としても、保育所でありながら幼稚園のように短時間預けるコース、小学校低学年を預かる学童保育コース、英語の強みを活かし、子どもから大人まで通える英会話スクールコースなど、公立や私立保育所ではできない機能が複合されています。
ちなみに、補助金がでる保育所や幼稚園は、法律の縛りがきつく、自由なカリキュラム設定や短時間の受け入れなどは簡単にできない状況下にあります。そこが、「空白マーケット」といわれる由縁です。
下の【保育事業マップ】を見てください。保育価値と教育価値で区分した図です。保育所は、文字通り保育が中心、現在の託児所も同じで、さらに教育的価値は低い上に金額が高くなっています。それに対して、幼稚園は保育価値がやや低くなりますが、教育的価値は保育所より高くなります。そして、習い事は教育的価値に付加価値を置いています。ただし、最近の傾向として、教育的価値とは別に、子供を預けて、お母さんがその時間だけでも自由になりたいというニーズも出てきています。
現在は、まさしく少子化です。そのため、一人の子供により多くのお金をかけるようになってきています。また、女性の社会進出は高まり、生活が苦しくなくても働きに出たい層が確実に増加しています。そのため、この保育価値と教育的価値の両方を兼ね備えたマーケットが成長してきています。
私どもの予想では、今後10年は、確実にこの市場の成長が見込めると読んでいます。

しかも、この市場の魅力はもう一つあります。今、話題になっている消費税問題ですが、実は、増税の使い道の一つとして「待機児童対策」にその一部をあてることが発表されています。いくつかの柱はありますが、その一つに無認可保育所(登録は必要)といわれているところにも補助金を出そうという内容です。これは平成27年度以降の施策案ですが、当然、保育実績のあるところに出されるので、今から参入しておけば、のちに補助金が見込めるというわけです。このため、徐々にですが、この市場に参入する企業が増加し始めています。
また、その後の事業展開としては、直営の多園展開だけでなく、「BtoB保育」といわれる病院や企業内保育所の業務委託展開があり、直営施設をフラッグシップとして展開するパターンも市場が拡大しています。
この市場は、まだ、ニッチマーケットといわれる領域です。しかし、現在の日本において、数少ない成長マーケットであることも認識してください。

教育特化型保育モデルのポイントと採算性

まず、このビジネスの特徴は、ストックモデルにあります。一度、入園いただくと3~5年は確実に通っていただけます。さらに学童や習い事の領域まで伸ばすので、最長10年以上も可能となります。そのため、初年度こそ苦戦するものの、年々経営は楽になります。
また、初期投資も非常に低くてすむというのがポイントです。30坪程度の賃貸物件で、設備的なものはあまり必要ありません。また、給食なども外部からのケイタリングで対応するため、心配ありません。
実際の私どもの支援先でも、1施設あたりの初期投資額500万円(施設面積30坪の賃貸、保証金、敷金等も含む)程度で、収支:売上2,100万円 営業利益520万円 (※ 船井総研某クライアントの実数値)となっています。
市場のポテンシャル次第で施設規模を拡大させ、最大1施設あたり売上8,000万円~1億円、営業利益率15%以上の園も存在しています。
以下に、収支モデルもつけています。参考にしてください。

このビジネスモデルは、英語に関わらずスクールビジネスとの相乗効果が非常に高いです。通常、スクールビジネスは、午前中や午後の早い時間だと子供が幼稚園や学校などにいるため集まりにくく、施設、講師ともに空き時間ができます。その空き時間を保育所のカリキュラムで埋めることができるため、生産性が高められます。
そして、保育所での教育から、その後の本格的なスクール教室への受講へとつながりますので、囲い込みの効果もあります。通常のスクールビジネスは競争が激しく、新規客を開拓するには相当の費用が必要です。それが、毎年、一定の見込み客を獲得できるということは、既存のスクールビジネスの今後を考えてもメリットがあります。このため、競争が激化している習い事市場に参入している企業が、この教育特化型保育事業に参入することが増加してきました。たとえば、学習塾やスイミング・体育スクールなどを実施している人達です。
また、こうした教育特化型の保育所事業の中でも採算がとりやすいものが、「教育特化型学童一貫モデル」 です。このモデルでは、前述したように、まず何か一つ専門性の高い教育事業を「売り」として打ち出し、集客効果を高めます。英会話なら英会話、水泳なら水泳と、何か一つに特化し、ウリとするのです。そうすることで料金設定が多少高くても園児が集まるようになります。
さらに幼児保育だけで終わらせず、その先の小学生などを預かる学童保育も組み合わせます。生徒数を維持し、さらに既存の教育ビジネスへの送客を狙うのです。早期の囲い込み、見込み客作りとして機能させます。保護者としても、保育所を卒園した後にまた預け先を探さなくてはならないので、需要は存在しているはずです。
教育に特化することで、習い事に通わせる感覚で利用してもらえますので、通常の学童保育よりも需要が高いということです。0~5歳だけを対象にするのではなく、教育に特化して2~12歳までの需要を取り込む一貫した教育モデルを打ち出すことで、無認可の保育所でも充分採算が見込めるビジネスになります。

船井総合研究所では、保育所の園長探しから、立ち上げ、従業員募集、園児募集、既存の事業との相乗効果が出せるカリキュラム作成、運営ノウハウまでアドバイスさせていただくことができます。

【筆者プロフィール】

菅原 祥公(すがはら よしひと)
1991年 株式会社船井総合研究所入社
2010年 同社 執行役員 マーケティング推進室室長
2011年 同社 執行役員 第二経営支援部 部長
現在に至る

事業の方向性転換、新規事業の立上げなど、企業を新しい方向に導くためにマーケティングからマネジメントにいたるトータルでの事業計画構築およびその現場での展開を得意としている。近年では、不採算に陥った企業の事業再生やM&A先の企業バリューアップなどを現場で実践している。
著書に「最新ビジネスデューデリジェンスがよく分かる本」、「中期経営計画がよく分かる本」(共に秀和システムズ)、「経営の極意」(共著)などがある。

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