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経営者のためのビジネス講座 > 縮小均衡時代における売上拡大ビジネスモデル 第2回

経営者のためのビジネス講座

2012.11.690日で満室になる高齢者賃貸住宅モデル

この文章は、株式会社船井総合研究所によるものです。

はじめに

前回は、少子化の中での「教育特化型保育ビジネス」という隙間の新規事業を紹介させていただきましたが、今回は、その真逆の高齢者向けビジネスに目を向けます。
日本は世界にも例を見ない超高齢社会に突入しています。そこで現在、船井総合研究所内で伸びている高齢者向けビジネスの一つである「住宅ビジネス」をピックアップします。高齢者向けビジネスをお考えの方、既に実施されている方へのヒントをご提供できればと思います。

4人に1人が65歳以上に

まず、簡単に日本の高齢者の人口比率を見ておきます。
総務省の発表によると65歳以上の高齢者人口(2011年9月15日現在推計)は2980万人で、総人口に占める割合は23.3%、ほぼ4人に1人の割合となります。
また、平成23年度版高齢社会白書(内閣府)によると、「団塊の世代」(1947~1949年に生まれた人)の全ての人が65歳以上となる2015年以降、総人口が減少するなかで高齢者が増加することにより高齢化率はさらに上昇を続け、2035年に33.7%で3人に1人となります。そして、2055年には40.5%に達し、総人口の2.5人に1人が65歳以上となる超高齢化社会となります。
ちなみに経済成長は、働き盛りの20~50歳の人口層が最も厚い国が、世界的にみても経済をリードするため、今後、日本の世界における地位は下がる一方という悲しい現実ですね。
しかし、それを受け入れながら、我々は日々ビジネスに邁進していかなければなりません。

顕在化している高齢者の住宅問題

高齢者ビジネスの中で、特に課題が顕在化しているのが住宅問題です。元気なうちはいいのですが、介護が必要になった場合を多くの人が心配しています。しかも、日本は急速に核家族化しており、高齢者単独または夫婦だけの世帯は2010年度で約1100万世帯、2020年には1245万世帯を超えるといわれています。つまり介護をしてくれる人がいない現実があるということです。
総務省の統計データによると、その内の50%以上が世帯年収300万円未満であり、無職世帯は、年金だけでは生活を補えず、毎月4万円程度の赤字になるそうです。しかも、年金は見直され、もらえる金額も減少傾向、貯蓄率も年々下がってきていますし、高齢者の働き口も急速に減少してきています。そのため、お金がかかる有料老人ホームに入れる人は一握りです。
最も安価な介護施設は特別養護老人ホームですが、待機者は全国で42万人もいます。また、医療負担の増大から、政府の方針により病院の平均在院日数は13日間で、特に高齢者は長期入院させてもらえない現状があります。
そこで注目されているのが、国土交通省が2011年度に創設した「サービス付き高齢者向け住宅」です。これは高齢者専用の賃貸住宅事業であり、賃貸でありながら、必要に応じた介護サービスや食事サービスが受けられるというものです。
政府の新成長戦略にも盛り込まれており、今後10 年間で60 万戸を目標に整備する方針が示されています。また、一定の基準を満たすと建築費の1割の補助が受けられるため、建築費のコストダウンが図れ、上手にすると投資回収が10年未満に抑えられます。そのため、ゼネコンや建築事業者を中心に、新しい成長分野として多くの企業が参入に動きはじめています。

90日間で満室になる低家賃サービス付き高齢者住宅

「最期は畳の上で死にたい」

確かに理想かもしれません。介護が必要になると在宅介護では限界があります。施設も病院もダメ、おまけに年金や蓄えも多くない。こうした現実がある中、船井総合研究所が提案しているのが、低貯蓄高齢者向けの低家賃サービス付き高齢者住宅です。
サービス付き高齢者住宅では、家賃・管理費、さらには食費も込みで月15万円前後が多い中、10万円を切る高齢者住宅の開発を進めています。  
このような施設の入居募集は、ケアマネージャー(介護事業のキーパーソン)はじめ、病院の相談員による紹介契約が80%以上を占めています。そのため、安価であればあるほど紹介がいただきやすく、医療・介護サービスレベルが高い高齢者住宅であれば、更に紹介率が上がり、広告宣伝費などの費用も低く抑えられます。

この低家賃モデルは、先にご紹介した時流にもマッチし、オープンから90日間程度で満室になる例が船井総合研究所内で多く出てきています。

月額料金3点(家賃・管理費・食費)セットで10万円を切ることで差別化を図る!

低家賃サービス付き高齢者住宅のポイントは2つです。

【ポイント1】 ローコストで建築すること
戸あたり300万円台で建築することが条件となります。

【ポイント2】 有力な介護会社を運営パートナーにすること
サービス付き高齢者住宅では、介護事業者に敷地内で事務所を持ってもらう必要があります。そこで、運営会社が借り上げ、テナントとして介護会社に入っていただく仕組みを構築することを提案しています。介護会社にとって、初期投資およびランニングコストを抑えて高齢者住宅事業に参入できるといったメリットがあるため、有力な介護事業者を選定することができるのです。

低家賃サービス付き高齢者住宅の運営モデル

この事業への参入パターンは以下の二つです。
運営会社として家主さんに住宅をつくっていただき、借り上げ・運営するパターン
自社が持っている土地で運営するパターン
これ以外に、建築業者が家主さんへの提案で建築を請け負うパターンや、最初は自社で運営しておいて、売却するパターンなどもあります。
いずれの場合でもまず、高齢者住宅担当者を1~2人配置していただき、地主開拓(のパターンは必要なし)と介護・医療機関に対し、高齢者住宅による土地活用および、運営パートナーとしての高齢者住宅参入を提案します。 また、その人件費以外に、セミナー開催費用をはじめ、媒体・DMなどの販促費、市場調査書、アプローチブック、事業計画書などの提案ツール作成費用がかかります。

家主さんへの提案モデル
■建築費

建築会社が30戸モデルのサービス付き高齢者住宅を建築する場合のコスト構造は以下のとおりです。建築会社が自社で運営する場合には、工事原価で建築できますね。

家主さんへの提案モデル-建築費

■家賃保証:100万円で提案時の家主さんの利回り

家主さんへは、家賃保証で月額100万円保証を基本モデルとして提案します。

家賃保証:100万円で提案時の家主さんの利回り

■家賃保証:100万円で提案時の家主さんの月次収支モデル

家賃保証:100万円で提案時の家主さんの月次収支モデル

医療機関・介護会社への提案モデル
■サービス受託先収支モデル

家主さんと同じくキーマンとなるのが、介護サービスを受託してもらえる優良機関との連携になります。そこで、その対象となる介護企業や医療機関には、以下のような提案を実施します。介護事業者にとっては、確実にお客さまがつくモデルなので、収支が読みやすくなります。

サービス受託先収支モデル

低貯蓄者向けのサービス付き高齢者住宅収支

次に運営者のモデルを記載します。
30戸のサービス付き高齢者住宅を地主さんに建築してもらい一括借り上げし、運営するときの粗利額モデルは、入居率が85%の場合、1棟で年間約500万円の収入、満室になると600万円強の収入が入ってくるようになります。
ちなみに、賃貸のため、当然退去もあります。高齢者住宅モデルの場合、年間の退去率は問題なければ3~5%の間であり、30室だと、年に1室~2室弱の退去率となります。この程度であれば、低価格モデルは宣伝しなくても、ケアマネージャーなどからの紹介で補えます。

低貯蓄者向けのサービス付き高齢者住宅収支

遊休地モデル

最近、増加しているのが自社の遊休地でこの事業をしたいというご相談です。家賃プラス運営利益が入ってくるモデルですが、その時のポイントは、その立地が適しているかどうかです。マクロの環境では、周辺の介護施設の状況や待機者状況、高齢者や要介護者の人数などがポイントとなります。また、ミクロの環境では、周辺の住環境です。高齢者なので近くに買い物施設があることや、駅に近いことなども大きなポイントとなります。この立地選定を間違えると入居率が大きく変わることもあります。

最後に、高齢者向け事業における一つのポイントを記載しておきます。ビジネスにおいて重要なことの一つにターゲット選定があります。
この低家賃サービス付き高齢者住宅事業における最大の成功ポイントは、低家賃にあります。生活が苦しい、または不安を抱えている層が急増しており、その層をターゲットとした事業モデルが、高齢者事業においても大きなポイントとなるでしょう。

これらに対して船井総合研究所では、立地における可否判断、連携先パートナー(医療、介護事業者)探し、基本収支モデル、建築へのアドバイス、管理・雇用・研修・帳票類の整理・集客・営業・顧客満足の仕組みの構築などの運営ノウハウまでアドバイスさせていただくことができます。

【筆者プロフィール】

菅原 祥公(すがはら よしひと)
1991年 株式会社船井総合研究所入社
2010年 同社 執行役員 マーケティング推進室室長
2011年 同社 執行役員 第二経営支援部 部長
現在に至る

事業の方向性転換、新規事業の立上げなど、企業を新しい方向に導くためにマーケティングからマネジメントにいたるトータルでの事業計画構築およびその現場での展開を得意としている。近年では、不採算に陥った企業の事業再生やM&A先の企業バリューアップなどを現場で実践している。
著書に「最新ビジネスデューデリジェンスがよく分かる本」、「中期経営計画がよく分かる本」(共に秀和システムズ)、「経営の極意」(共著)などがある。

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