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経営者のためのビジネス講座 > 縮小均衡時代における売上拡大ビジネスモデル 第3回

経営者のためのビジネス講座

2012.11.20町工場が大手企業を"非価格競争"で攻略する方法

この文章は、株式会社船井総合研究所によるものです。

はじめに

今回は、産業大国“ニッポン”を支える町工場に焦点をあてます。
まず、下記のデータを見てください。日本の製造業の現状の一つが表れています。
日本の製造業は、現在、
大手メーカーの海外進出 系列化から自由競争へ 原材料の高騰と上位企業からの厳しい価格要請 高齢化による技術伝承危機 後継者問題 というさまざまな問題に直面しており、しかもリーマンショックと震災の影響をもろに受け、減少傾向に歯止めがかからない状況になっています。

【産業中分類別、従業者規模別の開業等、廃業等の割合(従業者10人以上の事業所)】

もう一つ大きな問題なのが、日本を支えている製造業の大半が小規模零細企業であるという点です。
たとえば、日本最大級の産業の一つである自動車は2万~3万点の部品で構成されることから、国内では自動車部品のメーカーは約2万5000社を数えます。しかし、自動車メーカーと直接取引を行う企業(Tier 1・ティアワン)は約800社に過ぎず、Tier 1の下請けであるTier 2(4000社)、Tier 2の下請けであるTier 3(2万社)のほとんどが中小企業というのが実態です。
つまり、より体力のない会社が大半であり、このまま放置しておくと、廃業する会社が急増すると予測されています。

町工場は国内で活路を見出せ! 日本を支えるのは町工場だ

さて、先の課題でも示したように、大手企業を中心に製造業の海外移転が震災以降さらに加速しています。
ただし、この海外移転には一つポイントがあります。海外に出る企業の多くは、大量生産を前提とした消費財や汎用品、また原材料品に近い加工品を対象にしており、多品種少量・微量生産が前提の生産財や特殊品は、依然として国内での生産が続けられているということです。
ちなみに現在、ユーロ圏内で唯一好調と思われる国にドイツがありますが、実は、ドイツの製造業も大量生産・汎用品は、製造コストの安い海外に任せ、国内は多品種少量・微量生産に特化しています。
そもそも日本の製造業の強みは、町工場による分散生産体制にあります。この分散生産体制によって、大手企業はフレキシブルな開発・設計・試作・テスト生産が行えるのであり、町工場はこうした本来の自らの役割を認識する必要があります。
そして、この土壌にたてば、町工場にも大きなチャンスがあると船井総合研究所では考えています。ここで、一つ大きな問題になるのが、“新しい顧客を開拓する営業力・マーケティング力がない”ということです。日本は、系列に支えられ、基本的に営業力を要せずとも仕事が流れてきた経緯があります。ここを改善できれば、不況といわれる日本において、体力がないといわれる町工場であっても、チャンスがあります。

町工場は大手企業との取り引きを増やせ

現在の日本は、企業の大小にかかわらず、自社により良いと思われる商品やサービスを積極的に採用する流れに変わりました。ここに大きなヒントがあります。
また、現実問題として町工場は大手企業(または大手グローバル企業)との取り引きを増やさなければ安定的なリピート注文を確保することができません。
この大手企業にアプローチするキーポイントとなる人(または部署)とは設計者・開発者・生産技術者です。これらの人にどう町工場がアプローチするかです。そのためには、大手企業の設計者・開発者・生産技術者が関心を持つコンテンツを保有しなければなりません。
そこで船井総合研究所が提案しているのが「VA / VE提案型」町工場です。VA / VEとは、業界をご存知の方は分かると思いますが、「バリューアナリシス/バリューエンジニアリング」の略語で、意味合いとしては「設計段階からのコストダウン」ということです。今、企業が求めるのは、いかに安くつくるかであり、それには、設計段階からの見直しが絶対条件です。
大手企業の設計者・開発者・生産技術者が求めているのは、このVA / VE情報です。
下記にVA / VE提案の一例を示します。下記の会社の場合、設計者が知っておくべき加工技術のポイントをまとめ、それをコンテンツとして情報発信しています。

株式会社木村製作所の事例

京都府長岡市の株式会社木村製作所は、旋盤加工、マシニング加工、研磨加工を中心とする部品加工業です。 同社はVA / VE情報を積極的に発信することで、大手企業から高く評価され、新規取引につなげています。特に「機械設計者のための加工技術ハンドブック」は大手企業設計部門技術者から好評を博し、設計段階から同社のアドバイスが求められるきっかけとなっています。 設計者の多くは加工技術に疎いため、部品加工の視点からみるとコスト高の設計を行ってしまうことが多くありますが、同社の技術冊子、またウェブサイト上で発信されている加工コストダウン情報は、設計段階からのコストダウン(=VA / VE)につながるため、大手企業の設計技術者から好評を博しています。

町工場は価格競争を回避せよ

また、町工場は「価格競争の回避」を前提としなければなりません。価格競争回避の鉄則は“資材部門”から入るのではなく、直接“設計開発部門”と付き合うことに尽きます。基本、資材部門(購買部門とも呼ばれる)のミッションは、コスト削減にあり、ここから入ると価格のことしかテーマに上がってこなくなります。
そこで「こちらから売り込む」という営業手法ではなく、「相手から問い合わせが来る」というマーケティング(=PULL型マーケティング)を行う必要があります。相手から問合せしてもらうことで、営業社員に頼ることなく“見込み客を集める”ことも可能となるのです。

資材部門ではなく、設計・開発部門を狙う こちらから売り込まず、相手から問い合わせを発生させる

そのために、私どもは、色々なマーケティング手法を提案し、実行してもらっています。たとえば、以下のような手法を現場で実行できるレベルまで落とし込んでご提案しています。 技術セミナーによる集客手法 「ソリューションサイト」を中心としたWebマーケティング手法 展示会による集客手法 ダイレクトメールによる顧客問い合わせ手法

この中から「ソリューションサイト」に少し触れておきます。現在、企業間取引でも多くの人がWeb検索で新しい情報や企業を探しています。それに対して、一般企業のウェブサイトは、単なる会社案内や商品案内に終わっています。また、自社ウェブサイトは、その会社名を知っている人が検索することが多く、それは、既に顕在化している顧客であり、マーケティングコストをかける必要はありません。これに対して「ソリューションサイト」とは、顧客が検索するワードで、自社の提案できるソリューションそのものの名前をつけたウェブサイトを立てます。そうすることにより、自社を知らない顧客を誘導することが可能となります。

収支モデル

上述した「VA / VE提案型」町工場において大手企業から問い合わせを発生させる中心的存在となる「ソリューションサイト」です。まずは、これを現在お持ちの「会社案内サイト」と別に立ち上げる必要があります。
さらにDM、FAX-DM、各種広告媒体と、前述の「ソリューションサイト」とを組み合わせた“クロスメディア”と言われる手法で、2日に1件以上の問い合わせが発生するビジネスモデルを構築します。初期投資としては、こうした「ソリューションサイト」および各種広告に関する費用が主なものとなります。

営業体制につきましては、基本的に現有社員の中から営業担当者を設定することを前提とします。採用により営業担当者を設定する場合は、採用コストが初期投資に入ります。
船井流町工場コンサルティングにおきましては、3カ月でビジネスモデルを立ち上げて、初年度での投資回収を前提とします。過去の成功事例として、立ち上げ1年以内で2千万円~1億円の新規受注に成功したケースもあります。
下表は、収支モデルの一例ですが、保有技術内容や商品平均単価、購買頻度など実施企業の特性により結果イメージが異なりますので、あくまでも参考値としてとらえてください。

収支モデルの一例

これらに対して船井総合研究所では、商品戦略から営業戦略、その企業にあったPULL型マーケティングの仕組みの構築とその運営ノウハウまでアドバイスさせていただくことができます。

【筆者プロフィール】

菅原 祥公(すがはら よしひと)
1991年 株式会社船井総合研究所入社
2010年 同社 執行役員 マーケティング推進室室長
2011年 同社 執行役員 第二経営支援部 部長
現在に至る

事業の方向性転換、新規事業の立上げなど、企業を新しい方向に導くためにマーケティングからマネジメントにいたるトータルでの事業計画構築およびその現場での展開を得意としている。近年では、不採算に陥った企業の事業再生やM&A先の企業バリューアップなどを現場で実践している。
著書に「最新ビジネスデューデリジェンスがよく分かる本」、「中期経営計画がよく分かる本」(共に秀和システムズ)、「経営の極意」(共著)などがある。

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