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経営者のためのビジネス講座 > 縮小均衡時代における売上拡大ビジネスモデル 第5回

経営者のためのビジネス講座

2013.1.22改めて見直される"お風呂屋さん"ビジネス
【200坪サイズの小さな温浴施設に人が集まる理由】

この文章は、株式会社船井総合研究所によるものです。

はじめに

今回は、衰退著しい昔ながらのお風呂屋さんが、新しいやり方によって収益事業に復活するということに焦点をあてます。
まず、下記のデータを見てください。これは、厚生労働省が毎年発表している「衛生行政報告例」による、公営と私営の一般公衆浴場(いわゆるお風呂屋さん)数推移を図表化したものです。

公 営 私 営 総 数
1996年 576 8,885 9,461
2001年 528 7,323 7,851
2006年 419 5,907 6,326
2011年 401 4,788 5,189

この15年間をみても、一般公衆浴場はほぼ半減しています。ちなみに、温浴施設は公衆浴場法という法律によって規制されており、営業には都道府県知事の許可が必要であるとともに、半径250m以内には、同じ一般公衆浴場を許可しないことや、料金が統制されるなどの規制があります(ちなみにスーパー銭湯や健康ランドなどは、同じ法律の中で"その他の公衆浴場"に分類され、料金統制などの規制をうけません)。
お風呂屋さんが衰退している最大の要因は、住環境が改善されたためです。今や多くの住宅にシャワーや浴槽の設備が整っており、お風呂屋さんを必要としなくなったことが大きいでしょう。
そしてもう一つが、単純に儲からないということです。お風呂屋さんの多くは、昔から運営しているところが多いのですが、売上は年間2,000~3,000万円程度です。土地は自社のものとし、建物の償却もほぼ終わっていますが、燃料の高騰などにより燃料費だけで売上のほとんどが消えてしまい、実質赤字のところが多く、そのうえ後継者不足もあって、今後もこの減少傾向は変わりません。

スーパー銭湯の台頭

この状況に対して、1990年代後半から伸びたのがスーパー銭湯といわれる業態です。これは、先の公衆浴場法の一般公衆浴場に該当する施設でないため、価格規制もありません。2000年代前半にピークを迎え、これまでに全国で約800施設が開業しているといわれています。
当初のスーパー銭湯は1日1,000人の来客目安で、客単価800円程度、売上高約3億円が見込め、これに対して利益は約30%程度あり、約8,000万円。敷地面積1,500坪、延床面積400坪程度だと総投資額は4~5億円程度であり、約5年で初期投資を回収できる計算でした。これが近年では競合が激しくなり、差別化のために漫画喫茶なみの本をおいた無料休憩スペースの拡張や、床屋・マッサージ・エステ・岩盤浴などの付加、飲食施設の強化など付加施設拡張に走りました。そのため、ここ数年で平均敷地面積は2,500坪、平均延床面積も倍近くまで拡大しました。また、温泉ブームにより、温泉掘削も条件となり、現在では約6割のスーパー銭湯が温泉を使用しているといわれています。このように温泉の掘削費や設備の拡張により、初期投資額は約7億~10億円に膨張し、回収には10年かかるようになるとともに、やっと投資回収が済んだ頃に施設改修が入ってくるため、うまみの少ないビジネスに変わりつつあります。

新業態「お風呂屋機能特化型200坪銭湯」

このように、温浴施設におけるこれまでの主業態はスーパー銭湯であり、利益率の高い商売として多くの会社が参入してきました。しかしブームから10年経過しているにも関わらず以前と同じ営業手法をとっているため、次第に儲からなくなりました。時代のニーズからズレてしまったのです。
そのため、ここ5年間、当社に持ち込まれる仕事は、スーパー銭湯のM&A案件や再生案件となり、開発案件はほぼなくなりました。

「温浴施設の閉店や売却話が時々持ち込まれる」
 ↓
「温浴事業は儲かる商売じゃなくなったのかもしれない」
 ↓
「温浴事業に未来はあるのだろうか?」

経営者の方々からは上記のような言葉をよく聞きます。
しかし今だからこそ、これからの時代に見合った温浴施設の新しい形を当社では提唱しています。設備投資も少なく効率よく収益を上げる事が可能、しかも全国展開できる新業態。それが、「お風呂屋機能特化型 200坪銭湯」です。
温浴事業はさまざまな客層を獲得しないことには、客数(=売上)を維持しづらくなっています。そのためには毎日通える低価格で、滞在時間が1時間でも満足してもらう仕組み、その上で利益を出しやすい低投資、低コスト構造が不可欠です。
この新しい銭湯業態で、実際に早期回収に成功している先が船井総合研究所の顧問先で多数出ています。メジャー業態であったスーパー銭湯において思うように業績が伸びなくなっている中、なぜスモールサイズの200坪銭湯が成功しているのでしょうか?このスーパー銭湯でも、昔ながらのお風呂屋さんでもない、新しいこの業態がうまくいくためのポイントをまとめてみました。

ポイント【その1】 毎日通うことができる「風呂機能特化」

普通の銭湯のように手軽な料金で通うことができることが前提です。
浴場のつくりは、お客さまが極限までリラックスできるよう、広い主浴槽と大きな框(かまち)が用意されている 顔なじみが井戸端会議をできるように、ロビー周りには椅子や小上がりがふんだんに設置されている など、今の流行の業態には無く、昔ながらのいわゆる「銭湯」のみが持っていた良さを随所に有しているのです。お風呂屋さんとしての本来の機能に特化することで、施設面積が10倍以上もある大型の競合施設が出店してもビクともしない施設になることができます。

お風呂屋機能特化型200坪銭湯

ポイント【その2】 さまざまな客層に対応できる、朝まで通しの営業時間

休憩室やリクライニングチェアなどの滞留時間を上げるファシリティを持たないにも関わらず、22時間営業をすることで、深夜だろうと早朝だろうと、実に多彩な客層を絶えず獲得できるのです。深夜から早朝の営業をやらないスーパー銭湯から見ればこれは驚くべき事実です。ちなみに、早朝からの時間帯は近所の高齢者層、昼からが主婦層、夕方がファミリー層、夜の時間帯が若者層とさまざまな客層に対応できる業態となり、広い客層をとることができています。

ポイント【その3】 駐車場を持つこと

施設的だけを見ると、今までのお風呂屋さんと大きな違いはないように思われますが、圧倒的な違いがあります。それは、駐車場を持つことです。昔ながらのお風呂屋さん業態は、街中にあり、お風呂が家にないころは非常に有効的な業態でしたが、商圏範囲が狭いのも特徴です。国の法律で250mを商圏にしていたのもうなずけます。これに対して新しいタイプのお風呂屋は、駐車場を持つことにより、商圏拡大をはかるとともに、先に述べたさまざまな客層を取り込むことが可能となります。駐車場は、できれば50台以上はほしいものです。

ポイント【その4】 3年回収も可能! 圧倒的な低投資

これまで温浴施設を開業する場合、投資回収に10年を見込んでいました。しかし、200坪の小規模な温浴施設を始める場合、果たしてそれが新築である必要があるかと言えばそんなことはありません。これまでの温浴施設開発と異なるイニシャル・ランニングコストの項目を挙げると下記のようになります

【200坪のお風呂屋さんを作るにあたって】 居抜き物件可。新築である必要はない。 最初から温泉を持っている必要はない(あればベターだが)。 内装やオブジェは、高価でハイセンスである必要はない。 運営システムがシンプルである為、高価な会計・顧客管理システムを持つ必要はない。 専用の料理人や本格的な厨房を持つ必要はない。

この施設を開業するには、全国に数多く存在する小規模な温浴施設の居抜き物件で十分ですが、駐車場がポイントとなります。また、多彩な健康サービスや料理メニューを出すほどの規模でないだけに料理人や数多くのスタッフが必要ないこともご理解いただけると思います。

新業態収支モデル

基本的には設備産業であり、お風呂機能に特化したつくりのため、付帯サービスはほとんどありません。つまり、毎年お客さまが増えて売上が伸びようと、人件費や販売管理費が急激に増える事はなく、入浴料には原価があまりかからないため、分岐点を越えた時点で利益は大きく伸びます。少人数で運営できコストは比較的かからないことも大きく、投資コストの回収期間は3年から5年が目安となります。
たとえば下表のように2年間で売上が5,000万円伸びたとしても、原価や販管費は抑えられ、その分営業利益がグンと増加するのです。

  1年目 2年目 3年目
売上高(千円) 135,000 150,000 180,000
粗利益高(千円) 91,000 105,000 126,000
人件費(千円) 20,000 22,000 25,000
その他販管費(千円) 35,000 37,000 40,000
営業利益額(千円) 36,000 46,000 61,000
営業利益率 28% 30% 34%

【前提条件】
1年目:店内従業員数 5人 年間客数 約30万人 客単価 約450円 2年目:店内従業員数 5人 年間客数 約33万人 客単価 約450円 3年目:店内従業員数 7人 年間客数 約40万人 客単価 約450円

船井総合研究所では、この業態に対して、立地選定、施設・設備のあり方、立ち上げからの事業オペレーション、運営ノウハウまでアドバイスさせていただくことができます。

【筆者プロフィール】

菅原 祥公(すがはら よしひと)
1991年 株式会社船井総合研究所入社
2010年 同社 執行役員 マーケティング推進室室長
2011年 同社 執行役員 第二経営支援部 部長
現在に至る

事業の方向性転換、新規事業の立上げなど、企業を新しい方向に導くためにマーケティングからマネジメントにいたるトータルでの事業計画構築およびその現場での展開を得意としている。近年では、不採算に陥った企業の事業再生やM&A先の企業バリューアップなどを現場で実践している。
著書に「最新ビジネスデューデリジェンスがよく分かる本」、「中期経営計画がよく分かる本」(共に秀和システムズ)、「経営の極意」(共著)などがある。

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