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経営者のためのビジネス講座 > 不透明な時代の業績向上法 第4回

経営者のためのビジネス講座

2011.2.15日本から営業社員がいなくなる?!営業発想を根底から見直せ!

この文章は、株式会社船井総合研究所によるものです。

対事業者向け事業

今回は、対事業者向け事業(対消費者向け事業をBtoCというのに対してBtoB事業者と呼ぶ)を行っている企業のマーケティング戦略についてお話します。
リーマンショック以降、BtoB事業は営業のアポイントすら取ることが難しいと言われています。ある意味、お客さまから「営業はいらない」と言われているようなものです。しかし、営業のアポは取れなくても、商品ニーズが突然消えるわけではありません。どこかに存在するはずです。であるならば、お客さまの変化に対して、新しい販路や、営業の仕組みを構築する必要があるのではないでしょうか。

この営業の変化に関して、まず私の支援先の話をしましょう。
ちょうど2年前の話です。セミナーの講師を終えた私のもとに一人の経営者がご相談にこられました。相談内容は以下のとおりです。

A社長:「私どもは、自転車などの部品卸をしている企業です。業績はここ数年間、毎年数%の増収を続けています。」

私:「この不況下ですごいじゃないですか?そのような会社さまが何かご相談ですか?」

A社長:「実は、売上は伸びているのですが、10年後の姿が見えないのです。下手すれば、5年後もないかもわかりません。」

私:「社長、どういうことですか?」

A社長:「実は、売上は伸びているのですが、それに反して粗利率は、年々ダウンしています。私どものメイン取引先は大手流通チェーンのC社です。この企業は、出店意欲が旺盛で、店舗数の増加にあわせて当社の売上も増加しています。
しかし問題は、C社が当社からの仕入れを、売れ筋商品から順にやめていることにあります。」

私:「どういうことですか?」

A社長:「簡単に言うと、C社は当社の売れ筋商品を中国に持ち込んで似た商品をつくり、プライベートブランドとして販売しているのです。すでに当社の商品で売れる量がわかっているため、C社にとってはリスクの少ないやり方ですが、当社にとっては死活問題です。しかし、C社の売上構成比が高い当社には、その流れをどうすることもできません。売れ筋の高粗利商品から切られていくわけですから、利益は確実に縮小していきます。本当に将来が見えないのです。助けてください。」

私:「なるほど。そういうことですか。わかりました。社長、下の図を見てください。企業がまず考えないといけないことは“ターゲット(顧客)”と“商品”です。そこから、4つの戦略が出てきます。

戦略1は、既存維持です。これが最も安易な選択ですね。
戦略2は、既存取引先に新しい商品を卸していくことです。
戦略3は、既存の商品を別の企業に販売していくことです。
戦略4は、全くの新規事業を立ち上げるとことです。

社長なら、どれを選びますか?」

A社長:「う~ん。正直よくわかりません。だからこうして相談にきています。」

(図1)商品と顧客ターゲット

私:「私の意見を言っていいですか?私なら【戦略3】を選択しますね。まず、【戦略1】と【戦略4】は論外です。【戦略1】は縮小均衡しかないですから、相談にきているのでしょう。【戦略4】も私の経験からいうと、本業に関係のない新規事業は成功確率10~20%です。それも資本力がある会社の話です。小規模零細企業がとる戦略ではありません。
残るところは【戦略2】と【戦略3】ですよね。しかし、【戦略2】を選択するには、よほどの新規性ある商品か、もしくは激安の商品戦略を採用する必要があります。これは、かなり難易度が高いといえます。ですから、【戦略3】をお勧めします。」

A社長:「言われることはわかりますが、具体的にピンとこないですね。」

私:「御社の事業は自転車部品卸ですよね。だったら自転車屋に部品を売ればいいじゃないですか?」

A社長:「菅原さん。簡単にいいますけど、当社はそれほど多くの営業社員がいるわけではないですし、新規顧客開拓がどれだけ難しいか知っています。他の流通チェーンに簡単に入り込めるとはとても思えません。」

私:「社長、誰が他の流通チェーン店に販売するといいました?町の小さな自転車屋に販売しましょうよ。」

A社長:「え!どういうことですか?今、町の自転車はほとんど残っていないですし、あったとしても本当に小さな個人事業主ばかりで、とても商売になるとは思えません!」

私:「確かに町の自転車屋の規模は小さいですね。だからこそ、そこに商機があるのです。社長、まず、町の自転車屋は何件あるか知っていますか?(私がパソコンで調べる)社長、1.8万店以上(※iタウンページ登録店舗数)もあるじゃないですか。絶対に商売になりますよ。
まず、今の日本における産業構造の話をしますね。現在の日本は、不況と人口減少により、確実にマーケットが縮小しています。各メーカーや卸企業が船井総研にどのようなご依頼をされるか知っていますか?
営業の効率化です。簡単にいうと、営業人員を縮小して、1人あたり生産性をアップさせる方策を一緒に考えてほしいというものです。一般的に、不況になると売上アップは簡単にできません。そこで、とる方策は二つです。

  1. 営業社員を少なくし、取引額の小さい先や粗利額の少ない先(効率の悪い先)、
    与信の悪い先をカットする
  2. 今より高い額で販売する。もしくは高い粗利がとれる商品のみに絞って販売する

 現在の日本に起こっている現象がこれです。
ここに商機があるのです。幸い、御社は大手と取引しているため、物流はかなりあり、価格競争力も高いと思われます。そこで、それらの商品を、この零細な町の自転車屋に販売すれば、品揃えの観点、そして販売価格の観点で圧倒的に優位に立てますよ。」

A社長:「理屈は分かります。しかし、他社も非効率だから撤退する先に、当社のような中小企業が、営業社員も少ない中、どのように全国の小さな自転車屋に販売するのですか?」

私:「社長、そこで発想の転換が必要です。何も“営業社員”を介さないと商売できないということはありません。要は、少量販売でも効率が合う販売方法にすれば良いのです。
船井総研の支援先メーカーや卸企業で爆発的に伸びているのが『対事業者向け通販』という販売方法です。消費者向けの通販(インターネットやカタログ、メディアなどを利用し、不特定多数の人に購買してもらう方法)は、ご存知ですよね。それの企業顧客版と思ってください。簡単にいうと事務用品販売のアスクルのようなモデルを町の自転車屋にするのですよ。船井総研では、多くの業種でこの立上げのお手伝いをしており、その大半が好業績です。」

A社長:「本当ですか?そのような仕組みがあるのであれば、ぜひ、当社でも取り組ませてください。」

対事業者向け通販は急成長する

このような流れでA社さまにこの事業を取り組んでもらいました。仕組みづくりに約半年間かけ、スタートした結果は以下のとおりです。
スタートから1年間で、営業社員を一切介さずに、新規取引先が2000店舗以上、売上も月額1000万円程度にまでなりました。しかも粗利率は、大手流通チェーンよりも4%高い販売額で売れています。
この仕組みはシンプルです。
取引先開拓に

  • FAX
  • ホームページ
  • ダイレクトメール
  • テレアポ

などを組み合わせて実施し、反響のあったところに商品カタログを送り、発注をもらう仕組みです。全国からの注文を一極集中させるので、品揃えが豊富で、価格も地方卸企業企業より圧倒的に安くできます。また、通常の卸企業売企業では、ある程度まとまった量でしか卸企業せませんが、A社さまは単品からお届けできます。この便利さもあいまって、一気に顧客が増えました。
しかも、購入金額が低いため、宅配便の現金回収サービスにて売掛金の回収ができるうえ、お取引ごとに支払っていただくため、与信管理もいりません。
対事業者向け通販は、あらゆる業態で急速に成長しています。最近では、魚の養殖企業や部品メーカー、食品素材、日用雑貨、家電などの各メーカーなどでこの立上げをお手伝いしています。

(図2)対事業所向け通販の仕組み

日本の営業が激変する

成熟期に入った日本における営業のやり方は、リーマンショックを境に急激に変わってきます。
これまでの営業スタイルは、「ルート営業」や「御用聞き営業」に代表される“訪問回数、接触頻度”を重視するものでした。
好景気の時は、それでも仕事をもらえた事実があります。しかし、リーマンショックという未曾有の不況により、あらゆる産業で販売数が激減。リストラにより一人の社員が抱える業務範囲が増加し、時間も足りなくなるため、より効率的な取引を望むようになりました。よって、単純な御用聞き営業では意味がないとされ、相手側も忙しさゆえ簡単に会ってくれなくなります。会ってもらうためには、相手に聞く耳をもってもらえる高度な提案や情報提供が必要となりました。
一方で単純な取引は、営業社員を介さず、その分、安くて良い商品を仕入れようとします。そのため、すでに決まっている商品の単純取引は、今後、ますます「営業社員を介さない取引」となるでしょう。
このような流れで、営業社員は相手側の戦略に入り込む、より高度な提案能力が求められる時代に本格的に突入しました。そのため、「対事業所向け通販」とは逆に、「高度営業体制の構築」業務も船井総研では増加しています。
また、大手メーカーに対しては、この2つを同時にご提案することも増えてきました。単純取引は、営業社員を介さず行い、残る営業社員は高度営業にシフトするという2重戦略です。これを「上位戦略と下位戦略」と呼んでいます。

商品こそがすべての中核

最後に、この上位・下位営業戦略を実施するときのポイントをお伝えしておきます。
それは、「商品」です。先の戦略は、「どう販売するか」に終始するように思われますが、実は違います。企業がまず決めないといけないことは「誰に」「何を(=商品)」売るかということです。
商品はすべての企業の中核になるものです。商品とは名前、内容、価格の明確化が伴って初めて商品と言えます。それらが伴っていなければ、何でもできますと言われても、お客さまからすれば、果たしていくらかかるかわからず怖くて頼めませんし、何ができるのか想像できないので、仕事もお願いできません。営業を介さない場合、その商品の品揃えと価格が「狙っている顧客」に合っていることが特に重要です。
また、目に見えにくいサービスの分野においても商品化が重要です。自社のサービスについて名前や価格をつけ、商品化してみることが大事です。商品化することで、商品戦略上のメリットとしては売れ筋・主力商品の認識ができるようになり、商品構成の見直しにつながります。また対象顧客別商品戦略の立案などより、各顧客にとってより魅力的な商品ラインアップを整えるうえでも有効です。
また上位営業戦略上のメリットとしても、顧客への認知度を高め、顧客ニーズの明確化につながり、営業スキームの短縮化などを図ることもできるようになるのです。
皆さまの会社でも、まず商品を見直し、商品化を行う機会を設けてみてはいかがでしょうか。そこからきっと色々なものが見えてくるはずです。

【筆者プロフィール】

菅原 祥公(すがはら よしひと)
1991年 株式会社船井総合研究所入社
2011年 株式会社船井総合研究所 執行役員 第二経営支援部部長

事業の方向性転換、新規事業の立ち上げなど、企業を新しい方向に導くためにマーケティングからマネジメントにいたるトータルでの事業計画構築およびその現場での展開を得意としている。近年では、不採算に陥った企業の事業再生やM&A先の企業バリューアップなどを現場で実践している。
著書に「最新ビジネスデューデリジェンスがよく分かる本」、「中期経営計画がよく分かる本」、「経営の極意」(共著)、などがある。

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