リスクマッピングと統合リスク管理

オリックス株式会社リスク管理本部副本部長 糟谷 英治
オリックス株式会社
リスク管理本部副本部長
糟谷 英治

私は、オリックスグループのリスクマネジメントに携っております。ひと口にリスクマネジメントと言いましても、災害対応や、コンプライアンスや、あるいは資本政策とか事業戦略などまで色々なことを指します。今回から10回にわたりご説明ご紹介することは、リスクマネジメントの一部に過ぎませんが、皆さまの今後の会社経営に多少でもヒントになることがあれば幸いです。

第1回のテーマは「リスクマッピングと統合リスク管理」です。

昨今は、リスクが多様化し、企業の社会的責任も問われ、経営者の説明責任も増大してまいりました。リスクを個別に把握し、何か起きた時に「それは担当者の責任です」では、株主からも、債権者からも、顧客からも、そして社会からも許されない時代になりました。

企業のリスクマップ事例

一企業の抱えるさまざまなリスクを、その発生頻度と影響度を個別に評価した上で、ご覧のようなリスクマップと呼ばれるチャートで統合的に管理し、リスクの抑制策や移転策を考え実行することが企業経営者に求められだしたわけです。

リスクに対して個別に取組んでいたのでは、企業が対応すべき優先順位も曖昧となり、複数の部門で似たような対策をしたり、どの部門も対応していないエアポケットが生じたり、企業価値拡大のために許容できるコストも分からないままとなりかねません。

リスクを統合的に把握していれば、どのリスクを抑制または外部移転するためにどれだけの経営資源を投入するべきかという戦略も設定しやすくなります。また、そもそも個別部門ではリスクと見なされていたことが、実は企業全体で見れば収益機会だと判明することもあります。

たとえば、大規模地震の発生は、管理部門にとっては間違いなく重要なリスクですが、一部の建築工事会社においては「建築特需が見込まれ、収益効果のほうが大きい」ということもありえます。

もちろん、逆もあります。個別の部門では大したリスクと考えられなくても、会社全体に及ぼす影響は甚大というケースです。たとえば、警備会社の警備員が契約先の備品を盗んでしまったという場合は、一次的な影響は当該取引先との契約解除で済むとしても、警備会社の事業への信頼失墜は長期的に甚大な影響となりえます。

リスクマップを使って、その企業のリスクをポートフォリオとして巨視的に把握し、それぞれのリスクの会社全体への波及効果も踏まえ、効果的で効率的なリスク低減を図るべく経営資源(すなわち人・物・金)の適切な投入を決定し、改善成果を定期的に検証して次年度以降の対応を見直していくという継続的なプロセスが統合リスク管理です。

そして統合リスク管理を行いますと、(1)会社のステークホールダーに対して透明性と信頼性を確保でき、(2)格付会社や借入れ先へのアピールが可能になり企業イメージが向上し、(3)リスクを明確に把握・管理することで支払い保険料を削減でき、(4)リスク対策にかける費用および経営資源の配分を適切に行うことができ、(5)共通の尺度でリスクとリターンの関係を評価することにより企業価値の最大化の方策を具体的に考えられる等さまざまなメリットが生じます。

次回は、「リスクファイナンスについて」です。今後も皆さまの会社経営のヒントになるお話をさせていただく予定です。有難うございました。