企業勝ちの創出とは

オリックス株式会社リスク管理本部副本部長 糟谷 英治
オリックス株式会社
リスク管理本部副本部長
糟谷 英治

今回の第5回から第10回までの6回は、「企業価値を創出するためのリスクマネジメント」をご説明いたします。

このテーマにおいて想定している企業は、株主から出資を受けている株式会社です。しかし、企業のリスクの概要をより適切に説明できれば、金融機関からはより安い金利で資金を借りられるはずですし、格付会社による信用格付も改善する可能性が高まります。現時点では未上場の企業の場合でも、今後事業が拡大していくにつれて、株主や債権者などの資本市場と対話できる経営管理は必要になるはずです。

それでは、本日のテーマは、「企業価値の創出とは何か」です。

まず結論から申し上げれば、「期間収益から負債コストと株主資本コストを控除した税引後の収益がその期間の企業価値創出額」とみなせるということです。借入金の利息は債権者に帰属し、株主資本コストは株主に帰属し、税金は政府に帰属しますから、それらをすべて控除した後でプラスとなった金額が企業価値を創出できた金額となるわけです。

BCMとは

この考え方のフレームワークは、ご覧の図で、中央にあるバランスシートの左側の資産の各項目からスタートして左回りに見ていただくと分かりやすいかと存じます。

企業は、さまざまな事業活動をして、さまざまな資産を保有しているわけですが、「それぞれの保有資産から発生する可能性のある最大想定損失」がその企業が抱えているリスク量となります。この最大想定損失をどうやって推定するかについては、第6回目と第7回目に改めてご説明いたします。

「売掛金や棚卸資産等の営業資産」にも、「他の事業への出資である投資資産」にも、また「金融資産」にも「固定資産」にも、決算対象の1年間に発生する恐れのある最大想定損失というものが存在いたします。たとえ経営者がその数字をはっきりと意識しなくても、株主や債権者などの資本市場は、「企業全体での最大想定損失、すなわちリスクの総量が、その企業の株主資本によってちゃんとカバーされているか いないか」を、暗黙の内に評価して、「株価」や「信用格付」や「貸出金利」に反映させているものと考えられます。この点については、次回改めてご説明いたします。

この「リスクの総量は、株主資本で補われているべきだ」というのが、現在 内外の資本市場が企業に求めている基本的な考え方です。

借入金である負債には支払金利というコストがかかりますが、株主資本にもコストがかかっていることを認識しなくてはなりません。そのことは第8回に改めてご説明いたします。

収益からこれらのコストと税金を差し引いた後で、プラスが残っていれば、その期間、その企業は、その額だけ企業価値を創出できたということになります。もしこれらのコストを控除した後の収益がマイナスであれば、その額だけ企業価値を喪失してしまったということになります。

本日のポイントをまとめますと、「企業が株主や債権者から評価を得るためには、負債コストのみならず株主資本コストも上回る収益、すなわち企業価値を毎年着実に創出する必要がある」ということでした。