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経営者のための税務・会計解説

税務・会計アラカルト ~知っておきたいニュースを解説

2011.10.18どうなる法人税?企業の決算対策

この文章は、東京 朝日税理士法人によるものです。

1.法人税は増税なのか?減税なのか?

国税庁の報道発表資料によると、平成21事務年度末(平成22年6月30日)の黒字申告割合は25.5%と、過去最低の水準となっています。黒字割合が低水準なのは、平成20年9月15日のリーマンショックの影響が大きいようです。今年に入ってからは東日本大震災が発生し、中小企業の経営は厳しさを増しています。
急速に円高が進む中、震災の復旧・復興財源について現在議論がされています。法人税については「増税」と報道されていますが、政府税制調査会の議論をよく見ると、現行の法人の実効税率40.7%が40%弱の水準に引き下げられる見込みとなっています。
このからくりは、いったん4.5%の法人税率の引き下げという減税の実施を決めた上で、一時的に復旧・復興財源として増税(法人税付加税)を実施するために、「増税」と報道されているのであって、結論としては現行より税率引き下げとなる予定です(図1参照)。次に増税の実施期間ですが、企業の国際競争力の確保や産業空洞化防止の観点から3年間という短期的な措置を予定しています。従って「増税」とはいいながらも、平成24年度から平成26年度の3年間は現行の法人の実効税率が若干引き下がり、その後は4.5%の減税となる見込みです。
税制改正については国会の動向次第で不透明さは拭えませんが、税率の引き下げと引き上げは黒字企業のキャッシュフローに大きな影響を与えます。そこで、今回は、黒字企業の決算対策と赤字企業の黒字化対策について、その具体策を取り上げます。

【図1】

◆この文章は平成23年10月1日現在の状況に基づいて作成しています。
また、税制改正の内容は国会で承認されて初めて確定されますので、ご留意ください。

2.赤字企業の対策

赤字を回避する黒字化対策にはさまざまな方法がありますが、ここでは(1)減価償却費の非計上、(2)含み益のある資産の売却、(3)役員給与の見直しを取り上げます。

減価償却費の非計上

減価償却費については、会計と税法の取り扱いは異なります。法人税法上は減価償却費は限度額内であれば、任意に税務上の費用である損金に計上できますが、会計上は任意に計上できるような基準はありません。会社法上の決算では、一般に公正妥当と認められた会計基準を重視すべきなので、法人税法上は減価償却費を任意計上できるからといって、減価償却費を計上せずに、名目的な利益を計上することは避けるべきでしょう。金融機関は「当期利益+減価償却費」を借入金の返済原資、つまりキャッシュフローと簡易的に見るため、減価償却費の非計上による利益確保が必ずしも資金調達に好影響を及ぼすとはいいきれません。
ただし、正当な理由があれば、償却方法の変更等により、減価償却費を少額に算出することで利益を増加させることができます。平成19年度の改正により加速度償却が採用された定率法では、取得後数年間は減価償却費が比較的大きくなるため(図2参照)、定額法へ変更することや、リース・レンタルによるコストの平準化など購入以外の方法を検討することも利益確保につながります。
また、一定の中小企業の場合、30万円未満の資産について購入時に全額損金(税務上の費用)に計上することも可能ですが、敢えて資産に計上することも利益確保になります。10万円以上20万円未満の資産については、資産計上すると、償却資産税の課税対象になってしまうので一括償却資産(3年で均等償却)として扱うことも一考です。
(図2)定額法と定率法の減価償却の比較表(取得価額100万円、耐用年数10年の場合)

【図2】定額法と定率法の減価償却の比較表(取得価額100万円、耐用年数10年の場合)

含み益のある資産の売却

簿価より時価が高い有価証券、遊休土地、遊休施設設備等の売却で含み益を実現することは、利益対策とともに当面の資金繰り対策としても有効です。土地の売却は時間を要することもあり計画的な検討が必要ですが、有価証券は株価や利益の状況を確認しながら短期間で売却することが可能です。
含み益のある資産の売却は黒字化対策としては有効な方法ですが、土地・有価証券の多額の売却は消費税の計算に影響が及び、納税が増える可能性もありますので、法人税だけでなく、消費税も含めた総合的な検討が必要です。また、100%グループ法人間では譲渡時に売却損益が繰り延べられる場合があるので、売却先がグループ内の場合には法人税等が軽減されることもあります。

役員給与の見直し

平成18年度税制改正で役員の給与制度が見直され、期中の増額改訂だけでなく、期中の役員給与の減額についても要件が厳格化されました。役員給与は定期同額給与・事前届出給与・利益連動給与に該当しないものは法人税法上は損金に算入されませんが、期中に役員給与を減額する場合、定期同額給与に該当しなくなることがあります。
定期同額給与とは、支給時期が1月以下の一定の期間ごとの支給で支給額が同額でなければ損金算入が認められないものをいい、決算直前に利益対策・資金繰り対策のために役員給与を減額した場合は、役員給与の一部が損金に算入されません。これは「経営状態が著しく悪化したことなどやむを得ず役員給与を減額せざるを得ない事情」があれば減額後も定期同額給与に該当しますが、一時的な資金繰りの都合や業績目標値に達しなかったことによる減額は認められていないためです。東日本大震災後、役員報酬の減額を検討する中小企業も多いようですが、一定の合理的な事由がない場合は減額が認められないこともあるため、法人税法上、安易な減額改訂は要注意です。

【業績悪化改訂事由の例】

【図3】役員報酬の減額の否認例

3.黒字企業の対策

決算予測等によって、利益が出ると見込まれる企業は、決算対策が大きな関心事となってくることでしょう。法人税の実効税率の低下が議論されている今、どの期の所得になるのかが重要なポイントです。一口に決算対策といっても不良債権の整理、遊休資産の除却といった資金流出を伴わない対策もあれば、決算賞与の支給、少額減価償却資産の購入、特別償却や税額控除対象資産の購入といった資金流出を伴う対策もあります。資金繰りの状況や課税所得の大きさなど、会社の事情を考慮し、会社にとって実行可能で、かつ有効な方法を検討することが重要です。

4.実務上の対応

売り上げを伸ばすことができれば、一番の黒字化対策となりますが、不況が長引く中では、売り上げを維持することも困難な状況です。決算の黒字化対策を行いながらも、売り上げの増加のための施策を打ったり、現状の売り上げにあった経営体制の構築が重要です。
一方、好業績を維持している企業は、今後の税制改正による実効税率の低下によるキャッシュフローの変化(手許資金の増加)を認識した事業計画を立てることも重要です。
具体的な対応については貴社の顧問税理士等の専門家にご相談ください。

【東京 朝日税理士法人】
税務、会計、コンサルティング、会社設立支援、不動産など、総合サービスを展開。
法人から個人まで、幅広い顧客層への対応を行っている。
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