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経営者のための税務・会計解説

税務・会計アラカルト ~知っておきたいニュースを解説

2012.3.19社会保障・税一体改革大綱にみる法人税の方向性
-平成27年度以降、法人税率はさらに下がるか?-

この文章は、東京 朝日税理士法人によるものです。

1.社会保障・税一体改革大綱が発表

社会保障・税一体改革(以下、「一体改革」)の政府素案が発表されたのが平成23年12月30日。翌日、年の瀬の31日の朝刊各紙一面に「消費税率引き上げ」という大見出しが載っていたのは記憶に新しいことです。
素案の内容は、消費税率の引き上げだけでなく、高額所得者層への所得税の負担増(最高税率40%から45%へ)、相続税の負担増(基礎控除40%カット、最高税率50%から55%へ)なども織り込まれています。その後、一体改革は、平成24年2月17日に大綱としてまとめられ、閣議決定しました。
報道では取り上げられることがほとんどありませんが、一体改革において、法人税はどのように取り扱われているのでしょうか。実は、抽象的に方向性だけしか示されていませんが、とても示唆にとんだ表現になっています。

社会保障と税の一体改革素案

2.法人税課税の方向性

まず、法人税等の実効税率については、平成23年11月30日に現行の40.69%が、24年度から26年度までが38.01%、27年度以降は35.64%に引き下げる法案が、国会で成立しています。

法人税等の実効税率の今後の推移予定

それでは、一体改革大綱の法人課税に関する記述を抜粋してみましょう。結論からいうと、平成27年度から法人税等の実効税率が35%台になりますが、法人税等の実効税率については、まだ引き下げの可能性があることを示唆しています。

法人税等の実効税率の今後の推移予定

3.平成27年度以降の法人税等の実効税率の引き下げの可能性

雇用と国内投資拡大の観点から検討

法人税等の実効税率の引き下げの可能性を示唆するキーワードは、「雇用」の確保です。
日本から海外へ生産拠点、研究開発拠点が移転してしまえば、その分、日本国内の雇用が消失します。雇用環境が悪化すれば、将来に対する不安から、お金を使うこと(=個人消費)を手控えます。
個人消費はGDP(国内総生産)の6割弱を占める最も重要な要素です。日本経済を支える個人消費が振るわなければ、景気は良くならないといえます。
そのためには、企業に国内投資を拡大してもらいたいところです。しかし、「円高」「高い法人税の実効税率」「新興国の低賃金」「環境制約」「経済連携の遅れ」「震災後の電力供給不足」という6重苦の中で、国内に投資するか、海外に投資するかを迫られたとき、経営者はどちらの選択をするでしょうか?
その意味では、次のような負の連鎖を断ち切らなければなりません。

日本の産業の6重苦

今般の税率引き下げの効果の検証

法人税等の実効税率の引き下げは、平成24年度から適用開始となります。税率の引き下げは、単純に法人税の税収減となるのか、あるいは新たな投資を呼び起こし税率が下がっても税収増となるのか。
日本の財政も厳しい以上、税率を引き下げた結果、法人税収が減ったということになると、さらなる法人税率の引き下げは困難になります。逆に税率を引き下げても、法人税収が増えれば、さらに法人税率を引き下げるべきという意見に弾みがつくことになります。

主要国との競争上の諸条件等に関する検証

ギリシャ財政破綻の懸念が欧州全体に飛び火した欧州債務危機にあって、主要国は財政の健全化のために付加価値税の増税を発表しましたが、法人税率の引上げは行わないとされています。これは、法人税率の引き上げによって、生産拠点が海外移転することを防ぐためです。失業率の上昇と移民の問題を抱えている欧州先進国にとって、雇用の確保は最重要課題といえます。欧州の主要国の法人税率が上昇した場合には、相対的に高いとされる日本の実効税率との差が縮小することになりますが、そうはならないようです。

新成長戦略を踏まえて検討

平成22年6月18日に閣議決定された「新成長戦略」のベースとなった産業構造ビジョンには、法人税等の実効税率の国際的水準を25%から30%とし、それを目指した法人税改革を目指すべきとしています。

以上の1から2を踏まえて、法人税等の実効税率が35%台になる平成27年度以降において、法人課税のあり方について検証することを一体改革の大綱で発表しました。法人税等の実効税率については、もう一段の引き下げの余地があることを含みとして示唆しています。

4.実務上の対応

平成24年度税制改正大綱は、小ぶりな内容とはいえ、企業の研究開発、設備投資を後押しする内容となっています。黒字企業のとるべき合理的な行動としては、前向きな設備投資を実施するか、あるいは、実効税率の引き下げが開始となる局面では、キャッシュフローを重視して、内部留保に励み財務体質の強化を図ることです。
具体的な対応については、貴社の経理財務担当者あるいは専門家である顧問税理士等とご検討ください。

【東京 朝日税理士法人】
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法人から個人まで、幅広い顧客層への対応を行っている。
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