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経営者のための税務・会計解説

税務・会計アラカルト ~知っておきたいニュースを解説

2012.10.16金融円滑化法の期限切れに伴う与信管理

この文章は、東京 朝日税理士法人によるものです。

1.平成25年3月末に到来する金融円滑化法の期限切れ廃止

金融円滑化法という法律が平成25年3月末に期限切れになるのをご存知でしょうか。知っている方は自社の与信管理に関する第一関門をクリアしたといえるでしょう。念のために説明すると、金融円滑化法は、「中小企業者等に対する金融の円滑化を図るための臨時措置に関する法律」の通称です。中小企業者や住宅ローンの借り手が金融機関に返済負担の軽減を申し入れた際に、金融機関はできる限り貸付条件の変更等をおこなうよう努めることなどを謳っています。

リーマンショックをきっかけとする金融危機・景気低迷による中小企業の資金繰り悪化等への対応策として、平成21年12月に約2年間の時限立法として施行されました。当初期限である平成23年3月末を迎えても中小企業の業況や資金繰りは依然として厳しかったことから1年間延長され、その後、さらに平成25年3月末までとする最終延長が決定されました。

そもそも金融円滑化法に基づく貸付条件の変更等をどのくらいの中小企業が受けているのでしょうか。東京商工リサーチによると中小企業の約10%が申請をおこない、申し込みに対して90%以上が実行されているとの調査結果を発表しています(※)。

※東京商工リサーチが平成24年7月23日に発表した国内410金融機関(平成24年3月末時点)「中小企業金融円滑化法」に基づく返済猶予の実績調査

金融円滑化法の導入と再々延長期限

2.金融円滑化法の期限切れの意味

金融円滑化法により金融機関が実施しているのは貸付条件の変更等です。すなわち元金の返済を猶予して利息の支払いのみにするのが典型的な例です。このことから貸付条件の変更等は、資金繰りが悪化した中小企業の倒産を回避する効果があります。この貸付条件の変更は債権放棄ではありませんから、いつかは元金を返済しなくてはなりません。平成25年3月末の金融円滑化法の期限切れ廃止をきっかけに、延命されていた企業の倒産が現実のものとなる可能性があります(※)。

そもそも今回の最終延長は、貸付条件等の変更を受けている中小企業の出口戦略を円滑に進めていくための時間が必要との判断がありました。なんといっても全体で約10%の中小企業が返済猶予を受けているという調査結果が出ているわけです。いきなり金融円滑化法を廃止すると影響が大きいので、猶予期間を与えるから官民一体となって何とかソフトランディングしてくれというニュアンスが多分に含まれています。

※保証協会の保証つき融資については、保証協会は金融円滑化法施行前から貸付条件の変更の相談に柔軟に対応していました。保証協会が金融円滑化法期限切れ後も以前と同様の対応をとるか否か不透明な点はありますが、仮に貸付条件の相談に応じてくれるのなら、金融円滑化法の廃止の影響はこの部分には及ばないことになります。

3.貸付条件の変更等を受けている企業でも平成25年3月末までに倒産する可能性あり

中小企業が金融円滑化法に基づく返済条件変更を受けていても、金融機関と貸付条件の変更等の相談・交渉を進める中で、自主的に法的手続きに入ることもあります。法的手続きとしては、破産等に進み事業を廃止するか、民事再生等に進み抜本的な経営再建を目指すことになります。このような倒産企業に対する売掛債権等はほとんど大部分が貸し倒れとなることが予想されます。

帝国データバンクが発表する第6回「金融円滑化法利用後倒産」動向調査によると、平成24年に入り、金融円滑化法に基づく貸付条件の変更等を受けていたことが判明した企業倒産は、年間300件を超えるベースで推移しています。

4.中小企業の経営支援のための政策パッケージ

金融円滑化法が平成25年3月31日まで最終延長された結果、金融機関は引き続き中小企業の借り手の申込みに対し、できる限り、条件変更等に応じることになりました。その一方で金融円滑化法の期限切れをきっかけに中小企業の大量倒産を避ける体制を構築するために、平成24年4月20日に内閣府・金融庁・中小企業庁が連名で、「中小企業金融円滑化法の最終延長を踏まえた中小企業の経営支援のための政策パッケージ」を策定しました。

中小企業の経営改善・事業再生の促進等を図るため、以下の取組を強力に進めることとし、関係省庁・関係機関と連携し、早急にその具体化を図るとされています。

  • 金融機関によるコンサルティング機能の一層の発揮
  • 企業再生支援機構及び中小企業再生支援協議会の機能及び連携の強化
  • その他経営改善・事業再生支援の環境整備

このうち1の金融機関によるコンサルティング機能の一層の発揮の部分は重要なので、原文を抜粋します。

1.金融機関によるコンサルティング機能の一層の発揮

金融機関は、自助努力による経営改善や抜本的な事業再生・業種転換・事業承継による経営改善が見込まれる中小企業に対して、必要に応じ、外部専門家や外部機関、中小企業関係団体、他の金融機関、信用保証協会等と連携を図りながらコンサルティング機能を発揮することにより、最大限支援していくことが求められている。

このため、金融庁は、以下の取組みを行うことにより、金融機関によるコンサルティング機能の一層の発揮を促す。

  • 各金融機関に対し、中小企業に対する具体的な支援の方針や取組み状況等について集中的なヒアリング(「出口戦略ヒアリング」)を実施する。
  • 抜本的な事業再生、業種転換、事業承継等の支援が必要な場合には、判断を先送りせず外部機関等の第三者的な視点や専門的な知見を積極的に活用する旨を監督指針に明記する。

(注)今般の東日本大震災により大きな被害を受けている地域においては、中小企業の置かれている厳しい状況や中小企業のニーズに十分に配慮したコンサルティング機能の発揮が強く求められている。また、産業復興機構や東日本大震災事業者再生支援機構も整備されている。こうした点を踏まえ、事業再生に当たっても、被災地の実情を十分に配慮した中長期的・継続的な支援が期待される。

各金融機関はこの政策パッケージの公表を受け、再生が見込める企業と経営再建の見込めない企業とに峻別するための作業をおこなっています。

金融機関は再生が見込める案件については、独自に再生を手掛けたり、中小企業再生支援協議会に持ち込む動きを加速しているようで例年と比べるとかなりハイペースで件数が増加しているようです。逆に、金融機関は経営が悪化している融資先企業に対して来年度以降で引当ての積み増しが要求される可能性が高いため、平成25年3月期に前倒しで引当計上するでしょう。たとえば融資先企業の平成24年9月末時点での業績で債務者区分の見直しを実施するなどの動きが予想されるわけです。

2に企業再生支援機構及び中小企業再生支援協議会(以下、「協議会」)の機能及び連携の強化とありますが、協議会の取組方針に今後の再生のあり方を示唆する内容が記載されています。つまり、協議会が実施していた再生計画策定支援にかかる1案件あたりの標準処理期間を2カ月に設定し、平成24年度に全体で3,000件を目指すとあります。実に月に250件のペースで再生案件を処理していくことになり、これは従来の10倍の数です。いままで通りにやっていたのでは10倍の処理件数をこなすことはできません。そこで協議会は財務面及び事業面の調査分析(デューデリジェンス)を省略することができるとされ、さらに金融機関が自己査定で実施した調査分析結果等を再生計画原案として使用することにより、時間の大幅短縮を可能にするようです。

協議会に持ち込まれた案件については、あくまでも金融機関がその企業に金融支援を実施することにより、再生を図ることになるので、仕入先に債権等のカットを要請することはなく、影響を与えることはないといえます。また、仕入先からすると得意先(売掛先)に協議会が関与していることは分からないといえます。

なお、協議会の対応は第一次対応と第二次対応とがあります。第一次対応は窓口相談です。ここで再生可能と判断されて初めて第二次対応の再生計画策定支援へと進みます。

5.実務上の対応 与信管理

以上の動向からすると、平成25年3月末の金融円滑化法の期限切れに向かって行政側も金融機関側も水面下で相当な準備を進めていることが分かりますし、金融機関の債務者区分の見直しの動きは平成24年10月以降本格化することが予想されます。

そこで今後は与信管理により注意を向ける必要があることを認識して下さい。具体的には次の点に留意すべきでしょう。

  • 取引先からの支払条件の変更については安易に応じることを避け、万が一の倒産時の被害を最小限とするような対応を取ること
  • 上位10社の得意先が売掛金総額の何パーセントになるかを把握し、帝国データ等の企業調査報告書や商業登記簿・不動産登記簿を取り寄せ与信管理に努めること
  • 営業活動を通じて取引先の財政状態を把握すること
  • 23の結果によっては取引信用保険の活用を検討すること
    取引信用保険を活用することで、保険契約者である企業が取引先の倒産または代金の支払い遅延発生等により売掛債権を回収できない場合に、売掛債権の一定割合を保険金で補償してもらうことができます。
  • 中小企業庁や金融庁のウェブサイトなどから最新情報を入手することを心掛けること
【東京 朝日税理士法人】
税務、会計、コンサルティング、会社設立支援、不動産など、総合サービスを展開。
法人から個人まで、幅広い顧客層への対応を行っている。
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