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経営者のための税務・会計解説

税務・会計アラカルト ~知っておきたいニュースを解説

2014.3.4未上場企業における役員退職金の考え方と準備

この文章は、東京 朝日税理士法人によるものです。

※この文章は平成26年2月14日現在の情報に基づいて作成しています。
また、具体的な対応については貴社の顧問税理士などの専門家とご相談ください。

1.役員の退職金の支給をめぐる最近の状況

近年、上場企業の役員退職金制度に異変が起きています。退職金制度の廃止を発表する企業が相次ぎ、大部分の上場企業がすでに役員の退職金制度を廃止しました。企業の業績との連動性がより高い報酬体系に改訂するというのが理由です。また株式の持合制度が崩れ、安定株主の割合が相対的に低下したため、業績悪化や不祥事のときには、役員の退職金支給の議案を提出しても株主総会で可決できるかが不透明になったという背景もあります。

それに対して、同族経営の未上場企業の場合は、そもそも役員退職金の廃止という発想自体がありません。多くの場合、経営者であると同時に株主でもあるので、会社の存続最優先です。現役の時には役員報酬を我慢してでも業績を確保し、役員を退任するときに退職金でもらおうという考えはなじみやすいでしょう。報酬の後払いの要素が強い退職金制度は未上場企業のオーナーの心情にあっているといえます。同族企業は所有と経営が一致している場合が多く、株主総会で役員の退職金支給の議案が否決される恐れがほぼありません。それより未上場企業にとっては、役員退職金の財源をいかに確保するかという方がより重要な問題となるでしょう。

今回のコラムでは未上場企業の役員の退職給与について、その支給のタイミングと税務上の損金算入限度額、財源確保の問題を取り上げます。

2.役員退職給与の支給のタイミングは?

退職した役員に支給するのが役員退職金です。そこで会社を現実に退職しないと支給できないというイメージがあります。

しかし、実際には退職したときだけでなく、退職したと同様の事情にあると認められるときに支給する退職金は、税務上も退職給与として取り扱われます。

よくある例としては、創業者である代表取締役社長が、高齢などを理由に後継者である子に社長を譲るタイミングで税務上損金として認められる退職金を支給できるかという問題です。ここでは創業者は代表権のない非常勤の取締役会長に就任予定とします。

実務上は、法人税法基本通達9-2-32を参考に判断することになります。創業者は代表権のない非常勤の取締役会長に就任し、経営の実権を後継者にバトンタッチします。分掌変更後、会長としての役員給与の水準は社長時代と比べて、激減させます。そうすれば実質的に役員を退職したと同様の事情に当たると解され、その際に支給する退職金は税務上も退職給与として取り扱われます。この通達の例示以外でも、実質的に退職したと同様の事情が認められれば退職給与に該当しますが、実務上はこの例示を重視して判断することが通常です。

なお、分掌変更により支給された金額が、役員の退職給与として取り扱われても、その全額がそのまま税務上損金として認められるかは別の問題です。

法人税法基本通達9-2-32 (役員の分掌変更等の場合の退職給与)

法人が役員の分掌変更又は改選による再任等に際しその役員に対し退職給与として支給した給与については、その支給が、例えば次に掲げるような事実があったことによるものであるなど、その分掌変更等によりその役員としての地位又は職務の内容が激変し、実質的に退職したと同様の事情にあると認められることによるものである場合には、これを退職給与として取り扱うことができる。

  1. 常勤役員が非常勤役員(常時勤務していないものであっても代表権を有する者及び代表権は有しないが実質的にその法人の経営上主要な地位を占めていると認められる者を除く。)になったこと。
  2. 取締役が監査役(監査役でありながら実質的にその法人の経営上主要な地位を占めていると認められる者及びその法人の株主等 で令第71条第1項第5号《使用人兼務役員とされない役員》に掲げる要件の全てを満たしている者を除く。)になったこと。
  3. 分掌変更等の後におけるその役員(その分掌変更等の後においてもその法人の経営上主要な地位を占めていると認められる者を 除く。)の給与が激減(おおむね50%以上の減少)したこと。

(注) 本文の「退職給与として支給した給与」には、原則として、法人が未払金等に計上した場合の当該未払金等の額は含まれない。

【国税庁ホームページより抜粋】

3.適正な役員退職給与の限度額は?

退職した役員に支給する退職給与の額のうち、「不相当に高額」の部分の金額は、税務上損金として認められません。不相当に高額であるかは、役員に従事していた期間、退職の事情、同種・類似規模の法人の役員退職給与の支給状況等により総合的に判断されます。しかし、役員退職給与は具体的な算定方法が法令、通達等で示されていないため、判例等を参考にして、一般的には功績倍率法により支給額を算定することが多いようです(功績倍率が適当でないときには1年あたり平均額法が採用されることもあります)。

功績倍率法による役員退職金

功績倍率法の算式から、「最終報酬月額」と「功績倍率」が適正であれば、結果として算定された役員退職給与の額を限度額として支給すれば税務上も損金として認められることになります。

功績倍率は、同種・同規模法人の役員退職給与が、最終報酬月額に勤続年数を乗じた金額の何倍にあたるかという数値です。しかし、その会社にあった功績倍率を具体的に求めることは非常に難しいといえます。理由として社長、専務、常務、平取締役といった役員の職位によって在職期間が異なるだけでなく、同種・同規模法人の支給状況を照らし合わせることも必要とされていますが、これに関して言えば比較する他の法人の役員の退職給与のデータは簡単に分からないなどがあげられます。

税理士などが社長から役員の退職金の相談を受けると、社長の功績倍率をとりあえず2倍から3倍程度として役員退職給与の損金算入限度額を試算することが多いかと思われます。その3倍という数値は過去の判例からきています(東京地裁昭和55年5月26日判決。控訴審と上告審である最高裁昭和60年9月17日判決も第一審判断を維持)。昭和48年当時の全上場企業を調査した結果、算出された社長の功績倍率が3.0で、「最高3.0を基準として」「退職給与の相当性を判断することは合理的であるというべき」と判示されました。しかし、2倍から3倍という功績倍率は絶対的なものではありません。あくまでも実務的な目安にしかすぎません。

退職金支給規程を制定し、創業者などで個別事情がある場合には、株主総会の議事録にも、その事情と算定根拠を記載しておくべきでしょう。

4.役員の退職給与と保険契約

同族経営の未上場企業の役員退職金で最も重要な問題は、支給財源を確保できるかどうかということです。役員退職金の算定式や税務上の取り扱いなど、重要な論点はありますが、現実には財源がなければ退職金を支給することはできません。それでは役員退職金の財源を確保する手段として、どのようなものが考えられるでしょうか。まず頭に思い浮かぶのは預金と生命保険でしょう。一般には預金より生命保険の方が次の点で優れているといえます。万一の病気や事故などによる死亡した場合の弔慰金の確保になるだけでなく、保険商品の種類によっては支払保険料の一部を費用計上しながら、財源を確実に積み立てることができる点などです。

5.実務上の対応

役員退職金のプランニングは、いつ後継者に経営を承継させるのかなど、自分の退職の目標となる年齢を決めることがまず第一歩となります。そうすれば在職年数が確定し、報酬月額の水準を予測し、目安となる功績倍率を乗じると役員の退職給与の損金算入限度額が計算できます。

次にその財源を確保するための手段として保険を活用する場合には、目標となる年齢まであと何年あるのか、そしてどのような保険商品が適しているのかを検討します。

これらの検討に当たっては、専門知識が必要となるため顧問税理士などとの協力が欠かせないでしょう。

【東京 朝日税理士法人】
税務、会計、コンサルティング、会社設立支援、不動産など、総合サービスを展開。
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