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税務・会計アラカルト ~知っておきたいニュースを解説

2014.5.27生前贈与による子世代への資産承継

この文章は、東京 朝日税理士法人によるものです。

※この文章は平成26年4月24日現在の情報に基づいて作成しています。
また、具体的な対応については貴社の顧問税理士や弁護士などの専門家とご相談ください。

1.生前贈与が増加傾向

最近、生前贈与を進めている方が増えています。平成24年分贈与税の申告書を提出した人は43万7千人であり、平成20年の34万7千人から約9万人も増加しています

なぜ最近になって贈与が増加しているのでしょうか。その理由のひとつは、政府が贈与を推進していることが挙げられます。親世代が保有する資産を現役世代に早期に移転してもらい、その結果、現役世代が消費を増やすことで、景気回復につなげたい。景気の早期回復を図りたい政府は、そう目論んで贈与税の緩和をしています。昨年新たに創設された教育資金の一括贈与制度も、その一環と言えるでしょう。

さらに、平成27年からの相続税の課税強化により、相続税の基礎控除が4割縮小され、相続税を課税される方が増加する見込みです。今まで相続税はかからないと思っていた人の、思いもよらない課税への対策として、簡単にできる資産承継である贈与が注目されているのです。

そこで今回のコラムでは、生前贈与について、その基本的な税制と特例制度、上手に贈与をすすめるポイントについて取り上げます。

※数値は、国税庁報道発表資料 平成25年5月「平成24年分の所得税、消費税及び贈与税の確定申告状況等について」に基づいて記載しています。

2.贈与税の基本

贈与税は、贈与を受けた人に課税されます。1月1日から12月31日までの課税期間に、その間に受けたすべての贈与の財産の価額の合計額を課税価格といいます。よく110万円まで非課税と耳にする方も多いでしょう。この課税価格が110万円を超えると、贈与税が発生し、その金額に応じて徐々に税率が高くなるようになっています。この贈与税の課税方法を暦年課税といい、税率表は下記のようになっています。

【図表1】贈与税の税率表
■現行
基礎控除および配偶者
控除後の課税価格
税率 控除額
200万円以下 10%
300万円以下 15% 10万円
400万円以下 20% 25万円
600万円以下 30% 65万円
1,000万円以下 40% 125万円
1,000万円超 50% 225万円
■平成27年以降
(1)20歳以上の者が直系尊属から贈与を受けた場合
基礎控除および配偶者
控除後の課税価格
税率 控除額
200万円以下 10%
400万円以下 15% 10万円
600万円以下 20% 30万円
1,000万円以下 30% 90万円
1,500万円以下 40% 190万円
3,000万円以下 45% 265万円
4,500万円以下 50% 415万円
4,500万円超 55% 640万円 
(2)(1)以外の場合
 
基礎控除および配偶者
控除後の課税価格
税率 控除額
200万円以下 10%
300万円以下 15% 10万円
400万円以下 20% 25万円
600万円以下 30% 65万円
1,000万円以下 40% 125万円
1,500万円以下 45% 175万円
3,000万円以下 50% 250万円
3,000万円超 55% 400万円

【作成:朝日税理士法人】

例えば20歳以上の方が直系尊属から贈与を受けた場合において、平成27年以降は課税価格が400万円の贈与の場合、贈与税額は(400万-110万円)×15%-10万円=33.5万円となり実効税率は8%強です。1,000万円の贈与の場合、贈与税額は177万円になり実効税率は18%弱になります。

暦年課税とは別に、相続時精算課税という課税方法があります。これは65歳以上の親から20歳以上の子への生前贈与について、生涯2,500万円までの非課税枠を与えるものです。2,500万円を超える部分について、一律20%の贈与税が課されます。非課税枠が年110万円までしかない暦年課税より多額の贈与をしても贈与税がかからないため、一度にまとまった財産を贈与したい場合は有利な制度です。しかも、平成27年より、「60歳以上の父母・祖父母から20歳以上の子・孫への生前贈与」に対象者が広がるため、より一層こちらの制度の利用を選択する人が増えると思われます。ただし、その場合の贈与財産は相続発生時に相続財産として加算され、相続税の対象となるなど注意が必要です。従って、相続時精算課税制度の利用にあたっては、その長所・短所をよく理解する必要があります。
図表2をご参照ください。

【図表2】暦年課税制度と相続時精算課税制度の概要
  暦年課税制度 相続時精算課税制度
概要 1月1日から12月31日までに贈与を受けた価額の合計に対して課税する制度 親から子への贈与について、選択制により、贈与時に軽減された贈与税を納付し、相続時に相続税で精算する制度
贈与者 制限なし 65歳以上の親
(平成27年より贈与者の年齢が60歳に引き下げられ、祖父母も追加されます。)
受贈者 制限なし 20歳以上の子
(平成27年より受贈者の範囲が20歳以上の孫まで拡充されます。)
控除額 基礎控除額
年110万円
特別控除額
2,500万円
税率 別表【図表1】 特別控除額を超えた部分に対して一律20%
相続時精算 相続開始前3年以内の贈与は相続財産に加算 相続税の計算時にすべての贈与を相続財産として加算
選択の届出 不要 必要
(一度選択すると、その親からの贈与では暦年課税制度が利用できなくなります。)

【作成:朝日税理士法人】

3.贈与税の特例を利用する

贈与税には、昨年創設された教育資金贈与制度などの特例があります。これらの特例を活用することが、上手な生前贈与につながります。
特例の利用には贈与税の申告が必要です。

【図表3】贈与税の主な特例一覧
直系尊属から教育資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税 祖父母などから教育資金の一括贈与を受け、受贈者が30歳に達するまでの間に教育資金として支出した金額は1,500万円を限度として非課税。
直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税 平成25年1月1日から平成26年12月31日までの間に直系尊属から住宅取得資金贈与を受けた場合、一定の非課税金額までは贈与税が非課税
(平成26年は一定の省エネ等住宅は1,000万円まで、それ以外の住宅は500万円まで非課税)
贈与税の配偶者控除 婚姻期間20年以上の配偶者からの居住用不動産または居住用不動産を取得する金銭の贈与を受けた場合に、暦年課税の非課税枠と合わせ2,110万円まで非課税。
非上場株式の贈与税の納税猶予制度 一定の非上場株式の一括贈与の場合に、その贈与税の納税を猶予。

【作成:朝日税理士法人】

4.贈与時の注意点

金融資産の贈与は毎年積み重ねると効果が大きく、簡単に実行できることからよく行われています。ただし後々のことを考えると、贈与の証拠を残すことが重要です。例えば、親子間の現金の贈与で、親が子供名義の預金通帳に振込んだ後、その通帳や印鑑の管理を親が行ったとしたらどうでしょうか。この場合、贈与財産の管理が受贈者である子供に移っておらず、贈与と認められない可能性があります。贈与後は贈与財産の管理は受贈者に移っていることが必要となるためです。簡単そうに見える贈与でも、ポイントを外すと贈与として認められない場合があるので、手続きは慎重に行うべきでしょう。

それでは、上手に現金を贈与するにはどうしたらよいでしょうか。現金を贈与するには、まず贈与契約書を作成し、贈与者(親)と受贈者(子)がそれぞれ署名することが重要です。通帳や印鑑の管理は子が行います。預金も普通預金から定期預金、有価証券などに形が変われば、子供に管理権が移ったことが推定されるでしょう。

贈与した資金をそのまま浪費されることが心配な場合は、資産形成や相続税の納税資金の準備に活用してもらえばよいでしょう。贈与した現金で子や孫が終身保険や個人年金保険に加入すれば、万一のときの保障の準備ができ、満期保険金・年金などが資産形成の一部となります。満期保険金や年金などは、実際に相続が発生したときには、相続税納税資金として活用することもできます。上記のポイントを押さえれば、贈与を活用したよい資産承継が実現できることでしょう。

5.贈与を計画するにあたって

相続税の基礎控除は、平成27年より「3,000万円+600万円×法定相続人の数」になります。相続時精算課税で贈与された財産を合算した相続財産が、基礎控除の金額以下であるならば、相続税はかかりません。相続税は発生しないという前提の場合、2,500万円までの贈与であれば相続時精算課税を選択すると贈与税もかかりません。
一方、相続税が発生すると見込まれる場合、暦年課税や相続時精算課税の長所・短所をよく理解し、利用できる特例がないかよく調べた上で、生前贈与を検討すべきでしょう。

【東京 朝日税理士法人】
税務、会計、コンサルティング、会社設立支援、不動産など、総合サービスを展開。
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