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経営者のための税務・会計解説

税務・会計アラカルト ~知っておきたいニュースを解説

2014.7.22固定資産の管理と企業経営

この文章は、東京 朝日税理士法人によるものです。

※この文章は平成26年6月24日現在の情報に基づいて作成しています。
具体的な対応については、貴社の顧問税理士や弁護士などの専門家とご相談ください。

1.減損会計を適用していない企業の問題点

平成26年3月期の決算業務を終えて、ふと思ったことがありました。減損会計が日本企業の経営に与えたインパクトはあらためて大きかったと。調べてみると、減損会計を早期適用した企業の決算が平成16年3月期からだったので、ちょうど10年が経過したことになります。

上場企業などに対する減損会計の強制適用は、企業経営に収益性を重視させるきっかけとなり、遊休地の売却に拍車をかけました。将来的にあまりキャッシュを生み出さない、あるいは市場価格が下がっていることが判明した場合に、固定資産の帳簿価格を回収可能価額まで引き下げ、損失計上を要求するのが減損会計です。固定資産は有効に使わないと意味がないという考えを浸透させたように思えます。企業は贅肉をそぎ落とすように無駄な資産を売却し、総資産の圧縮につとめ、総資産利益率(ROA)を高めるような経営を行うようになりました。

この減損損失の計上は、あくまでも会計上の損失であり、税務上は損失としては認められません。上場企業などが強制適用となる一方、多くの未上場企業は減損会計を適用していないように思われます。デフレ経済が長く続いたわが国においては、企業規模の大小にかかわらず、固定資産の取得に当たり、設備投資に見合う回収可能性があるかを慎重に検討してきたはずです。しかし、減損会計を適用していない企業については、特に取得後の固定資産の管理に問題があり、不要なコストを負担し続けているケースが多いと感じています。固定資産は、毎年発生するランニングコストも無視できません。取得後の適正な管理も、収益性・キャッシュフローの視点から重要です。

そこで今回は、中小企業を前提として固定資産の管理と企業経営をテーマに取り上げます。

【減損会計とは】
資産の収益性が低下して投資額の回収が見込めなくなった場合に、その収益性の低下を帳簿価額に反映させる手続きで、平成14年に企業会計審議会から「固定資産の減損に係る会計基準の設定に関する意見書」として公表されています。
減損処理の対象となる資産は、有形固定資産、無形固定資産などがあります。

2.固定資産の管理

固定資産の管理の出発点は、経理部による固定資産台帳などの作成からはじまります。経理部は固定資産を取得すると固定資産番号をつけて台帳を作成します。減価償却はこの台帳に基づいて行います。その後の管理は数が多いと極めて煩雑なので、実務上の知恵としてシールを活用します。つまり現物資産に固定資産番号を記載したシールをつけて管理するのです。

取得の後のメンテナンス費用については、資本的支出または修繕費として計上します。

固定資産についてはこのような会計上の管理以外にも物理的な管理が必要です。すなわち現物管理と現況調査が欠かせません。

  • 固定資産の現物管理と現況調査
    現物管理とは、実際に現物を管理することをいいます。紛失、盗難や災害による滅失などを確認するために、継続的に現物を管理します。現況調査とは、固定資産が実在することを確かめ、さらに故障や滅失の有無、所在場所などをチェックして、登録データが固定資産台帳に正しく登録・更新されているかを確認する作業です。このとき役に立つのが、取得時につけた固定資産番号のシールです。経理部で保有する台帳の名称と現場で使用している名称が異なっていてもシールを使うことにより把握が可能になります。手順としては、管理部署あるいは管理責任者を決めて、経理部か総務部より現物調査の依頼を行い、調査の結果を報告してもらいます。報告事項としては固定資産の現在の使用状況、稼働状況、所在場所などです。不明点は管理部署あるいは管理責任者にヒアリングなどを行い、固定資産台帳などを更新します。
  • 固定資産の除却
    固定資産の除却は現物管理と現況調査の中で把握し、現物の管理部署または管理責任者から経理部などに報告します。除却の承認を行ったら、後日の税務調査に備えるためにも証拠資料として廃棄証明書を処分業者から入手するか、廃棄の様子を写真に撮っておきます。償却資産が除却されているにもかかわらず、誤った固定資産台帳をベースに償却資産税の申告を行うと、支払う必要のない税金を払うことになります。除却後はすみやかに固定資産台帳などを更新すべきでしょう。
  • 固定資産の売却
    除却と異なり、処分価値があるのが売却の特徴です。そこで売却価額の決定方法は所定の手続きを定め、売却価額が最大になるように努力します。
  • 固定資産の移動
    固定資産の設置場所を移動したときには、部門別の損益計算、原価計算、償却資産税の申告にも影響するので、所在場所の管理も重要です。

3.遊休資産の売却・除却による適正化

固定資産の現物管理と現況調査の結果、遊休状態にあるものを把握したときには注意が必要です。たとえば使用を停止したパソコン・製造用機械や閉鎖店舗・工場の跡地などが該当します。遊休資産は金食い虫です。保有しているだけで、固定資産税、償却資産税、保管場所の家賃などの維持コストがかかります。これらの遊休資産については、会社に収益をもたらしません。利用方法を見つけ出すか、利用方法がなければ、早期に売却などの処分を検討すべきです。

企業経営の健全化のためにも不要な資産は売却・除却を行って適正化する必要があります。このような不要資産を売却・除却すると、維持コストが不要になるだけでなく、ROAが改善されますし、他にもメリットがあります。

例えば売却すればキャッシュが生じるだけではなく、売却損が計上されると、法人税等を減少させる効果もあります。また、除却損も同様に税務上も損金となります。国際競争力強化などの観点から法人税等の税率の引き下げが見込まれていますので、売却するタイミングとしては早期売却の方が税効果は高いといえます。

また、使用を停止した機械や備品など不要な動産を処分することにより、それらの置き場となっていた事務所や工場、倉庫などのスペースが開放されます。空間の有効活用だけでなく、資産によっては職場の安全性の向上にもつながります。このように金銭面以外のメリットもあります。

以上のことから、企業にとって固定資産の管理体制を見直し、特に遊休固定資産を把握し、売却・除却を適正に行うことは、さまざまな観点からメリットは大きいといえます。固定資産の管理が徹底していない企業は、まず現状を正確に把握し、遊休資産の売却・除却などを検討してはいかがでしょうか。

【東京 朝日税理士法人】
税務、会計、コンサルティング、会社設立支援、不動産など、総合サービスを展開。
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