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経営者のための税務・会計解説

税務・会計アラカルト ~知っておきたいニュースを解説

2014.8.26突然の相続の発生時に会社が必要とする資金
-事業承継とリスクマネジメント-

この文章は、東京 朝日税理士法人によるものです。

※この文章は平成26年7月31日現在の情報に基づいて作成しています。
具体的な対応については、貴社の顧問税理士や弁護士などの専門家とご相談ください。

1.事業承継の現状

毎年5月になると中小企業白書が発表されます。中小企業白書は中小企業の現状や問題点を把握し、将来を展望するのに役立ちます。2014年度版白書の事業承継に関する記述※1をみると、中小企業が事業承継の準備などに苦労している現状が浮き彫りになっています。

まず、経営者の高齢化が指摘されています。2012年時点では、60~64歳の割合が最も高く、70歳以上の年齢層が占める割合も、過去と比較して最も高くなっています。
次に、事業承継を3年より先のことと考えている経営者が60歳代で約8割、70歳代で約6割、80歳代で5割超存在。また、事業承継の準備を「あまりしていない」、「全くしていない」、「準備の必要を感じない」と回答した経営者が、60歳代では約6割、70歳代で約5割、80歳代で約4割存在している、となっています。
このように、我が国の経営者の多くは高齢化しており、遠からず引退していくにも関わらず、事業承継をまだまだ先のことと考えている者が多く、また、そのための準備も十分に行っていない者が相当な割合で存在していることが分かる、としています。
さらに、2013年度版の中小企業白書※2によりますと、中規模企業では約4割、小規模事業者では6割超が親族への事業承継をおこなっています。少子化や職業選択の多様化により、事業を引き継ぐ意欲を持った親族内の後継者に代わり、親族外の第三者承継の割合が年々増加していますが、依然として親族内承継が一番多い現状が分かります。

※1 中小企業白書(2014年度版)246頁~257頁を参照。
※2 中小企業白書(2013年度版)143頁を参照。

2.会社が必要とする資金はいくらか?

ところで、企業の事業承継対策としては、経営者に不測の事態が生じた場合に事業運営が確実に継続できるよう資金を準備しておくことも必要となります。特に、先代経営者への依存度が高い、後継者が十分に育っていない、多額の債務を抱えている会社ではより多くの資金が必要になります。

では、事業承継時に用意したい資金とは、具体的にどのような用途のものでしょうか。
ここでは、経営者に不測の事態が生じた場合に、必要となる資金を設例をもとに求めてみます。

親族による事業の継続を前提とすると、
・当面の事業を営んでいく上で準備すべき資金(以下、a当面の資金)
・遺族の生活費と相続税の納税資金(以下、b死亡退職金)

の2種類を合算したものです。

a当面の資金の算出

まず、当面の資金がいくら必要となるかを求めてみましょう。経営者の突然の死亡による売上減少などの状況になったとしても、支払手形や買掛金、借入金の返済を滞りなく行うために備える資金です。
当面必要な資金は、一年以内に返済期日が到来する借入金返済のための資金に正味運転資金を考慮して求めます。正味運転資金は次のとおりとなります。

正味運転資金=売上債権-買入債務

※3 一般に、運転資金は棚卸資産を加味して求めますが、ここの説例においては、当面必要な資金である買入債務を中心に考えますので含みません。

設例
売上債権(受取手形+売掛金) 4,000万円
買入債務(支払手形+買掛金) 3,000万円
一年以内に返済期日が到来する借入金返済のための資金 3,000万円

正味運転資金=売上債権-買入債務=4,000万円-3,000万円=1,000万円
この設例の場合、売上債権>買入債務ですので、ここで求めた正味運転資金の1,000万円は近い将来現金化が図れる可能性があるため、当面の資金から減額します。

よって、この設例における当面の資金は、一年以内に返済期日が到来する借入金返済のための資金3,000万円から正味運転資金の1,000万円を減額し、a当面の資金=2,000万円となります。

ただし、従業員の当面の給与も含めて考えなければなりませんが、業種や企業規模などにより、給与額、従業員数がさまざまであるため、ここの設例においては考慮しないこととします。

b死亡退職金の算出

次に、死亡退職金を求めます。死亡退職金は遺族が生活費や、相続で取得した自社株式など相続時の納税資金として必要とし、会社が遺族に支払います。
遺族のために必要となる死亡退職金を求める算式は次のとおりとなります。

死亡退職金=退職金+弔慰金

役員の退職金の計算方法としては一般的に功績倍率方式があります。功績倍率方式の「最終報酬月額」と「功績倍率」が適正であれば、結果として算定された役員退職給与の額を限度額として支給すれば税務上も損金として認められます。

設例
業務外の死亡
死亡退職時の最終報酬月額 120万円
死亡時の在職期間 25年
功績倍率 2.5倍

弔慰金は創業社長でもあり、報酬月額の6カ月分を支給すると設定
(業務外の死亡における弔慰金の非課税限度額=報酬月額×6カ月)
最終報酬月額、功績倍率は適正と仮定
平成26年4月1日現在の税法規定で計算

死亡退職金=120万円×25年×2.5倍+120万円×6カ月=8,220万円
よって、この設例における、b死亡退職金=8,220万円となります。

したがって、この設例における会社が必要とする資金は次のとおりとなります。

会社が必要とする資金

3.会社が必要とする資金の準備

経営者に万が一のことがあった場合、従業員の確保はもちろんのこと、取引先や金融機関など関係者に、経営者が生存していた時と同等の信用をおいていただけるような準備が必要です。後継者が決まっていたとしても、経営の舵取りを順調にこなせるまでには時間がかかることも予想されます。
このようなリスクを回避し、これまでと同等の信用を維持し事業を継続するためには、必要とする資金が確保されなければなりません。
ところが、上述した設例のように、自社が必要とする資金を算定してみると、思った以上に多額になるのではないでしょうか。後継者がいないなどで廃業を視野に入れる場合には、会社の清算コストも加算され、さらに多額になるでしょう。
このように経営者に万が一のことがあって、信用を維持し事業の継続を図るため、一時的に多額の資金を準備するには、生命保険を活用する方法があります。生命保険の場合、保険会社が定める保険料を払込み、保険期間中に被保険者の方が死亡または高度障害状態※4になったとき、払込んだ保険料総額より大きな金額が保険金として保険会社から支払われます。保険契約者は会社、被保険者は経営者とし、保険金受取人を会社とした契約にすることによって、経営者に万が一のことがあった場合、会社として必要な資金を準備することが可能になります。

※4 生命保険会社・商品の種類などによって異なります。必ず各生命保険会社または保険代理店に確認してください。

4.実務上の対応

経営者の年齢と事業状況などに応じて必要とする資金は変わります。そこで、現時点で自社にとって必要とする資金を算定し、その資金の準備状況を確認してみてください。その結果、準備に不足があれば、それを補うために生命保険を活用します。
生命保険を検討するにあたっては、経営者の年齢と事業状況だけでなく、今後の事業計画・財務計画と照らし合わせ、適切な保険金額と保険期間、保険料などを決めます。選ぶ保険種類においても、加入した時点から保険金額が一定なタイプや、期間の経過に応じて段階的に保険金額が増加していくタイプなどさまざまな商品があり、加えて税務面のチェックも欠かせません※5。検討に当たっては高度な専門知識が要求されるので、顧問税理士や保険代理店などに協力してもらうことが必須となるでしょう。

※5 設例において、生命保険を活用する場合の必要とする資金の算定
設例のa""当面の資金の算定において、その資金を生命保険金で賄う場合、受取保険金は雑収入となり益金計上しますが、債務の返済に充当しても損金処理はできません。そのため保険金に対して法人税等が課税されますので納税額を考慮して算出します。設例の場合では、次のとおりa当面の資金の額を1.54倍します。
(法人実効税率を35%として計算 1÷(1-0.35)=1.54)

a当面の資金2,000万円×1.54=3,080万円
これにb死亡退職金8,220万円を合算しますと、11,300万円となります。

【東京 朝日税理士法人】
税務、会計、コンサルティング、会社設立支援、不動産など、総合サービスを展開。
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