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経営者のための税務・会計解説

税務・会計アラカルト ~知っておきたいニュースを解説

2014.10.21生産性向上設備投資促進税制とは?
-証明書・確認書の発行件数が右肩上がり!-

この文章は、東京 朝日税理士法人によるものです。

※この文章は平成26年9月24日現在の情報に基づいて作成しています。
具体的な対応については、貴社の顧問税理士や弁護士などの専門家とご相談ください。

1.半年で2万件を突破

平成25年6月に閣議決定されたアベノミクスの「第三の矢」である日本再興戦略では、向こう3年間(集中投資促進期間)で設備投資を10%増加させ、リーマン・ショック前の民間投資の水準である年間約70兆円規模に回復させる目標が立てられました。それを受けて、経済を再生し、産業競争力を強化することを目的とした「産業競争力強化法」が平成26年1月20日に施行され、その切り札のひとつとして創設されたのが「生産性向上設備投資促進税制(以下、本税制)」です。
本税制は、平成26年1月20日から平成28年3月末日までの期間において、生産性を向上させると認められた質の高い設備投資について、即時償却または最大5%の税額控除(平成28年4月1日から平成29年3月末日までの期間においては、特別償却50%または4%の税額控除)が適用でき、対象者および対象となる設備の範囲が広いことが特徴です。また、設備の導入方法についても、自己資金や借入金での購入だけではなく、割賦やファイナンス・リース取引も本税制の対象になります。
経済産業省のホームページによりますと、平成26年6月末時点の半年間で、設備投資に係る証明書あるいは確認書の発行件数はすでに2万件を超えました。特に直近の6月は単月だけで1万件超えと、顕著な伸びが見られます※1
約3年間の時限立法ですが、減税規模が最も大きい本税制は平成29年3月末に期限が到来したら延長せずに廃止することが既に検討されています。言い換えると、納税者側からすれば、本税制はそれだけ魅力的な内容だということです。

※1)経済産業省ホームページ:「産業競争力強化法」の施行から半年(平成26年7月18日)
http://www.meti.go.jp/press/2014/07/20140718004/20140718004.html

ご参考:
第20回コラム「企業を優遇した平成26年度税制改正」(平成26年1月21日)

2.本税制の内容

本税制の対象となる設備投資は、先端設備を対象としたA類型と生産ラインやオペレーションの改善に資する設備を対象としたB類型の2種類に分かれます。
また本税制は業種や企業規模に制限がありません。製造業だけでなく、物流業における倉庫新設、小売業における新規出店や店舗省エネ化、サービス業におけるソフトウェア導入による業務効率化など、非製造業の設備投資にも積極的に活用できます。

まず、本税制の内容を確認してみましょう。

生産性向上設備投資促進税制の要件など

①概要

生産性の向上につながる設備投資を行うことにより、特別償却または税額控除ができる優遇税制

②対象となる法人等

青色申告書を提出する法人・個人(対象業種に制限なし。ただし貸付の用に供する場合は対象外)

③対象設備

次のA類型もしくはB類型のどちらかに該当する必要があります。

A類型先端設備
  • 機械装置並びに一定の工具、器具備品、建物、建物附属設備およびソフトウェアで、一定金額以上のもののうち、最新モデルかつ生産性向上要件(同メーカーの旧モデル比で年平均1%以上の生産性向上)を満たすもの
    ※器具備品のうちサーバーと、ソフトウェアは中小企業者等が対象です。またソフトウェアには生産性向上要件は不適用です。
  • 必要手続 工業会等から証明書を取得
B類型生産ラインやオペレーションの改善に資する設備
  • 機械装置、工具、器具備品、建物、建物附属設備、構築物およびソフトウェアで、一定金額以上のもののうち、投資計画上の(a)投資利益率が年平均15%以上(中小企業者等は5%以上)であること
  • 必要手続 投資計画を作成し、公認会計士または税理士の事前確認を受けた上で、経済産業局へ申請して確認書を取得

(a)投資利益率

④適用時期

平成26年1月20日から平成29年3月31日までに取得等した場合に適用

本税制措置

取得時期 平成26年1月20日~
平成28年3月31日
平成28年4月1日~
平成29年3月31日
機械装置など 即時償却または5%税額控除 50%特別償却または4%税額控除
建物・構築物 即時償却または3%税額控除 25%特別償却または2%税額控除
  • ・5%税額控除とは、対象設備の取得価額の5%相当額を当期に支払う法人税額等から控除する(差し引く)ことを指す。ただし、税額控除は法人税額等の20%を上限とする
  • ・平成26年3月31日以前に終了する事業年度の投資分
    ⇒平成26年4月1日を含む事業年度において相当額の償却または税額控除が可能

対象設備の詳細要件など

A類型先端設備

対象設備 対象となるものの
用途・細目
一定金額の
要件
最新
モデル要件(注1)
生産性
向上要件
(注2)
機械装置 全て 1台または1基の取得価額⇒160万円以上 10年以内
に販売
あり
工具 ロール 1台または1基の取得価額⇒120万円以上(注5) 4年以内
に販売
器具備品
  • イ 試験または測定機器
  • ロ 陳列棚および陳列ケースのうち冷凍機付または冷蔵機付のもの
  • ハ 冷房用または暖房用機器
  • ニ 電気冷蔵庫、電気洗濯機その他これらに類する電気またはガス機器
  • ホ 氷冷蔵庫および冷蔵ストッカー(電気式のものを除く)
  • ヘ サーバー用の電子計算機(注4)
6年以内
に販売
建物
建物附属設備
断熱材および断熱窓 一の取得価額⇒120万円以上
(注6)
14年以内
に販売
  • イ 電気設備(照明設備を含み、蓄電池電源設備を除く)
  • ロ 冷房、暖房、通風またはボイラー設備
  • ハ 昇降機設備
  • ニ アーケードまたは日よけ設備(ブラインドに限る)
  • ホ 日射調整フィルム
ソフトウェア(注3) 設備の稼働状況等に係る情報収集機能および分析・指示機能を有するもの 一の取得価額⇒70万円以上(注7) 5年以内
に販売
なし
  • (注1) ①販売開始年度が取得等をする年度およびその前年度であるモデルを含む
    ②機械装置のうち中小企業者等が取得等をするソフトウェア組込型機械装置については、10年以内に販売が開始されたもので、最新モデルの一代前モデルも含む
  • (注2) 生産性が同メーカーの旧モデル比で年平均1%以上向上
    ※生産性・・・単位時間当たりの生産量、精度、エネルギー効率等。判断は工業会等による
  • (注3) 中小企業者等が取得等をするものに限る
  • (注4) サーバー用OSが記憶装置に書き込まれたものおよびサーバー用OSと同時に取得等されるもの、ただし、中小企業等が取得等をするものに限る
  • (注5) 工具および器具備品・・・1台または1基が30万円以上で年間取得合計額が120万円以上のものを含む
  • (注6) 建物附属設備・・・一の取得価額が60万円以上で年間取得合計額が120万円以上のものを含む
  • (注7) ソフトウェア・・・一の取得価額が30万円以上で年間取得合計額が70万円以上のものを含む

B類型生産ラインやオペレーションの改善に資する設備

対象設備 対象となるものの
用途・細目
一定金額の要件 投資利益率要件
機械装置 限定なし全て 1台または1基の取得価額 ⇒ 160万円以上 あり(※2)
工具 限定なし全て 1台または1基の取得価額 ⇒ 120万円以上(単品30万円以上かつ合計120万円以上)
器具備品 限定なし全て(※1)
建物および構築物 限定なし全て 一の取得価額 ⇒ 120万円以上
建物
附属設備
限定なし全て 一の取得価額 ⇒ 120万円以上
(単品60万円以上かつ合計120万円以上)
ソフト
ウェア
限定なし全て 一の取得価額 ⇒ 70万円以上
(単品30万円以上かつ合計70万円以上)
  • (※1) 器具備品のうち、サーバー用の電子計算機については、情報通信業のうち自己の電子計算機の情報処理機能の全部または一部の提供を行う事業を行う法人が取得または製作をするものを除く
  • (※2) 投資計画における設備投資効果として、年平均の投資利益率が15%以上(中小企業者等にあっては5%以上)となることが見込まれ、経済産業大臣(経済産業局)の確認を受けたものであること

(参考資料)経済産業省ホームページ:「生産性向上設備投資促進税制について」平成26年7月
http://www.meti.go.jp/policy/jigyou_saisei/kyousouryoku_kyouka/seisanseikojo/setsumeikai140701.pdf

【作成:朝日税理士法人】

次に、平成26年6月末時点の半年間で、設備投資に係る証明書あるいは確認書の発行状況を詳しく見てみましょう。

図表1 平成26年1月から6月末までの発行件数
  証明書・確認書の発行件数

【A類型】先端設備の証明書

19,240件(投資総額は公表されておらず)

【B類型】生産ラインやオペレーションの
改善に資する設備の確認書

828件(投資総額:約1兆4,371億円)

引用:経済産業省ホームページ:「産業競争力強化法」の施行から半年(平成26年7月18日リリース)を一部修正

図表1の発行件数をみるとA類型が圧倒的に多いことが分かります。設備ごとに適用が受けられる上、適用要件に該当するかを購入先のメーカーに確認し、利用者側は証明書の発行を依頼するだけなので、B類型と比べて手続きが非常に簡単です。各メーカーや工業会等のホームページには、本税制に関して手続き方法などが紹介されています。
B類型は、件数は少なくても1件あたりの平均投資総額が大きいのが特徴です。A類型のように先端設備である必要はなく、取得価格と投資計画上の投資利益率の要件を満たせば、利益改善のための包括的な設備投資が丸ごと対象となります。確認書の発行を受けた828件中、約3分の2にあたる538件が中小企業者等であり、また、製造業のみならず、流通業やサービス業といった非製造業にも広く活用されています。一見大変で複雑そうな申請手続きですが、経済産業省のホームページ「生産性向上設備投資促進税制」※2には、申請手続きの方法から各種書式まで掲載されており、内容もかなり充実しているので、専門家のサポートがあれば大丈夫でしょう。

※2)経済産業省ホームページ:「生産性向上設備投資促進税制」
http://www.meti.go.jp/policy/jigyou_saisei/kyousouryoku_kyouka/seisanseikojo.html

3.留意事項など

① 対象外の設備

対象設備であっても次の事項に該当する場合は本税制の適用対象外になります。

  • 中古設備
  • 貸付設備(賃貸資産)
    貸付の用に供する設備は、原則として貸す側、借りる側ともに対象外になります。
    ただし、借りる側がファイナンス・リース取引で調達した設備は、本税制の対象となります。
    詳しくは④で説明します。
  • 海外で使用する設備
  • 生産等設備に該当しないもの
    生産活動、販売活動、役務提供活動などの向上につながる設備投資が対象なので、本店・寄宿舎等、事務用器具備品、福利厚生施設などは対象外です。

② 資本的支出

資本的支出(既に有する資産の修理・改良等のための支出)については、建物を除き対象外です。B類型の場合、店舗・工場のクロスの張替工事などの資本的支出は対象になります。

③ 補助金の適用

補助金を受けた場合も対象になります。ただし、法人税法上の「圧縮記帳」の適用を受けた場合は、圧縮記帳後の金額が税務上の取得価額となります。同様に、「積立金方式」を用いた場合は、税務上の取得価額は補助金額を差し引いた価額となります。

④ リース取引の本税制措置

ファイナンス・リース取引は本税制の対象になりますが、オペレーティング・リース取引は本税制の対象外になります。また、特別償却(即時償却)や税額控除の金額は、毎年のリース料ではなく、リース資産額(取得価額)を基に計算します。
ファイナンス・リース取引のうち、所有権移転外リース取引については税額控除のみ利用可能で特別償却(即時償却)は利用できません。
たとえば、平成28年3月31日までの期間において、本税制の要件を満たす機械装置設備のファイナンス・リース取引を実行した場合、

所有権移転リース取引の場合は、
リース資産額(取得価額)x100%の特別償却(即時償却)、または、
リース資産額(取得価額)x5%の税額控除のいずれか一方から選択できます。

所有権移転外リース取引の場合は、
リース資産額(取得価額)x5%の税額控除のみが利用可能です。

表にまとめると次のとおりです。

取引種別 本税制措置
ファイナンス・リース取引 所有権移転リース取引 特別償却または税額控除
所有権移転外リース取引 税額控除のみ
オペレーティング・リース取引 なし(対象外)

ご参考:「ファイナンス・リースのメリット 会計・税制」

⑤ 本税制と中小企業投資促進税制との関係

本税制とは別に、中小企業者等が設備投資をおこなう際に利用できる「中小企業投資促進税制(以下「中促」)」という優遇税制があります。
中促の対象設備のうち普通貨物自動車と内航船舶を除き、本税制のA類型またはB類型の設備に該当するもののうち、取得価額要件などを満たすものについては、中促の「上乗せ措置」として本税制よりもさらに手厚い優遇が受けられます。リース取引についても④と同じ税制措置で上乗せ可能です。

中促の上乗せ措置
資本金3,000万円以下の法人等および個人事業主 即時償却または10%の税額控除
資本金3,000万円超1億円以下の法人 即時償却または7%の税額控除

(上乗せ措置の適用期間:平成26年1月20日~平成29年3月31日)

以上、設備投資の実行には、幅広い対象に税の優遇制度を活用できることをご理解いただけましたでしょうか。平成26年度の税制改正からある程度時間が経過したため、税理士などの専門家の理解もかなり浸透してきたようです。自己資金や借入金での購入だけではなく、割賦やファイナンス・リース取引も対象になりますので、設備投資の検討段階からぜひ専門家を有効に活用してください。

【東京 朝日税理士法人】
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