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経営者のための税務・会計解説

税務・会計アラカルト ~知っておきたいニュースを解説

2015.2.17平成27年度税制改正大綱
-成長志向型の法人税改革が始まる-

この文章は、東京 朝日税理士法人によるものです。

※この文章は平成27年1月14日現在の情報に基づいて作成しています。
具体的な対応については、貴社の顧問税理士や弁護士などの専門家とご相談ください。

1.平成27年度法人税改革の趣旨

※本内容は、平成27年度税制改正大綱に基づき作成していますが、改正法は国会の審議を経て決定するものであり、大綱とは内容が変わる可能性がありますのでご留意ください。

平成26年12月30日に平成27年度税制改正大綱(以下、「大綱」という)が発表されました。今回の最大の特徴は、アベノミクスを推進するため、経済成長を重視し、法人税の体系そのものを改革することにした点でしょう。法人税改革の趣旨を大綱で確認すると、今回の改正の全体像がよくわかります。

今般の法人税改革は、欧米各国も行ってきたように「課税ベースを拡大しつつ税率を引き下げる」ことにより、法人課税を成長志向型の構造に変えるものである。すなわち、より広く負担を分かち合い、「稼ぐ力」のある企業や企業所得の計上に前向きな企業の税負担を軽減することで、企業の収益力の改善に向けた投資や新たな技術開発等への挑戦がより積極的になり、それが成長につながっていくように、法人課税の構造改革を行うものである。この改革を通じて、企業が収益力を高めれば、継続的な賃上げが可能な体質となり、より積極的な賃上げへの取組みが可能となる。

(大綱「第一平成27年度税制改正の基本的考え方」より抜粋)

改革の柱となるのが、法人税率※1などの引き下げによる法人実効税率の引き下げです。
大綱では、法人実効税率を現行の34.62%から平成27年度は32.11%、平成28年度は31.33%まで引き下げ、平成29年度以降は20%台を目指すと明記されました。その際、制度改正を通じた課税ベースの拡大等により財源を確保するとしています。つまり、税率の引き下げで穴があいた財源を他の制度改正の増税で埋めるということです。

税率の引き下げによる減税の代替財源として増税の柱になるのが、赤字企業にも課税される外形標準課税(資本金または出資金が1億円超の普通法人が課税対象)の拡大です。さらには、繰越欠損金の控除縮小、受取配当金の課税の強化、研究開発減税の縮小などで増税を実施します。
成長志向型へ法人課税の構造が転換され、法人実効税率の引き下げと外形標準課税の拡大などが実施されると、黒字の大企業・中小企業は減税となり、逆に赤字の大企業は増税になります。政策的な配慮により、赤字の中小企業の税負担は変わりません。

※1:法人税率の引き下げは、平成27年4月1日以後に開始する事業年度において、現行の25.5%から23.9%とし、また、中小法人(期末資本金の額または出資金の額が1億円以下の普通法人(資本金の額または出資金の額が5億円以上の法人等による完全支配関係がある子法人等を除く))などの軽減税率の特例(所得金額のうち年800万円以下の部分に対する法人税率19%→特例15%)の適用期限が2年延長されるなどとなっています。

法人実効税率の引き下げと外形標準課税の拡大による影響
  黒字 赤字
大企業 減税↓ 増税↑
中小企業 減税↓ 変わらず
平成27年度税制改正の法人のおもな課税ベースの拡大等
項目 内容 適用時期等
外形標準課税の
拡大
●所得割の税率が引き下げられる一方、付加価値割や資本割の税率が引き上げられ、赤字の資本金1億円超の法人は税負担が重くなります。
●付加価値割に所得拡大促進税制が導入され、一定の賃上げを行った法人は賃上げ分の一部が課税対象外となります。
平成27年4月1日以後に開始する事業年度より適用
繰越欠損金の
控除縮小・
期間延長
①青色欠損金の繰越控除制度の控除限度額が所得の80%とされていた大企業向け制限が、平成27年度に65%、平成29年度に50%に縮小されます。中小法人等(資本金が5億円以上の法人の完全子法人等は除く)は100%控除できます。 ①平成27年4月1日以後に開始する繰越控除をする事業年度より適用
②繰越期間が10年(現行9年)に延長されます。 ②平成29年4月1日以後に開始する事業年度において生じた欠損金額から適用
受取配当等の益金不算入制度の見直し ●受取配当金の益金不算入割合が100%となる場合の出資比率が、現行の25%以上から3分の1超に変更されます。
●出資比率が5%以下の場合は、益金不算入割合が20%(現行50%)に引き下げられます。
大綱では明記されず
租税特別措置の見直し ●研究開発税制の見直し。総額型および中小企業技術基盤強化税制につき税額控除限度額の引き下げ。繰越控除制度の廃止。 平成27年4月1日以後に開始する事業年度より適用

中小法人への影響に配慮して、大法人を中心に課税ベースの拡大(増税)を実行

【作成:朝日税理士法人】

2.外形標準課税の拡大による影響

平成27年度の税制改正により、外形標準課税が拡大されると、赤字の大企業の場合、その負担税額は平成27年度に現在の5割増、平成28年度は2倍に増えます。外形標準課税は平成16年に導入された地方税の法人事業税の仕組みで、資本金1億円超の大企業に適用されます。資本金1億円以下の中小企業は適用対象外で、今回の増税の影響を受けません。
法人事業税の内、所得に課税される所得割は、現行7.2%の標準税率が引き下げられる一方、外形標準課税である付加価値割と資本割は、2年間で税率が倍になります。その結果、黒字の大企業の税負担は減少し※2、赤字の大企業の税負担は増えることになります。

※2:黒字の大企業であっても所得水準が低ければ、税率の引き下げによる減税分より、外形標準課税による増税分の方が大きく税負担が増加するケースもあります。

表

※1 改正案では給与等の支給額が一定額増加したときは一定の金額を付加価値割の課税標準から控除
※2 改正案では資本割の課税標準の見直しあり
(注)表中カッコ内の税率は地方法人特別税を除いた税率

【作成:朝日税理士法人】

3.平成29年度税制改正以降の増税検討項目

平成29年度以降で法人実効税率20%台を目指すことになり、その減税により不足する代替財源をどのように確保するかが今後の検討課題となっています。
大綱に明記されている平成29年度税制改正以降のおもな検討事項は次の通りです。

検討事項

  • 大法人向けの法人事業税の外形標準課税のさらなる拡大
  • 生産性向上設備投資促進税制(平成28年度末期限)の取り扱い
  • 所得拡大促進税制(平成29年度末期限)の取り扱い
  • 研究開発税制(増加型・高水準型は平成28年度末期限)の取り扱い
  • 減価償却を定額法への一本化
  • 法人事業税の損金不算入化
  • 租税特別措置は、期限が到来するものを中心に廃止を含めてゼロベースで見直し
  • 資本金1億円以下を中小法人として一律に扱い、同一の制度を適用していることの妥当性

ここで注目したいのは、の3点です。

まずは生産性向上設備投資促進税制(平成26年1月20日創設、平成29年3月31日期限)の取り扱いを検討するという点です。本コラムの第25回でも取り上げましたが、この税制は、生産性を向上させると認められた質の高い設備投資について、即時償却または最大5%の税額控除(平成28年4月1日から平成29年3月末日までの期間においては、特別償却50%または4%の税額控除)が適用できるというものです。しかし、この優遇税制は減税インパクトが大きく、法人実効税率の引き下げをより優先せざるを得ない状況の中で、期限到来時に廃止の検討を行うことになったのです。

次は、減価償却の方法を定額法に一本化するかもしれないということです。仮に一本化されれば、企業財務に与える影響は大きいと言わざるを得ません。定率法も定額法も最終的に耐用年数が到来した時点では費用となる総額は同じです。しかし、投資した設備資金の早期回収という点で定率法は定額法より優れています。耐用年数5年の減価償却資産を例に検証します。現行の償却率は、定率法では0.4、定額法では0.2なので、定率法から定額法に変わると初年度の費用計上額は半分の水準になります。このように定額法では、設備投資をした直後の税負担が定率法より重くなることがわかります。なお、同じ耐用年数5年の設備を、適正リース期間の最短3年で導入した場合、リースは定額法より償却額を大きく取れ、納税資金の負担を抑制することが可能になります。

さらに資本金1億円以下の中小法人の取り扱いです。平成27年度税制改正では、税率の引き下げによる代替財源の確保を大企業への課税強化などで行い、中小企業は負担が増えないように配慮されました。しかし、平成29年度以降では、全法人の99%を占める中小法人についても、検討を行うと大綱に明記されました。中小法人は、軽減税率や各種の政策税制(例えば、中小企業投資促進税制)が適用されるほか、欠損金繰越控除の控除限度、特定同族会社の留保金課税、法人事業税の外形標準課税をはじめとする多くの制度において、大法人よりも優遇されています。この妥当性が検討され、妥当性がないと判断されれば、中小法人への税負担が増えることになります。

4.実務上の対応

今回の税制改正により、成長志向型の法人課税への転換が図られました。収益力の高い企業ほど減税効果は大きく、その成長を後押しすることにより、雇用の改善、賃上げの実施が期待されています。それでは個々の企業はどのように対応すべきでしょうか。

まず黒字の大企業、中小企業は、実効税率の低下によるキャッシュフローの変化(手許資金の増加)を踏まえた事業計画を策定すべきです。その際は、平成29年度以降の法人実効税率20%台も視野に入れるべきでしょう。さらに設備投資を検討する場合はその時期の検討も重要です。現行の優遇された設備投資税制は期限到来後、廃止の公算が大きくなってきたからです。

次に資本金1億円超の赤字企業については、外形標準課税の拡大に伴う負担増により、キャッシュフローがどの程度、悪化するかを早急に把握すべきでしょう。また、欠損金の繰越控除限度額につき、所得の80%とされている大企業向けの制限が強化(平成27年度から65%、平成29年度から50%)されるため、業績が回復した場合でも資金繰りに影響を与えることを認識する必要があります。

さらに赤字の中小企業においては、政策的な配慮から、税負担は現行と変わりません。
しかし、大綱では平成29年度以降に中小法人課税の検討を行うとなっていますので、もし将来、負担が増えてもあわてないよう、今後のキャッシュフローの状況を十分に把握しておく必要があるでしょう。

以上、税制改正が与える税負担のインパクトは企業によりさまざまですが、冷静にその影響を把握し対応することが肝要と言えます。

【東京 朝日税理士法人】
税務、会計、コンサルティング、会社設立支援、不動産など、総合サービスを展開。
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