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経営者のための税務・会計解説

税務・会計アラカルト ~知っておきたいニュースを解説

2015.9.1非上場会社の自社株評価について

この文章は、東京 朝日税理士法人によるものです。

※この文章は平成27年8月17日現在の情報に基づいて作成しています。
具体的な対応については、貴社の顧問税理士や弁護士などの専門家とご相談ください。

事業承継を考えている経営者にとって自社株の評価額は気になるところです。本コラムではその評価方法の概要とポイントについて解説します。

1.非上場会社の自社株の評価方法

オーナー企業などの非上場会社が、経営者から後継者に事業承継を行う場合、後継者への自社株の移転が必要になります。自社株の移転方法には、生前贈与・売買・相続があり、その株式評価額(株価)は非上場会社の場合、税務上「取引相場のない株式」として評価方法が定められています※1
非上場会社の評価方法は、株主の持株数によって評価方式が変わりますが、本コラムでは、同族株主などに適用される原則的評価方式を中心に説明します。原則的評価方式とは、会社規模などに応じて「大会社」「中会社」「小会社」に区分され、「類似業種比準価額方式」と「純資産価額方式」および「それらの併用方式」により行います。

まず、「類似業種比準価額方式」は、事業の業種が類似する上場会社(標本会社)の「株価」に「一株当たりの配当」「一株当たりの年利益」「一株当たりの純資産価額」の3要素を比準させて非上場会社の株価を計算する方法です図表1

図表1類似業種比準価額方式

類似業種比準価額方式
  • (※1)年利益とは、過去1年間の法人税の課税所得金額から固定資産売却益や保険差益などの特別利益を除き、繰越欠損金の控除額があれば加算し、さらに、受取配当金など益金不算入(相当する所得税額を除く)の金額を加えた金額で、マイナスになる場合は0とします。ただし、過去1年間の年利益の金額と、過去2年間の各事業年度の年利益の合計額の2分の一の金額の、いずれか低いほうを選択することも可能です。
  • (※2)類似業種の「株価」「配当」「利益」「純資産価額」は国税庁発表の数値
  • (※3)斟酌率:大会社は0.7、中会社は0.6、小会社は0.5

【国税庁財産評価基本通達を基に朝日税理法人作成】

次に、「純資産価額方式」は、発行会社が清算した場合に株主に分配される正味財産の価値から株式を評価する方法です。会社の資産(相続税評価額)から負債(相続税評価額)および、評価差額に対する法人税等相当額38%(平成27年4月以降)を控除して計算します図表2

図表2純資産価額方式

純資産価額方式

【国税庁財産評価基本通達を基に朝日税理法人作成】

算出方法については、2011年1月5日 第5回コラム「株式相場低迷期は非上場株式の移転チャンス」に詳しく記載していますので参考にしてください。

  • ※1)国税庁ホームページ 法令解釈通達 財産評価 178参照
    https://www.nta.go.jp/shiraberu/zeiho-kaishaku/tsutatsu/kihon/sisan/hyoka/08/02.htm

2.類似業種比準価額方式と自社株評価

事業承継において後継者に株式の移転を行う際、自社株の評価額が低いときの方が取得コストは安く済み、税負担も軽減できます。よって、事業承継を検討する上で、現状の株価を把握し株価の引き下げ対策を意識することは重要です。

ここでは、「類似業種比準価額方式」の株価評価方法に着目して自社株の評価額を考えてみます。図表1に記載してあるとおり、外部要因である「類似業種の株価」と内部要因である「評価会社の年利益」は、自社株の評価額に与える影響を考える上でポイントになります。「類似業種の株価」は、自社の業績などに関わらず属する業種で決まり、「評価会社の年利益」は、配当や純資産価額と比較して3倍の評価で影響します。

まず、「類似業種の株価」はどのようになっているのでしょうか。
平成27年6月15日に、非上場株式の相続税評価などに利用される類似業種株価が国税庁から公表されました。図表3は、類似業種株価のうち、今年発表された平成26年平均株価と昨年発表された平成25年平均株価を比べ、変動が大きかった主な業種の一覧です。

図表3株価変動率の大きい上昇10業種目と下落10業種目(単位:円)

業種目 平成25年
平均株価
平成26年
平均株価
変動率
専門サービス業 349 590 69.1%
その他の建築材料、
鉱物・金属材料等卸売業
124 192 54.8%
畜産食料品製造業 169 242 43.2%
情報通信機械器具製造業 100 139 39.0%
建築材料、
鉱物・金属材料等卸売業
153 211 37.9%
セメント・同製品製造業 119 162 36.1%
各種商品小売業 137 182 32.8%
プラスチック製品製造業 138 182 31.9%
事務用機械器具製造業 340 446 31.2%
電気工事業 162 212 30.9%
業種目 平成25年
平均株価
平成26年
平均株価
変動率
パルプ・紙・紙加工品製造業 951 174 -81.7%
食堂・レストラン
(専門料理店を除く)
647 185 -71.4%
パン・菓子製造業 846 433 -48.8%
建築工事業
(木造建築工事業を除く)
279 151 -45.9%
その他の産業 446 248 -44.4%
建設用・建築用金属製品製造業 217 121 -44.2%
その他の電子部品・デバイス
・電子回路製造業
419 239 -43.0%
無店舗小売業 630 376 -40.3%
ガス業 693 437 -36.9%
職業紹介・労働者派遣業 458 290 -36.7%

【国税庁ホームページ:財産評価関係 個別通達目次 平成26年分と平成27年分の「類似業種比準価額計算上の業種目及び業種目別株価等について」を基に朝日税理法人作成】

15年ぶりに日経平均株価は2万円を回復し、前年より上昇しているものの、図表3から、類似業種株価が大きく上昇している業種もあれば、下落している業種もあることが分かります。類似業種比準方式は類似業種株価の上昇と下落に大きく影響を受けるため、自社の類似業種株価がどうなっているかを確認することが重要です。

次に、「評価会社の年利益」についてです。
評価方法の計算式から分かるとおり、好業績で利益水準(厳密には課税所得)が高い場合の年利益は大きくなり株価は高くなります。一方、好業績であっても、設備投資を活発に行うと多額の償却費用を計上することにより、結果として年利益が低下し株価を引き下げる効果が得られます。
設備投資における具体的な一例として、平成26年1月に創設された「生産性向上設備投資促進税制」を適用できる場合を考えてみます。この税制は、平成28年3月末日までは即時償却または最大5%の税額控除を選択することができます(平成28年4月1日から平成29年3月末日までは50%の特別償却または4%の税額控除)。この場合、税額控除を選択して通常の減価償却を行うより、多額の償却費用を一時に計上できる即時償却を選択した方が、株価を引き下げる効果がより大きくなります。例えば、耐用年数10年の機械を5,000万円で購入する場合を比較します(初年度使用期間は12か月間とします)。税額控除を選択して定率法で減価償却を行う場合、償却率は0.2ですので計上できる初年度の償却費用は1,000万円となり課税所得は1,000万円減ります。一方、即時償却を選択すれば5,000万円を初年度にそのまま費用計上することができますので、課税所得は5,000万円減ります。よって、即時償却を選択する方が、年利益をより減少させることができ、結果として自社株の評価額を引き下げる効果が大きくなります。

3.まずは自社株の現状把握から

経営課題として事業承継に直面している会社は、まずは、自社株の評価額がどうなっているか、今後の事業計画や投資計画によって株価がどのように変化するのか、自社の状況を確認することをおすすめします。その上で自社株対策を行うわけですが、実際には、さまざまな対策方法があり、税務上など注意すべき点も多く、自社株対策を検討する際には、税理士などの専門家の協力を得ながら本業をおろそかにせず、計画を立てて実行することが肝要です。

【東京 朝日税理士法人】
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