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経営者のための税務・会計解説

税務・会計アラカルト ~知っておきたいニュースを解説

2011.5.10東日本大震災 復興につながる税制と資金繰り支援策

この文章は、東京 朝日税理士法人によるものです。

1.災害時のさまざまな支援策

東日本大震災において被災された皆さまに心よりお見舞い申し上げます。

被災地域が東北地方から関東地方まで広範囲に及んだ東日本大震災。被災地では津波により法人の活動基盤そのものが奪われました。また、地震による被害は原発事故を引き起こし、計画停電や原材料の調達難など、被災地のみならず全国各地の企業も震災の余波を受けています。震災の影響を受ける個人・法人の負担軽減を図るため、直接的に被害を受けた方だけでなく、売上減少等によって震災の影響を間接的に受ける方に対してもさまざまな資金繰り支援策や税務上の特別措置が講じられました。
また、連日報道機関により被災地の過酷な状況が伝えられる中、義援金の受付けが行われています。税務上は支援を受けた側も、支援を行った側も優遇措置があります。
今回は、被災中小企業の事業資金確保や税務上の各支援策について見ていきましょう。

【東日本大震災に関連する資金繰り支援策と税制上の取り扱い】

2.被災中小企業の資金繰りを支援

※本情報は2011年5月10日現在のものです。
停止・変更される可能性がありますので、最新情報につきましては、中小企業庁ほか当該窓口にご確認ください。

震災直後より中小企業庁は被災中小企業者対策として各種の措置を講じましたが、今回の災害被害の全容が明らかでなく、その拡大も予断を許さないことにより、措置の対象を「全国」としました。地震による災害の影響で、事業所・工場等の主要な事業用資産に、倒壊・火災等の直接的な被害を受けた事業者に加えて、売上減少等によって間接的に被害を受けている事業者についても資金繰り支援策が手当されています。

【主な支援策】

被災中小企業者の既往債務の負担軽減
返済猶予等の条件変更
災害復旧貸付
被災企業に対し、日本政策金融公庫及び商工組合中央金庫が貸付。貸付金額のうち、
1千万円を上限に貸付金利を0.9%引き下げ(貸付後3年間、1千万円が上限)。
セーフティネット貸付
社会的、経済的環境の変化により、一時的に売上や利益が減少する等、
業況が悪化した事業者へ貸付。特に業況が悪化している場合は、金利引き下げ措置有り。
災害関係保証
金融機関から事業再建資金の借り入れを行う場合に、保証協会が融資額の全額を保証。
直接的に被害を受けた中小企業者が利用可能。
一般保証枠とは別枠で、下記セーフティネット保証(5号)と同枠。
セーフティネット保証(5号)
指定された業種に属し、売上高等の減少等について、市区町村の認定を受けた中小企業者が対象。一般保証枠とは別枠で、信用保証協会が融資額の全額を保証。

本来、セーフティネット保証(5号)の原則全業種(農林水産業、金融業等は対象外)・全額保証は、2011年3月末までが期限で、4月以降は全額保証の対象業種を絞って運用する予定でした。しかし、今回の震災の影響を受け、2011年9月末まで原則全業種(農林水産業、金融業等は対象外)で全額保証する形で継続されています。また対象者の要件も緩和され、下記のいずれかを満たせば適用が受けられます。

  1. 原則として最近3カ月の売上高等が前年同期に比して5%以上減少していること。
  2. 2011年東日本大震災地震の発生後、原則として最近1カ月間の売上高等が前年同月に比して20%以上減少しており、かつ、その後2カ月間を含む3カ月間の売上高等が前年同期に比して20%以上減少することが見込まれること。
  3. 製品等原価のうち20%を占める原油等の仕入価格が20%以上上昇しているにもかかわらず、製品等価格に転嫁できていない中小企業者

【信用保証制度の概略】

また平成23年度一次補正予算には、新たに「東日本大震災復興緊急保証」制度と「東日本大震災復興特別貸付」制度が創設されました。保証制度では、全国的な震災被害対策として3階建ての信用保証枠が用意され、一般保証とは別枠で、セーフティネット保証、災害関係保証とあわせて、無担保1億6千万円、最大5億6千万円まで利用が可能となりました。貸付制度では、既存の制度(災害復旧貸付とセーフティネット貸付)の貸付限度額、貸付期間、金利引き下げ措置等を大幅に拡充します。

東日本大震災復興緊急保証
震災被害により経営に支障を来たしている一定の中小企業者について、一般保証、セーフティネット保証(5号)とは別枠で、信用保証協会が融資額の全額を保証。
東日本大震災復興特別貸付
震災被害を直接的または間接的に受けている中小企業者を中心に、長期かつ低利で、据え置き期間も最大5年と長く融資。

3.取引先に対する支援等

法人が被災した得意先等の取引先※を支援した場合の取り扱いについては、法人税法基本通達に定められ、支援を促進する内容となっています。通常時に取引先に対して売掛金等の債権を免除した場合は、その免除に合理的な理由がなければ、その取引先に寄附金又は交際費等を支出したものとして取り扱われます。寄附金や交際費は一定の限度額までしか法人税法上の経費である損金にはなりません。ただし、災害時に取引先が被災した等の事情がある場合は、債権の免除等が復旧支援を目的として一定期間内に行われたものである限り、寄附金又は交際費等以外の費用として全額損金に算入されます。その他、被災した取引先に無利息貸付をした場合や災害見舞金等を支払った場合にも、通常時とは異なり、同様に全額損金に算入される内容が定められています。

※「得意先等の取引先」には、得意先、仕入先、下請工場、特約店、代理店等のほか、商社等を通じた取引先であっても価格交渉等を直接行っている商品納入先など、実質的に取引関係にあると認められる者が含まれます。

4.義援金等を支出する場合

日本赤十字社や報道機関等でさまざまな義援金の受付けが行われています。義援金は、最終的に国・地方公共団体に拠出されるものは、支払った個人は寄附金控除として一定金額が所得から控除され、法人は全額が損金に算入されます。寄附金は全ての寄附金が上記のように取り扱われるわけではなく、寄附金の内容によっては、個人は寄附金控除の対象外となったり、法人では一部又は全額が損金に算入されないこともあります。
税務上の優遇措置(寄附金控除等)の対象となる義援金等の例は以下の通りです。

【税務上の優遇措置の対象となる義援金等の例】

5.個人が災害見舞金等を受けた場合など

法人が、災害により被害を受けた従業員またはその親族等に対して一定の基準に従って支給する災害見舞金は、福利厚生費として損金に算入されます。また、法人が、自己の従業員等と同等の事情にある専属下請先の従業員等又はその親族等に対して一定の基準に従って支給する災害見舞金についても、同様に損金に算入されます。受け取った個人も、その金額がその方の社会的地位、贈与者との関係等に照らし、社会通念上相当と認められるものについては、課税されません。

6.申告期限の延長

今回の地震発生が所得税の確定申告期限(2011年3月15日)の間近だったこともあり、被災地だけでなく、他の地域の方にも申告期限の延長等の手当がされています。被災地以外の方は、データ破損等の一定の申告・納付等が困難な事情がある場合に、その状況が落ち着いた後に申請書を税務署に提出して、延長の申請を行うことが認められました。このように災害その他やむを得ない理由により、申告期限までに申告することができないときに認められるのが、国税通則法第11条による申告期限の延長です。所得税だけでなく、法人税を含む全ての国税に関する申告・納付等の期限が延長されます。
しかし、今後、決算を組む法人でこの国税通則法の規定が使えない場合には、法人税法第75条による申告期限の延長の規定もありますので、あわせてご検討ください。災害により決算が確定しないときに延長申請できます。

7.震災特例法の創設

2011年4月27日に東日本大震災の被災者等の負担軽減を図るため、「東日本大震災の被災者等に係る国税関係法律臨時特例に関する法律」が施行されました。主な制度は以下のとおりです。

震災損失の繰り戻しによる法人税額の還付(法人税)
平成23年(2011年)3月11日から平成24年(2012年)3月10日までの間に修了する事業年度の欠損金額のうち、棚卸資産等について生じた震災による損失額を、前2年以内に開始する事業年度の所得金額に繰り戻して法人税額の還付請求をすることができます。
被災代替資産等の特別償却の特例(法人税・所得税)
平成23年(2011年)3月11日から平成28年(2016年)3月31日までの間に、被災した資産に代替する資産として一定の資産の取得等をおこない、事業の用に供した場合などに、その事業年度において、取得価額の15%~30%(中小企業者は18%~36%)の特別償却※ができます。
※平成26年(2014年)4月1日以後に取得した場合の償却率は上記の2/3。
特定の資産の買換えの場合の課税の特例(法人税・所得税)
平成23年(2011年)3月11日から平成28年(2016年)3月31日までの間に、(1)被災区域内の土地等、建物、構築物を譲渡し、国内にある土地等、減価償却資産を取得する場合、(2)被災区域外の土地等、建物、構築物を譲渡し、被災区域内にある土地等、減価償却資産を取得する場合に、一定の要件の下、譲渡した資産の譲渡益を繰り延べることができます。

8.実務上の対応

千年に一度とも言われる大惨事となった東日本大震災。その影響は計り知れないものがありますが、復興を一日でも早く進めるため、さまざまな支援策が講じられました。また、今後も追加支援策が講じられることも考えられます。被災した方も、また支援する方も、これら支援策の正確な情報をタイムリーに入手し、1日も早い復旧・復興に役立てることが重要です。

※本情報は2011年5月10日現在のものです。
停止・変更される可能性がありますので、最新情報につきましては、中小企業庁ほか当該窓口にご確認ください。

具体的な対応については貴社の顧問税理士等の専門家とご相談ください。

【東京 朝日税理士法人】
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