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税務・会計アラカルト ~知っておきたいニュースを解説

2011.6.21債権の貸倒れ処理は慎重に

この文章は、東京 朝日税理士法人によるものです。

1.貸倒れの処理の適用基準は厳しい

本年(2011年)3月に発生した東日本大震災により法人の営業活動は甚大な影響を受けました。震災の影響に苦しむ法人が増える中、今後、債権が回収できなくなるケースが増えることが予想されます。
法人の有する受取手形・売掛金・貸付金等の金銭債権が回収不能となった場合には、貸倒損失として処理することができます。ただし、税務上は法人が考える回収不能額を無条件に貸倒損失として認めている訳ではありません。なぜなら租税は公平であることが求められているからです。そこで、税法は厳格な適用基準を設けて、それに合致するものだけを税務上の経費である損金として認めることにしています。
貸倒れ処理は適用基準が厳しいが故に、後々の税務調査で問題となるケースがあります。税務調査で否認されないように、まずは、債権の貸倒れの適用基準をしっかりと理解することが必要です。
今回は、債権の貸倒れの適用基準について見ていきましょう。

2.法律上の貸倒れ

法人の有する金銭債権について次に掲げる事実が発生した場合には、その事実が発生した事業年度に、貸倒れとして損金に算入します(法人税基本通達9-6-1)。これは法律上の貸倒れと呼ばれるケースです。

更生計画認可の決定又は再生計画認可の決定があった場合において、これらの決定により切り捨てられることとなった部分の金額
特別清算に係る協定の認可の決定があった場合において、この決定により切り捨てられることとなった部分の金額
法令の規定による整理手続によらない関係者の協議決定で次に掲げるものにより切り捨てられることとなった部分の金額
債権者集会の協議決定で合理的な基準により債務者の負債整理を定めているもの
行政機関又は金融機関その他の第三者のあっせんによる当事者間の協議により締結された契約でその内容がイに準ずるもの
債務者の債務超過の状態が相当期間(注1)継続し、その金銭債権の弁済を受けることができないと認められる場合において、その債務者に対し書面により明らかにされた債務免除額

(注1)相当期間とは、債権回収のためのあらゆる努力を尽くしたにもかかわらず、回収を断念せざるを得なくなる期間で、債権の発生時期、支払期日、回収できないことが決定された経緯など、個別事情により異なります。

法律上の金銭債権の切り捨ては強制的な貸倒れとなりますので、経理処理に関わらず税務上は損金として取り扱われます。つまり、損益計算書上で「貸倒損失」として経理処理(注2)しなくても、法人税の申告書において調整することにより損金算入が認められます。また、法律上の貸倒れはその事実が発生した後の事業年度以降では、損金、つまり税務上の経費として認められません。

(注2)この経理処理の方法を損金経理といいます。損金経理とは、法人が確定した決算において費用又は損失として経理することです。

3.事実上の貸倒れ

法人の有する金銭債権について、その債務者の資産状況、支払能力等からみてその全額が回収できないことが明らかになった場合(注3)には、その明らかになった事業年度において貸倒れとして損金経理することができます(法人税基本通達9-6-2)。これは事実上の貸倒れと呼ばれるケースです。
この取扱いによる貸倒れは、法律上の貸倒れと異なり、あくまで法人の任意です。税務上の経費として認められるためには損金経理が必要です。

(注3)時価ベースで債務超過であることが必要です。

【事実上の貸倒れの留意点】

4.形式上の貸倒れ

債務者について次に掲げる事実が発生した場合には、その債務者に対して有する売掛債権(売掛金、未収請負金その他これらに準ずる債権をいう。)について法人がその売掛債権の額から備忘価額を控除した残額を貸倒れとして損金経理をすることができます(法人税基本通達9-6-3)。これは形式上の貸倒れと呼ばれるケースです。

債務者との取引を停止した時以後1年以上(注4)経過した場合
(売掛債権について担保物がある場合には対象になりません)
(注4)下記のいずれか遅い日から1年経過した日が起算日になります。 ・債務者との取引を停止した時 ・最後の弁済期 ・最後の弁済の時
法人が同一地域の債務者について有する当該売掛債権の総額がその取立てのために要する旅費その他の費用(注5)に満たない場合において、当該債務者に対して支払いを督促したにもかかわらず弁済がないとき
(注5)同一地域の全部の債務者に対する売掛債権残高の総額と取立費用を比較します。

形式上の貸倒れは、法律上の貸倒れと異なり、あくまで法人の任意です。税務上の経費として認められるためには、売掛債権の額から備忘価額(通常1円)を控除した残額について、貸倒損失として損金経理を要します。また、この貸倒れは、売掛金等の継続的な取引の売掛債権が対象になるので、不動産取引のような単発取引や貸付金等は対象になりません。

5.貸倒引当金

次に実際に貸倒れる前の段階の話をしましょう。債務者の状態が悪化して、法人の有する金銭債権について将来回収が困難であると予測される場合には、一定の金額を貸倒引当金として見積もり計上することができます。
法人税法においては、一括評価金銭債権と個別評価金銭債権に分けた上で、それぞれの区分に属する債権ごとに貸倒引当金繰入限度額を規定しています。この規定もあくまで法人の任意です。税務上の経費として認められるためには損金経理が必要となります。

なお、平成23年度税制改正案において、貸倒引当金制度は、銀行、保険会社その他これらに類する法人、及び中小法人等(注6)などの一定の法人のみに限定され、それ以外の法人は以下の緩和措置を経て、廃止することが盛り込まれています。2011年6月21日現在、この改正案は未決定ですので、改正の動向にご注意ください。

現行法の貸倒引当金繰入限度額に対して
平成23年度(2011年度)    4分の3
平成24年度(2012年度)    4分の2
平成25年度(2013年度)    4分の1
平成26年度(2014年度)以降 完全廃止

(注6)「中小法人等」の定義

(1)普通法人のうち各事業年度終了時において資本金の額または出資金の額が1億円以下であるもの
(資本金の額または出資金の額が5億円以上の法人の100%子会社は除きます)

(2)公益法人等

③協同組合等

④人格のない社団等

【損金算入限度額】

6.実務上の対応

貸倒れにならないことが一番いいのですが、貸倒れを100%防ぐことは難しいといえます。金銭債権が貸倒れになると資金回収ができなくなり資金繰りに影響を与えます。せめて、適時かつ適切に貸倒損失又は貸倒引当金として処理を行うことで税負担を軽減させてください。よく言われる話ですが、貸倒れに対しては、「与信管理」が最大の防衛策です。改めてこの点を肝に銘じたいところです。
具体的な対応については貴社の顧問税理士等の専門家とご相談ください。

【東京 朝日税理士法人】
税務、会計、コンサルティング、会社設立支援、不動産など、総合サービスを展開。
法人から個人まで、幅広い顧客層への対応を行っている。
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