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経営者のための税務・会計解説

税務・会計アラカルト ~知っておきたいニュースを解説

2011.8.23平成23年度の税制改正はどうなったのか?

この文章は、東京 朝日税理士法人によるものです。

1.あらまし

例年の税制改正は、前年末に税制改正大綱が発表され、年明けに税制改正法案が国会に提出され、3月下旬には成立しているのが通例です。しかし、今年はねじれ国会と震災の影響等により、現時点ではすでに成立した法案と審議中の法案があり、非常に複雑な様相を呈しています。
それでは、昨年末に税制改正大綱が発表されてから現在までどのような流れとなっているのかを見ていきましょう。
なお、平成23年8月1日現在の状況を基準に解説します。

2.税制改正の流れ

昨年12月16日に民主党は法人税の実効税率5%引き下げを軸とする平成23年度税制改正大綱を発表し、平成23年1月25日に内閣は改正法案を国会に提出しました。しかし、ねじれ国会で審議が難航する中、3月11日に東日本大震災が発生。今年3月末に特例適用期限が切れる租税特別措置法(例 中小企業の軽減税等、事業基盤強化設備等を取得した場合等の特別償却又は特別税額控除等)については、「つなぎ法案」により、6月末まで延長する応急措置を講じました。
その後、改正法案は6月10日に切り出しが行われました。切り出された「現下の厳しい経済状況及び雇用情勢に対応して税制の整備を図るための所得税法等の一部を改正する法律案」は6月22日に成立し、改正法案を修正した「経済社会の構造の変化に対応した税制の構築を図るための所得税法等の一部を改正する法律案」は現在、審議中となっています。

【平成23年度税制改正法案(平成23年1月25日国会提出)~一部抜粋~】

3.可決・成立した法案

現在、成立しているのは、4月27日に成立した下記「(1)東日本大震災の被災者等に係る国税関係法律の臨時特例に関する法律案」と6月22日に成立した下記「(2)現下の厳しい経済状況及び雇用情勢に対応して税制の整備を図るための所得税法等の一部を改正する法律案」となります。

東日本大震災の被災者等に係る国税関係法律の臨時特例に関する法律

現下の厳しい経済状況及び雇用情勢に対応して税制の整備を図るための所得税法等の一部を改正する法律

【主な内容】

1、中小企業者等の法人税率の特例の延長

中小企業者等の所得金額のうち、800万円以下の金額に対する法人税率18%の特例税率は平成21年4月1日から平成23年3月までの時限措置でしたが、平成24年3月31日まで延長されました。

2、事業基盤強化設備等を取得した場合等の特別償却または税額控除の特例の延長

平成23年3月31日までに一定の設備投資を行った場合には、特別償却または税額控除の特例を受けることができましたが、この制度が平成24年3月31日まで延長されました。

3、雇用促進税制の創設

一定の事業者が平成23年4月1日から平成26年3月31日までの間に開始する事業年度に従業員を10%以上かつ5人以上(中小企業者等については2人以上)増加させた場合には、当期の税額の10%(中小企業者等については20%)を限度として、一人当たり20万円を乗じた金額を税額から控除することができる制度が創設されました。

4、グリーン投資減税の創設

一定の事業者が平成23年6月30日から平成26年3月31日までの間にエネルギー環境負荷低減推進設備等の取得等をして、その取得等の日から1年以内に事業の用に供した場合には、その取得価額の30%の特別償却(中小企業者等については7%の税額控除との選択適用が可能。但し、税額控除額については当期の税額の20%を限度とし、1年間のみ繰越が可能)ができる制度が創設されました。

【対象となる設備の例】

5、消費税の仕入税額控除の見直し

課税売上割合が95%以上の場合に課税仕入れ等の税額の全額を仕入税額控除とする制度は、その課税期間の課税売上高が5億円(課税期間が1年に満たない場合には年換算)を超える事業者については適用しないという見直しが図られました。
この制度は平成24年4月1日以後に開始する課税期間から適用されます。

(注)中小企業者等は、つぎのような法人・個人・組合等が該当します。

4.継続して審議される法案

現在審議されている法案が「経済社会の構造の変化に対応した税制の構築を図るための所得税法等の一部を改正する法律案」であり、主な内容は下記の通りとなります。

【法人税関連】

  • 法人税の実効税率の引き下げ
    • 普通法人の法人税率が30%から25.5%へ引き下げ
      (中小法人の所得金額800万円以下の部分については、22%から19%へ引き下げ)
  • 減価償却の見直し
    • 減価償却資産の定率法の償却率は定額法の償却率(1/耐用年数)を2.0倍した数(現行は2.5倍)
  • 中小法人の軽減税率の引き下げ
    • 所得金額800万円以下の部分について、18%から15%へ引き下げ
  • 繰越欠損控除の見直し
    • 大法人について、繰越欠損金の控除限度額について、その繰越控除をする事業年度の繰越控除前の所得金額の80%を限度(現行は限度なし)
    • 繰越期間が9年間に延長(現行は7年間) 等

【所得税関連】

  • 給与所得控除の上限の設定
    • 給与収入が1,500万円を超える場合には給与所得控除額を245万円の上限を設定
    • 役員の給与収入が2,000万円を超える場合の給与所得控除額について、収入金額の区分に応じて上限を設定
  • 特定支出控除の見直し
    • 職務と関連のある図書の購入費等の対象となる範囲を拡大
    • 給与収入の区分に応じ、一定金額を超えた部分の金額を給与所得控除額に加算が可能
  • 短期勤務の役員退職金課税の見直し
    • 勤続年数5年以下の法人役員等の退職所得については「2分の1課税」が廃止 等

【相続税関連】

  • 相続税の基礎控除の引き下げ、税率構造の見直し
    • 基礎控除が「3,000万円+600万円×法定相続人の数」に縮小
      (現行は「5,000万円+1,000万円×法定相続人の数」)
    • 税率区分を8区分に拡大し、税率を10%~55%に拡大
      (現行は税率区分を6区分、税率は10%~50%)
  • 贈与税の税率構造の見直し
    • 直系尊属から20歳以上の者に対する贈与とそれ以外で贈与税率を区分け
      (現行は区分けなし)
    • 贈与税区分を8区分に区分けし、贈与税率を10%~55%に拡大
      (現行は税率区分を6区分、税率は10%~50%)
  • 生命保険の非課税金額の見直し
    • 死亡保険金の非課税金額を「500万円×法定相続人(未成年者、障害者及び相続開始直前に被相続人との生計一親族に限る)」に限定
      (現行は「500万円×法定相続人の数」)
  • 相続時精算課税制度の対象者の拡大
    • 受贈者の範囲を20歳以上である推定相続人及び孫まで拡大
      (現行は20歳以上の推定相続人)
    • 贈与者の年齢を60歳以上(現行は65歳以上)  等

5.実務上の対応

法人税率の引き下げ、減価償却の見直しといった課税ベースの拡大など注目度の高い改正項目は「経済社会の構造の変化に対応した税制の構築を図るための所得税法等の一部を改正する法律案」に含まれており、その成立は国会の動向次第です。今後どのようになるのかは現在不透明な状況です。企業にとっては震災支援の財源確保のための増税の話もささやかれるなか、税制の動向によっては今後の事業計画が大きく左右されかねません。引き続き税制の動向には注意が必要です。

まずは、成立済の法案の中で新たに適用できることとなった特例を活用できないか、また税負担が増える項目がないかを貴社の顧問税理士等とご検討ください。

【東京 朝日税理士法人】
税務、会計、コンサルティング、会社設立支援、不動産など、総合サービスを展開。
法人から個人まで、幅広い顧客層への対応を行っている。
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