民法改正(遺留分関係2019年7月1日施行)と納税猶予の期限確定事由について

民法改正(遺留分関係)により、遺留分減殺請求が遺留分侵害額請求に変わります。
遺留分減殺請求では、過去に贈与を受けたものも含めて、財産自体での弁済が原則です。一方遺留分侵害額請求では、現金での弁済が原則となります。
民法改正前は、遺言による相続ということを例に考えてみると、例えば先代経営者(相続人は長男と次男)の財産が自社株式のみであるような場合、長男がすべての株式を承継すると、次男は遺留分を侵害されますが、遺留分減殺請求により、株式そのものの4分の1が次男の取り分となります。4分の1が次男の所有になっても、残る4分の3に対して事業承継税制の適用が可能です。結果として長男は相続税の納税が猶予されます。
一方改正後は、株式の4分の1相当の現金が次男の取り分となります。結果として長男はその現金を用意せねばならず、自社株式の現金化が必要になるケースが想定されます。長男は株式のすべてを相続しているので、そのすべてに対して事業承継税制を適用したいのですが、経営承継期間内(当初の5年間)は一部でも自社株式を譲渡すると納税猶予の全額の打ち切りとなり、事業承継税制が使えないことになります。
今回の要望は、この点について、譲渡部分のみの期限確定とし、継続保有部分は納税猶予が継続できるようにするというような改正を行うことを要望しているものと考えられます。財産そのものを弁済するのではなく、現金による弁済が必須になった影響を考慮した要望であるといえます。