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経営者のためのビジネス講座

2018.10.9 第39回外国人雇用と労務管理

この文章は、社会保険労務士法人 名南経営によるものです。

※この文章は2018年8月31日現在の情報に基づいて作成しています。具体的な対応については、貴社の顧問弁護士や社会保険労務士などの専門家とご相談ください。

日本における外国人雇用は年々増加しています。厚生労働省が取りまとめた平成29年10月末現在の外国人雇用の届出状況によると、外国人労働者数は約128万人で前年同期比18%の増加となりました。これは、平成19年に届け出が義務化されて以来、過去最高を更新しています※1
平成30年6月15日に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針2018」(骨太の方針)※2では、深刻な人手不足に対応するため、一定の専門性・技能を有し、即戦力となる外国人材を受け入るための新たな在留資格を創設し、その運用を平成31年4月に開始する予定としています。
人手不足に拍車がかかる中、特に飲食業や小売業などでは、外国人労働者はすでに欠かせない存在であり、外国人雇用は身近なものになっています。そこで今回は、外国人労働者を雇用する際の手続きと労務管理のポイントを解説します。特に、初めて外国人雇用を検討されている場合はぜひご参考にしてください。

  1. ※1:厚生労働省「外国人雇用状況」の届出状況まとめ(平成29年10月末現在)
    https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000192073.html
  2. ※2:内閣府「経済財政運営と改革の基本方針2018」
    http://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/cabinet/2018/decision0615.html

1.外国人雇用と在留資格

外国人が日本で就労するためには、入国管理局の許可を得た就労可能な在留資格が必要です。在留資格は、「出入国管理及び難民認定法(以下、入管法)」において定められ、現在28種類※3あります。この内、外国人労働者に適用されている在留資格は、厚生労働省の「外国人雇用状況」の届出状況まとめなどによれば、図表1の通り5つの形態に分けられます。

企業が外国人を採用するにあたっては、従事してもらいたい業務に対して適切な在留資格を有しているのかをあらかじめ確認しておく必要があります。在留資格で認められていない業務に従事させることは、不法就労助長罪として、3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金、または併科(入管法第73条の2)がされる可能性があるため、厳格な注意をしておかなければなりません。

<図表1> 在留資格の形態とその内容

在留資格の形態
(外国人労働者数と全体に占める割合
(H29.10末))
就労や活動の内容 該当例
身分に基づく
在留資格
(459,132人、35.9%)
在留中の活動に制限がなく、日本人と同様にさまざまな分野で就労可能 永住者・日本人の配偶者・永住者の配偶者・定住者など
資格外活動
(297,012人、23.2%)
本来の在留資格の活動以外に、入国管理局の許可を得て行う、原則週28時間以内のアルバイト 留学生・在留外国人が扶養する配偶者など
技能実習
(257,788人、20.2%)
外国人技能実習制度に基づき認められている母国への技術移転を目的として行われる実習 技能実習生
専門的・技術的分野の
在留資格
(238,412人、18.6%)
専門的・技術的な能力による就労 大学教授・作曲家・画家・報道記者・経営者・弁護士・医師・研究者・技術者・通訳・介護福祉士・プロスポーツ選手など
特定活動
(26,270人、2.1%)
法務大臣が個々の外国人について特に指定する活動 外交官の家事使用人・ワーキングホリデー・経済連携協定に基づく外国人看護師や介護福祉士候補者など
  • (出典) 厚生労働省「外国人雇用状況」の届出状況まとめ【本文】(平成29年10月末現在)P3-4より抜粋して加工。
    https://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-11655000-Shokugyouanteikyokuhakenyukiroudoutaisakubu-Gaikokujinkoyoutaisakuka/7584p57g.pdf
  1. ※3:入局管理局「在留資格一覧表」(平成30年8月現在)
    http://www.immi-moj.go.jp/tetuduki/kanri/qaq5.html

2.外国人採用時の注意点

外国人を採用するにあたって注意が必要なポイントを解説します。

no1在留カード・パスポートの確認

先述の通り、従事してもらう業務に対して、在留カード(図表2)などにより在留資格が適合しているかどうかの確認が必要です。また、在留カードやパスポートについて、有効期限が切れていないかまたは期限切れ間近ではないか、偽造変造されていないかの2点を確認します。在留カードの確認ポイントや偽造変造防止対策などは入国管理局のホームページで確認できます※4。なお、パスポートは本人に携行義務が課せられているため、企業が預かってはなりません。

<図表2> 在留カード

在留カード 拡大して見る
  • (出典) 入国管理局「在留カードとは?」から図を転載
    http://www.immi-moj.go.jp/tetuduki/zairyukanri/whatzairyu.html
  1. ※4:入国管理局「『在留カード』及び『特別永住者証明書』の見方」
    http://www.immi-moj.go.jp/newimmiact_1/pdf/zairyu_syomei_mikata.pdf

no2賃金支払い

労働基準法第3条において、国籍を理由とした労働条件の差別的取り扱いは禁止されています。よって、「外国人労働者は各種手当の支給対象外とする」といった取り扱いをすることは違法行為です。特に、外国人技能実習生に対しては、いまだに“安価な労働力”と考え、最低賃金を下回る賃金額で労働させている違法行為が散見されます。外国人労働者にも最低賃金法は適用されるため、当然そのようなことをしてはなりません。

no3労働条件通知書・労働契約書の作成と就業規則の周知

労働契約を締結する際には、労働基準法第15条により、労働条件を明示しなければなりません。日本語を読むことが難しい方へは母国語も併記し、認識の齟齬を防ぎたいところです。自社で翻訳をされることが難しい場合には、厚生労働省などが外国語も併記した労働条件通知書のひな型を提供していますので、それらを活用するのもよいでしょう※5
就業規則の周知についても同様のことが言えます。少なくとも十分な時間をとって説明するという配慮は必要でしょう。後になって「読めないので知らなかった」と言われないように、就業規則の内容を理解し了承した旨の確認書を取得しておくのもよいでしょう。

  1. ※5:厚生労働省「外国人労働者向けモデル労働条件通知書(英語)」
    http://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/gyousei/kantoku/040325-4.html
    東京外国人雇用サービスセンター「労働条件通知書」
    https://jsite.mhlw.go.jp/tokyo-foreigner/shiryou_ichiran/roudou_jouken_tsuchisho.html

no4誓約書の提出

守秘義務や競業避止義務、身元保証人などの誓約書も日本人同様に取得しておきましょう。身元保証人については、緊急連絡先という目的もあるため、できれば日本国内に在住している方にしてください。守秘義務に関しては、抑止力を持たせるには十分な説明をしておくことが肝要です。

3.社会保険における外国人特有の手続き

社会保険は外国人に対しても適用されますので、日本人と同様の手続きを行う必要があります。加えて、外国人であることによって追加で必要となる手続きがあります。

no1健康保険

健康保険については、特段外国人であることで必要となる手続きはありませんが、平成30年3月から、外国人労働者の母国など海外に居住している家族の扶養認定を受けたい場合の手続きが厳格化されています※6。具体的には、「健康保険被扶養者(異動)届」の提出にあたって、次の①~③の書類を添付する必要があります。

  1. ① 現況申立書(扶養したい者の続柄、収入状況、仕送りなどを記載)
  2. ② 身分関係の確認書類(続柄などの公的な証明書)
  3. ③ 生計維持関係の確認書類(仕送り実績や扶養したい者の収入が確認できるもの)
    *証明書などの書類が外国語である場合は、その日本語訳文も併せて添付が必要。
  1. ※6:日本年金機構「海外にお住まいのご家族について、扶養認定を受ける場合の手続きについて」
    http://www.nenkin.go.jp/oshirase/taisetu/2018/201803/2018032302.html

no2厚生年金保険

厚生年金保険の被保険者資格取得手続きにあたっては、資格取得届などと併せて、在留カードや住民票に記載のあるローマ字氏名を日本年金機構(年金事務所)へ届け出る必要があります。ローマ字氏名の届け出は、図表3の「ローマ字氏名届」で行い、本人が外国人の場合だけでなく、配偶者が外国人であり、第三号被保険者資格の取得手続きを行う場合にも必要です。
なお、平成29年8月から老齢年金の受給資格期間が25年から10年へと大幅に短縮されました。外国人であっても10年の資格期間を満たすことができれば、老齢年金を受け取ることができますので、以前よりは比較的受給しやすいものとなりました。

<図表3> ローマ字氏名届(記入例)

ローマ字氏名届(記入例) 拡大して見る
  • (出典) 日本年金機構「ローマ字で氏名を登録(変更)するとき」
    http://www.nenkin.go.jp/service/kounen/kenpo-todoke/sonota/20150204.html

no3雇用保険

雇用保険の被保険者資格取得手続きにあたって、外国人雇用状況報告を行う必要があります。具体的には、「雇用保険被保険者資格取得届」の外国人用の記入欄に必要事項を記載することで公共職業安定所(ハローワーク)へ報告を行うことになります(図表4)。

<図表4> 雇用保険被保険者資格取得届(一部抜粋)

雇用保険被保険者資格取得届(一部抜粋) 拡大して見る
  • (出典) ハローワークインターネットサービス「雇用保険被保険者資格取得届」
    https://hoken.hellowork.go.jp/assist/600000.do?screenId=600000&action=koyohohiLicenceLink

no4労災保険

労災保険は、外国人労働者に対しても適用されます。なお、労災保険は無記名制の制度ですので、入社時の加入手続きなどはありません。

4.在職中の労務管理のポイント

no1職場の安全確保

言語の問題などから、外国人労働者は労災が起きやすい状況に置かれています。労災事故防止のため、日本語の理解が乏しい方でもわかるように、母国語での安全表示や、写真や図・イラストなどで視覚的に認識できるなどの配慮をするとよいでしょう。また、危険な状態が差し迫った緊急時に、日本人がとっさに使う日本語だけでも覚えてもらっておくことも有効です。例えば、「危ない」「やめろ」「逃げろ」といった言葉です。

no2在留資格の変更・更新の管理

専門性のある在留資格は、対象業務に従事する場合に限って就労が認められています。例えば製造業において、外国顧客との取引のため通訳の仕事で入社した方が、海外との取引量が減ったことで、いつの間にか工場のライン作業をしていたといった場合、不法就労にあたります。外国人労働者については、安易に職種変更や部署異動などの配置転換はできませんので、この点は人事サイドだけでなく、現場サイドへも注意をしておく必要があります。
また、在留資格には有効期限があります。この期限が切れる前に更新が必要です。1日でも期限を過ぎて就労させてしまえば不法就労です。よって、有効期限の管理は本人任せにせず企業側で行うべきであり、手続きに要する期間を考えると、期限が切れる数カ月前には更新手続きを始めるべきです。

no3生活面で直面する諸問題へのサポート

外国人労働者は、言語の問題などから日本での生活に不便を生じることがあります。具体的には、図表5のような項目で問題になりやすいため、従業員が円滑に生活を送れるよう、雇用者としてサポートする体制が必要です。

<図表5> 生活面での諸問題とサポート例

項目 問題となりやすい点とサポート例
日本社会の
仕組みの教育
  • ・日本社会のルールを知らないことで付近住民などとトラブルとなってしまうことがある。

⇒ ゴミ出しのルールなど、生活に密着した日本社会の法律やルール、仕組みを教える。

口座開設や
市区町村の
手続き
  • ・給与支払いのため、金融機関口座の開設や、住民票の手続きが必要である。

⇒ 外国人にとって、これらの手続きは難解であるため、職場の方が付き添ってサポートをする。

住居の
賃貸借契約
  • ・外国人ということで入居を断られることがある。

⇒ 企業で借り上げ社宅として提供する。

病気やけがの
治療
  • ・病気やけがをした場合、適切な医療機関を探せない、症状をうまく伝えられない。

⇒ あらかじめ近くの医療機関をリストアップして伝えておく。
診察に職場の方が付き添う。

メンタルヘルス
  • ・日本語がうまく話せない場合など、孤立しやすく、メンタル不調を引き起こすこともある。
  • ・本人だけでなく、配偶者や子供も同様である。

⇒ 企業のイベントやサークル活動などに積極的に誘うということも一つの予防策である。

no4文化や慣習などへの配慮

休みや家族、宗教に対する考え方や、文化や慣習の違いなどにより、職場でのトラブルとなることがありますので、それらに十分配慮した労務管理を行うとよいでしょう。
諸外国では年次有給休暇の完全取得が法定されている国もあるため、日本に比べ、その取得率は高いものです。そのため、年次有給休暇は完全取得するというケースも少なくありません。また、日本の年末年始やお盆のように、中国の春節など、一定の時期に里帰りをするという風習があるため、その時期に長期で帰省したいという要望が出ます。母国の家族に病気や出産など何かあれば、家族最優先で、すぐさま帰国したいという要望も出ます。
このような休みの取得要望があるということを念頭においた人員配置やスケジュールの工夫、特別休暇制度の設定などが必要です。
外国人の場合、宗教への信仰心が強い方が多いため、職場であっても、それぞれの宗教に合わせた配慮が必要になることがあります。
例えば、イスラム教では、ハラルという考え方があり、宗教上許されている食品しか食べることができないため、食堂や忘年会などの会社行事において提供する食事内容について配慮が必要です。また、1日5回、定刻になると礼拝をしなければならないため、その休憩時間や場所の確保という配慮も必要です。

ご紹介してきたとおり、外国人を雇用するにあたっては、就労に一定の制約や特有の手続き、労務管理があります。これらを理解し適切な対応を行うことで、外国人労働者が日本での生活や就労に困ることなく安全・安心に働ける職場環境を作ってください。

【社会保険労務士法人 名南経営】

名南コンサルティングネットワークグループの一社として、幅広い顧客層にさまざまな経営コンサルティングなどを実践している。

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