ホーム > 時代が求める企業テーマ >
経営者のためのコンサルティング > 経営に役立つヒント 第48回

経営者のためのビジネス講座

2019.8.27 第48回中小企業の設備投資減税 ~2019年度改正~

この文章は、税理士法人名南経営によるものです。

※この文章は2019年7月31日現在の情報に基づいて作成しています。具体的な対応については、貴社の顧問税理士などの専門家とご相談ください。

企業の経営・発展に設備投資は欠かせません。設備投資に対しては、その目的や種類に応じて税制面で多くの優遇措置が用意されています。今回は2019年度の税制改正において、期限の延長や適用要件の追加などが行われた主な中小企業向け設備投資減税について解説します。この文章は法人を対象とした解説とし個人事業主を対象とした解説は割愛します。
代表的な中小企業向けの設備投資減税は次の四つがあり、これらは図表1に示す税務上の「中小企業者」(適用除外事業者(※)を除きます)が適用することができます。それぞれの概要についてポイントを解説します。

  • (※)適用除外事業者とは、前3事業年度の所得金額の平均額が15億円を超える法人をいいます。
  1. 1 中小企業投資促進税制
  2. 2 商業・サービス業・農林水産業活性化税制
  3. 3 中小企業経営強化税制
  4. 4 中小企業防災・減災投資促進税制

<図表1> 税務上の「中小企業者」

  • ■資本金の額または出資金の額が1億円以下の法人
  • ■資本または出資を有しない法人のうち、常時使用する従業員の数が1,000人以下の法人
  • ■協同組合等

ただし資本金1億円以下でも下記は該当しません。

  • (a)同一の大規模法人(※)に発行済株式または出資の総数または総額の1/2以上を直接に保有されている法人
  • (b)複数の大規模法人(※)に発行済株式または出資の総数または総額の2/3以上を直接に保有されている法人

(※)大規模法人とは次の法人をいいます。

  • ・資本金の額または出資金の額が1億円超の法人
  • ・資本または出資を有しない法人のうち、常時使用する従業員の数が1,000人を超える法人
  • ・大法人(資本金または出資金の額が5億円以上である法人)との間に当該法人による完全支配関係がある法人
  • ・完全支配関係のある複数の大法人に発行済株式等の全部を保有されている法人

1.中小企業投資促進税制

引き続き中小企業の設備投資を促すため、適用期間が2年間延長されました。

no1制度の概要

青色申告書を提出する中小企業者が、2021年3月31日までに対象設備を取得などして指定事業の用に供した場合に、図表2に示す特別償却が可能です。資本金が3,000万円以下の中小企業者については、特別償却または税額控除の選択適用が可能です。

<図表2> 中小企業投資促進税制の概要

区分 資本金3,000万円以下 資本金3,000万円超1億円以下
特別償却 取得価額×30%
税額控除 取得価額×7%(※)
  • (※)「商業・サービス業・農林水産業活性化税制」「中小企業経営強化税制」と合わせて法人税額の20%が上限

no2対象設備

対象設備は図表3の通りです。新品が対象であり、中古品や貸付用の設備は対象となりません。

<図表3> 中小企業投資促進税制の対象設備

対象設備 金額その他の要件
機械装置 1台または1基160万円以上
測定工具および検査工具 1台または1基120万円以上、または、
1台または1基30万円以上かつ合計120万円以上
一定のソフトウェア(※) 一のソフトウェア70万円以上
普通貨物自動車 車両総重量3.5t以上
内航船舶 取得価額×75%が対象
  • (※)複写して販売するための原本、開発研究用のもの、サーバー用OSのうち一定のものなどは除く

no3指定事業

対象となる事業は次のいずれかの事業であり、図表3の対象設備をその事業の用に供することが要件となっています。なお、事業は主たる事業である必要はありません。

製造業、建設業、農業、林業、漁業、水産養殖業、鉱業、卸売業、道路貨物運送業、倉庫業、港湾運送業、ガス業、小売業、料理店業その他の飲食店業(料亭、バー、キャバレー、ナイトクラブその他これらに類する事業を除く)、一般旅客自動車運送業、海洋運輸業および沿海運輸業、内航船舶貸渡業、旅行業、こん包業、郵便業、情報通信業、駐車場業、損害保険代理業、学術研究、専門・技術サービス業、宿泊業、洗濯・理容・美容・浴場業、その他の生活関連サービス業、映画業、教育、学習支援業、医療、福祉業、協同組合、サービス業(廃棄物処理業、自動車整備業、機械等修理業、職業紹介・労働者派遣業、その他の事業サービス業)
  • (注) 不動産業、物品賃貸業、電気業、水道業、娯楽業(映画業を除く)などは対象になりません。また、性風俗関連特殊営業に該当する事業も対象となりません。

2.商業・サービス業・農林水産業活性化税制

制度を利用するための要件を加えた上で適用期間が2年間延長されました。

no1制度の概要

青色申告書を提出する中小企業者が、2021年3月31日までに経営改善設備を取得などして指定事業の用に供した場合には、図表4に示す特別償却が可能です。資本金3,000万円以下の中小企業者については特別償却または税額控除の選択適用が可能です。
経営改善設備とは、アドバイス機関(認定経営革新等支援機関、商工会議所、商工会、都道府県中小企業団体中央会、商店街振興組合連合会など)から経営の改善に資する資産として書類(経営改善に関する指導および助言を受けた旨を明らかにする書類)に記載された図表5に示す設備です。
なお、2019年度から、投資計画の実施を含む経営改善により売上高または営業利益の伸び率が年2%以上となる見込みであることについて、アドバイス機関の確認を受けることが適用要件に加えられました。ただし、2019年3月31日までにアドバイス機関から経営改善に関する書類の交付を受け、2019年9月30日までに取得などをした対象設備についてはアドバイス機関の確認は不要です。

<図表4> 商業・サービス業・農林水産業活性化税制の概要

区分 資本金3,000万円以下 資本金3,000万円超1億円以下
特別償却 取得価額×30%
税額控除 取得価額×7%(※)
  • (※)「中小企業投資促進税制」「中小企業経営強化税制」と合わせて法人税額の20%が上限

no2対象設備

対象設備は図表5の通りです。新品が対象であり、中古品や貸付用の設備は対象となりません。

<図表5> 商業・サービス業・農林水産業活性化税制の対象設備

対象設備 金額要件
器具備品 1台または1基30万円以上
建物附属設備 一の取得価額60万円以上

no3指定事業

対象となる事業は次のいずれかの事業であり、図表5の対象設備をその事業の用に供することが要件となっています。なお、事業は主たる事業である必要はありません。

卸売業、小売業、情報通信業、一般旅客自動車運送業、道路貨物運送業、倉庫業、港湾運送業、こん包業、損害保険代理業、不動産業、物品賃貸業、専門サービス業、広告業、技術サービス業、宿泊業、飲食店業、洗濯・理容・美容・浴場業、その他の生活関連サービス業、社会保険・社会福祉・介護事業、サービス業(教育・学習支援業、映画業、協同組合、他に分類されないサービス業(廃棄物処理業、自動車整備業、機械等修理業、職業・労働者派遣業、その他の事業サービス業))、農業、林業、漁業、水産養殖業
  • (注) 製造業、建設業、電気業、医療業、娯楽業(映画業を除く)などは対象外です。風俗営業法上の風俗営業に該当する料亭、バー、キャバレー、ナイトクラブその他これらに類する事業については、生活衛生同業組合の組合員が事業を行う場合に限り対象となります。なお、性風俗関連特殊営業に該当する事業については対象となりません。

3.中小企業経営強化税制

中小企業・小規模事業者の生産性向上に向けた設備投資を引き続き後押しするため、こちらも適用期間が2年間延長されました。

no1制度の概要

青色申告書を提出する中小企業者が、『中小企業等経営強化法』の認定を受けた経営力向上計画に基づき、2021年3月31日までに対象設備を取得などして、指定事業の用に供した場合には、その対象設備について、図表6の通り、即時償却または税額控除の選択適用が可能です。
「中小企業投資促進税制」や「商業・サービス業・農林水産業活性化税制」と比較して、即時償却が可能な点、資本金3,000万円超1億円以下でも税額控除が選択可能な点、資本金3,000万円以下では税額控除の割合が大きい点において優遇されています。

<図表6> 中小企業経営強化税制の概要

区分 資本金3,000万円以下 資本金3,000万円超1億円以下
特別償却 即時償却
税額控除 取得価額×10%(※) 取得価額×7%(※)
  • (※)「中小企業投資促進税制」「商業・サービス業・農林水産業活性化税制」と合わせて法人税額の20%が上限

no2対象設備

「中小企業経営強化税制」の対象設備は、図表7の生産性向上設備(A類型)または図表8の収益力強化設備(B類型)のいずれかに該当するもので、新品が対象であり、中古品や貸付用の設備は対象となりません。
手続きとしては、設備を取得する前に、生産性向上設備(A類型)の場合は「工業会等による証明書」を、収益力強化設備(B類型)の場合には「経済産業局による確認書」を取得し、それらの写しを添付の上、事業に応じた主務大臣に経営力向上計画を申請し認定を受ける必要があります。
また、2019年度の税制改正において、「働き方改革に資する設備」についてもこの税制の対象であることが明示されました。工場や作業場など、生産活動を行う施設内の休憩室や食堂などの設備についてもこの税制の対象になります。一方、本社事務所などの生産活動を行わない施設内に設置する同様の設備についてはこの税制の対象にはならないことも明示されています※1

  • ※1:国税庁「中小企業者等が取得をした働き方改革に資する減価償却資産の中小企業経営強化税制(租税特別措置法第42条の12の4)の適用について」
    http://www.nta.go.jp/law/shitsugi/hojin/04/16.htm

<図表7> 生産性向上設備(A類型)

対象設備 金額要件 販売開始時期 生産性要件
機械装置(※1、5) 1台または1基
160万円以上
10年以内

旧モデル比で年平均1%以上向上する設備(ソフトウェアおよび旧モデルがないものは販売開始時期の要件を満たすもの)

測定工具および
検査工具
1台または1基
30万円以上
5年以内
器具備品(※2) 1台または1基
30万円以上
6年以内
建物附属設備
(※3、5)
一の取得価額
60万円以上
14年以内
ソフトウェア(※4)
(設備の稼働状況に係る情報収集機能および分析・指示機能を有するものに限る)
一のソフトウェア
70万円以上
5年以内

<図表8> 収益力強化設備(B類型)

対象設備 金額要件 投資利益率要件
機械装置(※1、5) 1台または1基
160万円以上

経済産業大臣の確認を受けた
年平均の投資利益率5%以上の投資計画に記載されたもの

工具 1台または1基
30万円以上
器具備品(※2) 1台または1基
30万円以上
建物附属設備
(※3、5)
一の取得価額
60万円以上
ソフトウェア(※4) 一のソフトウェア
70万円以上
  • (※1) 発電の用に供する設備にあっては、主として電気の販売を行うために取得等をするもの(経営力向上計画の実施時期のうちで発電した電気の販売を行う期間中の発電量のうち、販売を行うことが見込まれる電気の量が占める割合が2分の1を超える発電設備等)を除く。
  • (※2) 電子計算機については、情報通信業のうち自己の電子計算機の情報処理機能の全部または一部の提供を行う事業を行う法人が取得または製作をするものを除く。医療機器にあっては、医療保健業を行う事業者が取得または製作をするものを除く。
  • (※3) 医療保健業を行う事業者が取得または建設をするものを除くものとし、発電の用に供する設備にあっては主として電気の販売を行うために取得等をするものを除く。
  • (※4) 複写して販売するための原本、開発研究用のもの、サーバー用OSのうち一定のものなどは除く。
  • (※5) 発電設備等の取得等をして税制措置を適用する場合には、経営力向上計画の認定申請時に「発電設備等の概要等に関する報告書」およびその記載内容を証する書類の添付が必要。

no3指定事業

対象となる事業は「中小企業投資促進税制」または「商業・サービス業・農林水産業活性化税制」の指定事業に該当するすべての事業が指定事業になり、図表7または図表8の対象設備をその事業の用に供することが要件となっています。なお、事業は主たる事業である必要はありません。ただし、電気業、水道業、鉄道業、航空運輸業、銀行業、娯楽業(映画業を除く)などは対象になりません。また、性風俗関連特殊営業に該当する事業も対象となりません。

4.中小企業防災・減災投資促進税制

自然災害の頻発化や経営者の高齢化によって、多くの中小企業は、事業活動の継続が危ぶまれています。こうした状況を踏まえ、中小企業の事業活動の継続に資するため、中小企業の災害対応力を高めるとともに、円滑な事業承継を促進するため、『中小企業の事業活動の継続に資するための中小企業等経営強化法等の一部を改正する法律』(通称『中小企業強靱化法』)が2019年7月16日に施行されました※2
2019年度税制改正では、『中小企業強靭化法』に基づいて、中小企業が災害への事前対策を強化するための防災・減災設備を取得した場合に、特別償却が可能となる新しい制度が創設されました。

no1制度の概要

青色申告書を提出する中小企業者のうち、『中小企業強靭化法』の事業継続力強化計画※3または連携事業継続力強化計画※3の認定を受けたものが、2019年7月16日から2021年3月31日までの間に、図表10の対象設備を取得などして事業の用に供した場合には、その対象設備について図表9の通り特別償却が可能です。ただし、税額控除制度は設けられていません。

<図表9> 中小企業防災・減災投資促進税制の概要

区分 資本金1億円以下
特別償却 取得価額×20%
税額控除 なし

no2対象設備

<図表10> 中小企業防災・減災投資促進税制の対象設備

対象設備 取得価額 設備の例
機械装置 1台または1基
100万円以上
自家発電機、排水ポンプなど
器具備品 1台または1基
30万円以上
制震・免震ラック、衛星電話など
建物附属設備 一の取得価額
60万円以上
止水板、防火シャッター、排煙設備など
  • ※2:経済産業省ニュースリリース
    https://www.meti.go.jp/press/2019/07/20190709002/20190709002.html
  • ※3:中小企業庁「事業継続力強化計画」(「連携事業継続力強化計画」含む)
    https://www.chusho.meti.go.jp/keiei/antei/bousai/keizokuryoku.htm

以上、代表的な四つの中小企業向け設備投資減税をご紹介しました。その他にも、地域未来投資促進法による税制支援※4、コネクテッド・インダストリーズ税制(IoT税制)※5、省エネ再エネ高度化投資促進税制※6など中小企業にとって有効な税制があります。なお、これらの制度を利用し、所有権移転外リース取引により導入した対象設備については、税額控除のみ適用することができます。優遇税制やリース取引による設備投資を検討するに当たり、顧問税理士などの専門家を有効に活用することをおすすめします。

  • ※4:経済産業省「地域未来投資促進法」
    https://www.meti.go.jp/policy/sme_chiiki/chiikimiraitoushi.html
  • ※5:経済産業省「コネクテッド・インダストリーズ税制(IoT税制)」
    https://www.meti.go.jp/policy/it_policy/data-katsuyo/iot-zeisei/iot-zeisei.html
  • ※6:経済産業省 資源エネルギー庁「省エネ再エネ高度化投資促進税制」
    https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saving/enterprise/support/index03.html
【税理士法人名南経営】

名南コンサルティングネットワークグループの一社として、幅広い顧客層にさまざまな経営コンサルティングなどを実践している。

総合受付はこちら