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経営者のためのコンサルティング > 経営に役立つヒント 第47回

経営者のためのビジネス講座

2019.7.9 第47回特定技能の創設と外国人雇用

この文章は、社会保険労務士法人 名南経営によるものです。

※この文章は2019年6月7日現在の情報に基づいて作成しています。具体的な対応については、貴社の顧問弁護士や社会保険労務士などの専門家とご相談ください。

2019年4月1日、「出入国管理及び難民認定法(以下、入管法)及び法務省設置法の一部を改正する法律」が施行されました。この法改正は、企業などの人手不足への対応を図るため、新たな在留資格である「特定技能」を創設し、外国人労働者の受け入れを拡大しようとする点において大いに注目を集めました。そこで今回は、多くの企業において外国人雇用の活用が期待できる特定技能制度について解説します。

関連情報

1.新たな在留資格「特定技能」の創設

no1従来からの在留資格制度

日本における外国人の就労などについては、入管法による在留資格制度によって管理されています。在留資格は約30種類ありこの資格が無いと外国人は日本で就労などの活動ができません。基本的には日本人の雇用機会の確保が優先され、外国人の就労については、日本人では代替し難い専門的で高度な職業領域などにおいて限定的に認められ、日本人で代替し易い、例えば単純作業などの職業領域においては、原則として就労が認められないというのが、この制度の考え方の背景にあります。

在留資格を日本での就労可否という観点で区分すると、次の三つに大別することができます。一つ目は、日本人と同等に自由な就労ができる区分です。永住者や日本人の配偶者など、「身分に基づく在留資格」が該当します。二つ目は、在留資格によって認められた範囲内において限定的に就労ができる区分です。技術・人文知識・国際業務(通訳や技術者など)に代表される「専門的・技術的分野の在留資格」や、技能実習生・留学生アルバイト(就労時間の制限あり)などが該当します。三つ目は、観光客(短期滞在者)など、就労可能な在留資格ではないため就労が認められない区分です。
2018年10月末現在の「外国人雇用状況」の届出状況まとめ※1によりますと、外国人労働者数は146万人となっており、在留資格別外国人労働者の割合では、「身分に基づく在留資格」は外国人労働者全体の33.9%と最も多く、次いで留学生アルバイトなどの「資格外活動」が同23.5%を占め、「技能実習」が同21.1%、「専門的・技術的分野の在留資格」が同19.0%となっています。

<図表1>在留資格の分野別例

在留資格の分野 在留資格の例 就労できる業務
身分に基づく在留資格 永住者、日本人の配偶者等
など
制限なし
専門的・技術的分野の
在留資格
高度専門職、技術・人文
知識・国際業務 など
許可された業務に限定
技能実習 技能実習生 許可された業務に限定
資格外活動 留学生 など 原則週28時間以内のアルバイト
(風営法関係を除く)
特定活動 外交官の家事使用人 など 法務大臣が指定
  • ※1:厚生労働省「『外国人雇用状況』の届出状況まとめ(平成30年10月末現在)」
    https://www.mhlw.go.jp/content/11655000/000472892.pdf

no2「特定技能」の創設と対象となる産業分野

今回の法改正において、深刻な人手不足の状況に対応するため、一定の専門性・技能を有し即戦力となる外国人を受け入れる新たな在留資格として「特定技能」が創設されました。この資格は、「専門的・技術的分野の在留資格」と比較して高度な技術などが求められていないこと、また、人手不足を理由として就労が認められることが、これまでの在留資格制度の考え方とは大きく異なります。
特定技能の受け入れは、すべての業種・職種においてできるわけではありません。特に人手不足が深刻であるとされる業界(以下「特定産業分野」といいます)に限定されます。制度開始時点における特定産業分野は、図表2に示す14分野となっています※2。 他の在留資格には無い特徴として、分野毎に所管の省庁(厚生労働省、経済産業省、国土交通省、農林水産省)が決まっており、各省庁から制度の運用方針が示されています。また、制度開始から5年間での各分野における受け入れ上限数が定められており、最大34万5150人を見込んでいる点も他の在留資格には無い特徴です。

  • ※2:法務省「分野別運用方針について(14分野)」
    http://www.moj.go.jp/content/001279757.pdf

no3「特定技能」の種類(1号・2号)

特定技能には、「特定技能1号」と「特定技能2号」の2種類があります。「特定技能1号」は、特定産業分野に属する相当程度の知識または経験を必要とする技能を要する業務に従事する外国人向けの在留資格です。従来からある「高度専門職」や「技術・人文知識・国際業務等」などの専門的・技術的分野の在留資格においては、かなり高度な専門性や技術などが求められていますが、それに対して、特定技能の場合は、「相当程度(の知識または経験を必要とする技能)」とされており、比較的緩やかな水準となっています。
「特定技能2号」は、特定産業分野に属する熟練した技能を要する業務に従事する外国人向けの在留資格です。制度開始時点においては、特定産業分野の内、建設、造船・舶用工業の2分野に限定して受け入れ可能です。また、特定技能1号の在留期間の上限は5年ですが、特定技能2号の上限はありません。さらに、特定技能2号においては、家族帯同や永住権の取得も可能です(図表2)。

<図表2>「特定技能1号」と「特定技能2号」の比較

  特定技能1号 特定技能2号
在留期間 1年、6カ月、4カ月ごとの更新
(上限5年)
3年、1年、6カ月ごとの更新
(上限なし)
特定産業分野 次の14分野
介護、ビルクリーニング、素形材産業、産業機械製造業、電気・電子情報関連産業、建設、造船・舶用工業、自動車整備業、航空、宿泊、農業、漁業、飲食料品製造業、外食業
建設、造船・船用工業
技能水準 試験等で確認(技能実習2号を修了した者は試験等免除) 試験等で確認
日本語能力水準 試験等で確認(技能実習2号を修了した者は試験等免除) 試験等での確認は不要
家族の帯同 基本的に認めない 要件を満たせば可能(配偶者、子)

no1「特定技能」の資格取得方法

外国人が、特定技能1号の資格を取得する方法は二つあります。一つは、特定技能専用に新たに設けられる試験を受け、合格することです。試験は、技能試験と日本語試験の2種類で構成されています。海外から新たに来日する外国人については、国外で開催される試験に合格する、すでに日本国内に在留している留学生などであれば日本で開催される試験に合格するという方法があります。この試験については、特定産業分野ごとに、試験の開始時期や開催場所(国)を定めて実施する予定となっています※3。しかし、現時点では、試験の準備が整っていない分野が大多数を占めています。そのため、試験の合格を経て特定技能で就労しようとするには、分野によっては、試験の準備状況などにより、時間を要する場合があります。なお、試験実施の最新状況については、法務省の試験関係のホームページ※4で確認できます。
もう一つの方法は、技能実習2号を修了し、特定技能1号へ移行する方法です。技能実習は「外国人技能実習制度」※5に基づいた在留資格で、外国人の母国である開発途上国などの発展のため、技術を移転する「学び」が目的であることに対し、特定技能は、「就労」自体が目的である点に大きな違いがあります。技能実習2号は在留期間が2、3年目の技能実習生が対象で、技能実習2号を修了した場合には、上述の技能試験および日本語試験が両方とも免除されるため、未だ試験実施がされていない特定産業分野においても、特定技能1号の在留資格変更の許可申請をすることができます。しかし、技能実習2号において認められている業務(職種)※6が特定技能1号において認められている業務では無い場合がありますので、技能実習2号修了から特定技能1号への移行を計画される場合には、特定技能1号の対象業務となっているか、あらかじめ確認をしておく必要があります。

  • ※3:首相官邸「特定技能制度施行に向けた準備状況について」
    P3「「特定技能」において新設する試験について」
    https://www.kantei.go.jp/jp/singi/gaikokujinzai/kaigi/dai4/siryou1.pdf
  • ※4:法務省「試験関係」
    http://www.moj.go.jp/nyuukokukanri/kouhou/nyuukokukanri01_00135.html
  • ※5:厚生労働省「外国人技能実習制度について」
    https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/jinzaikaihatsu/global_cooperation/index.html
  • ※6:厚生労働省「技能実習移行対象職種一覧(令和元年5月28日現在 80職種144作業)」
    https://www.mhlw.go.jp/content/000512744.pdf

no1「特定技能1号」としての就労開始までの流れ

外国人が、試験合格または技能実習2号修了による試験免除の対象となった後は、特定技能1号としての就労開始に向け、まずは受け入れ機関(就労する企業など)との雇用契約を締結します。この時点で、受け入れ機関は、併せて事前ガイダンスや健康診断などを実施します。その後実際に就労を開始するまでの流れについては、外国人が海外から来日する場合とすでに日本国内に在留している場合で異なります。
海外から来日する場合には、受け入れ機関が地方出入国在留管理局に対して「在留資格認定証明書交付申請」を代理申請します。審査の結果、在留資格認定証明書が交付されれば、本人または代理人が、在外公館に対して査証(ビザ)申請を行います。査証が発給された後、日本へ入国し、在留カードの交付を受け、日本での生活環境の準備を整えた上で、就労開始となります。
他方、すでに日本国内に在留している場合には、原則本人が地方出入国在留管理局に対して「在留資格変更許可申請」を行います。在留資格変更許可がされた後、就労開始となります※7

  • ※7:法務省「在留資格「特定技能」について」P3「制度概要③ 就労開始までの流れ」
    http://www.moj.go.jp/content/001293198.pdf

no1支援計画と登録支援機関

特定技能1号の外国人に対して、受け入れ機関となる企業などが、その就労を安定的かつ円滑に行うことができるようにするため、職場での支援にとどまらず、職場以外での日常生活や社会生活における支援を実施する必要があります。
具体的には、法務省令(特定技能雇用契約及び1号特定技能外国人支援計画の基準等を定める省令)の基準に適合した「1号特定技能外国人支援計画(以下、支援計画)」※8を作成し、支援を行わなければなりません。
支援計画の内容は、図表3に挙げる9項目とされています。項目ごとに、必ず行わなければならない「義務的支援」と任意的に行う「任意的支援」が示されています。支援に要する費用は、対象となる外国人に負担させてはならず、受け入れ機関である企業などが負担しなければなりません。なお、受け入れ機関である企業などにおいて、何らかの事由により支援を行うことが難しい場合、この支援の全部または一部を「登録支援機関」に委託することが可能です。

<図表3> 支援計画の内容

  1. ① 事前ガイダンスの提供
  2. ② 出入国する際の送迎
  3. ③ 適切な住居の確保に係る支援・生活に必要な契約に係る支援
  4. ④ 生活オリエンテーションの実施
  5. ⑤ 日本語学習の機会の提供
  6. ⑥ 相談または苦情への対応
  7. ⑦ 日本人との交流促進に係る支援
  8. ⑧ 外国人の責めに帰すべき事由によらないで特定技能雇用契約を解除される場合の転職支援
  9. ⑨ 定期的な面談の実施、行政機関への通報

「登録支援機関」とは、受け入れ機関との支援委託契約により、支援計画に基づく支援の全部または一部の委託を受け、その実施を行うことができる者です。登録支援機関になるためには、出入国在留管理庁長官の登録を受ける必要があり、登録を受けた機関は、法務省の登録支援機関登録簿※9に登録されます。入管業務を行う行政書士事務所や協同組合などが多く登録されています。

  • ※8:法務省「1号特定技能外国人支援に関する運用要領」
    http://www.moj.go.jp/content/001289243.pdf
  • ※9:法務省「登録支援機関登録簿」
    http://www.moj.go.jp/nyuukokukanri/kouhou/nyuukokukanri07_00205.html

2.2019年4月以降の外国人雇用に関する制度など

入管法の改正により、今後さらなる外国人労働者の拡大が見込まれるため、外国人雇用を取り巻く制度などにおいては、さまざまな動きが見られます。以下では、その一端を紹介します。

no1入国管理局は出入国在留管理庁に

改正入管法の施行日と同日である2019年4月1日、外国人の在留資格をめぐる問題への対応を強化すべく、これまで法務省の内部部局であった「入国管理局」が、法務省の外局となる「出入国在留管理庁」として格上げされました。また、地方入国管理局についても「地方出入国在留管理局」という新名称で、出入国在留管理庁の地方支分部局として設置され、外国人管理を担う行政機関が再編されました。

no2外国人雇用管理指針の改正

厚生労働省は、働き方改革関連の法改正や特定技能の創設などを受け、「外国人労働者の雇用管理の改善等に関して事業主が適切に対処するための指針(以下、外国人雇用管理指針)」※10の見直しを行い2019年4月1日付で改正しました。例えば、労働契約締結時の労働条件明示について、日本語と母国語が併記されたモデル労働条件通知書などの書式を活用したり、母国語や平易な日本語(ひらがななど)を用いて説明したりするなど、外国人労働者が理解できる方法により明示するよう努めなければならない、といった趣旨の内容が加えられるなど、多岐にわたる変更が加えられています※11

  • ※10:厚生労働省「外国人労働者の雇用管理の改善等に関して事業主が適切に対処するための指針」
    https://www.mhlw.go.jp/content/000493590.pdf
  • ※11:厚生労働省「外国人雇用管理指針の主な改正内容」
    https://www.mhlw.go.jp/content/000500734.pdf

no3出入国在留管理基本計画の策定

2019年4月、新たに「出入国在留管理基本計画」※12が策定されました。この「出入国在留管理基本計画」は、「(旧)出入国管理基本計画」が改称されたものであり、技能実習法の施行や特定技能の創設、出入国在留管理庁の組織改編などの情勢変化を踏まえ、出入国在留管理行政の基本的な考え方が示されています。

  • ※12:法務省「出入国在留管理基本計画」
    http://www.moj.go.jp/content/001292994.pdf

no4留学生の接客業などへの就職支援のため法務省告示を改正

外国人留学生の日本国内での就職率は現状約3割であり、それを5割に向上させることが政府の目標とされています。そこで、留学生の就職支援の観点から、日本の大学を卒業する留学生が就職できる業種の幅を広げるため、留学生の就職支援のための法務省告示が2019年5月30日に改正されました※13
これにより、日本の大学を卒業した外国人留学生が、高い日本語能力があるなどの一定の要件を満たす場合には、在留資格「特定活動」を得ることができ、従来は就労目的の在留資格が認められていなかった、飲食店、小売店などでの接客業に従事することができるようになります。

  • ※13:法務省「留学生の就職支援のための法務省告示の改正について」
    http://www.moj.go.jp/nyuukokukanri/kouhou/nyuukokukanri07_00210.html

no5外国人技能実習制度に「宿泊」の職種を追加へ(2019年7月頃施行予定)

外国人技能実習制度において、新たに「宿泊」の職種を追加するため、改正する省令(案)に係る意見募集(意見・情報受付締切日:2019年6月14日)が公開されています※14。今回の職種追加は、人手不足が深刻な宿泊業界からの要望を受けたものとみられ、「宿泊」の職種が技能実習に追加されることにより、技能実習2号を修了した場合には、技能試験および日本語試験が両方とも免除され、特定技能1号の在留資格変更の許可申請をすることができる予定です。

  • ※14:パブリックコメント「『外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律施行規則の一部を改正する省令(案)』に係る意見募集について」
    https://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=495190047&Mode=0

no6外国人を支援する各種ツールの整備

日本に在留する外国人は昨年末(2018年12月)時点で、約273万人と過去最高となっており※15、特定技能の創設などにより、今後もさらに増加していくことが見込まれます。このような現状を受け、2018年12月に閣議決定された「外国人材の受入れ・共生のための総合的対応策」※16の一環として、外国人生活支援ポータルサイトの開設、生活・就労ガイドブックの作成、労働法や社会保険制度に関する各種リーフレットの外国語版の作成など、2019年4月以降さまざまなツールが順次整備されています。外国人雇用を行うにあたって活用できるツールとなるでしょう(図表4)。

<図表4> 各種ダウンロードサイト

■法務省「外国人生活支援ポータルサイト」
http://www.moj.go.jp/nyuukokukanri/kouhou/nyuukokukanri10_00047.html
■法務省「生活・就労ガイドブック~日本で生活する外国人の方へ~」
http://www.moj.go.jp/nyuukokukanri/kouhou/nyuukokukanri10_00056.html
■厚生労働省「外国人雇用はルールを守って適正に(平成31年4月版)」
https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/gaikokujinzai/pdf/3_190528.pdf
■厚生労働省「リーフレット」
https://www.mhlw.go.jp/bunya/koyoukintou/pamphlet/index.html#pam-01
※男女雇用機会均等法、育児・介護休業法、パートタイム労働法、紛争解決援助制度に 関するもの
■厚生労働省「外国人労働者向け労災保険給付パンフレット」
https://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/gyousei/rousai/gaikoku-pamphlet.html
■日本年金機構「社会保障協定及び外国語での年金制度のご案内」
https://www.nenkin.go.jp/pamphlet/20190401.html

  • ※15:法務省「平成30年末現在における在留外国人数について」
    http://www.moj.go.jp/nyuukokukanri/kouhou/nyuukokukanri04_00081.html
  • ※16:法務省「外国人材の受入れ・共生のための総合的対応策検討会」
    http://www.moj.go.jp/hisho/seisakuhyouka/hisho04_00066.html

特定技能の創設によって、外国人雇用の選択肢が増えることとなりました。自社の各職場において、どのような業務で外国人に活躍してもらえるかを模索された上で、実際に雇用をするにあたっては、適切な在留資格の選択と準備をしていく必要があります。特定技能を含む在留資格制度や外国人の雇用管理においては、複雑な要件や法令も存在するため、必要に応じて、行政書士や社会保険労務士などの専門家に相談をして進められるとよいでしょう。

【社会保険労務士法人 名南経営】

名南コンサルティングネットワークグループの一社として、幅広い顧客層にさまざまな経営コンサルティングなどを実践している。

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