第64回令和3年度 税制改正の大綱について
-経営者が注目すべきポイント-

※この文章は、税理士法人名南経営によるものです。

※この文章は、令和3年1月8日現在の情報に基づいて作成しています。具体的な対応については、貴社の顧問税理士などの専門家とご相談ください。また、本内容は、令和3年度税制改正の大綱に基づき作成していますが、改正法は国会の審議を経て決定するものであり、大綱とは内容が変わる可能性がありますのでご留意ください。

令和2年12月10日に与党から令和3年度税制改正大綱が公表され、同月21日に令和3年度税制改正の大綱が閣議決定されました。
今回の税制改正では、ウィズコロナ・ポストコロナの「新たな日常」に対応した事業再構築を早急に進めていく観点から、多くの施策が盛り込まれました。まず、2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする、いわゆる「2050年カーボンニュートラル」の実現に向けた投資促進税制が創設されます。次に、デジタルトランスフォーメーション投資促進税制が創設され、さらに雇用環境の悪化に対応するために、人材確保等促進税制への見直しや所得拡大促進税制の見直しなどの改正が行われます。
その他、個人所得課税においては、内需の柱となる住宅投資を幅広い購買層に対して喚起する観点から住宅ローン控除の特例の延長・緩和や、雇用の流動化には配慮しつつも課税の公平性の観点から退職所得課税の適正化が行われます。また、税務関係書類における押印義務の見直し、電子帳簿等保存制度の見直しといった、納税環境整備についての改正も行われます。
本コラムでは、それらの中で中小企業に関わる改正事項を中心に、経営者が注目すべき税制改正の内容について解説します。

1.中小企業の経営資源の集約化に資する税制の創設

中小企業がM&Aにより事業再編を行うことを推し進める制度で、「中小企業等経営強化法」の改正を前提に創設されます。中小企業が他の法人の株式等を取得した場合に、株式等の価値の低落による損失(簿外債務などのリスク)に備えるため、一定の要件の下で、その取得価額の最大70%の金額を損金の額に算入することができます。損金の額に算入された金額は原則として5年間の据置期間経過後に5年にわたって取り崩し益金の額に算入されます。
この制度の対象事業者、要件、概要は図表1の通りです。

<図表1> 中小企業の経営資源の集約化に資する税制
対象事業者 青色申告書を提出する中小企業者※1のうち、中小企業等経営強化法の改正法の施行日から令和6年3月31日までの間に経営力向上計画(経営資源集約化措置(仮称)が記載されたものに限る)の認定を受けたもの
要件
  • ① 認定を受けた経営力向上計画に従って他の法人の株式等の取得(購入による 取得に限る)をすること
  • ② ①の株式等をその取得の日を含む事業年度終了の日まで引き続き有していること
  • ③ ①の株式等の取得価額が10億円以下であること
  • ④ ①の株式等の価格の低落による損失に備えるため、その株式等の取得価額の70%以下の金額を中小企業事業再編投資損失準備金として積み立てること
概要 【株式等を取得し準備金を積み立てた事業年度】
積み立てた金額を損金算入できる

【積み立てた事業年度から5年間】
その株式等の全部または一部を有しなくなった場合やその株式等の帳簿価額を減額した場合は準備金を取り崩して益金算入する

【積み立てた事業年度から5年経過後】
準備金残高を5年間で均等額を取り崩して益金算入する
  • ※1:中小法人、中小企業者、中小企業者等の範囲については下記リンク先をご参照ください。ただし、前3事業年度の所得金額の平均額が15億円を超える法人は適用除外となります。

2.給与等の引き上げおよび設備投資等を行った場合等の税額控除制度※2の見直し

この税制は、原則である大企業向けの「賃上げ・生産性向上のための税制」と中小企業向けの特例である「所得拡大促進税制」から構成されています。現行制度では、両者とも、継続雇用者(当期および前期の全期間の各月において給与等の支給がある雇用者のうち一定の者)への給与等の支給額が増加していることを要件としています。これを、「賃上げ・生産性向上のための税制」については、新規雇用者への給与等の支給額が増加していることを要件とし、「所得拡大促進税制」については、給与等の総額が増加していることにそれぞれ見直されます。また、控除税額の計算についても見直しがされた上で、令和3年4月1日から令和5年3月31日までに開始する事業年度について適用されます。個人の所得の増大というよりも、雇用の維持・確保・新規雇用に重点をおいた制度となっています。

  • ※2:国税庁No.5927 給与等の引上げ及び設備投資等を行った場合等の税額控除(原則)
    https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5927.htm
    国税庁No.5927-2 給与等の引上げ及び設備投資等を行った場合等の税額控除(中小企業者等の特例)
    https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5927-2.htm

(1)賃上げ・生産性向上のための税制の見直し

現行の「賃上げ・生産性向上のための税制」は、図表2の改正案である「人材確保等促進税制」へと見直される予定です。

<図表2> 賃上げ・生産性向上のための税制の見直し

  現行制度
(賃上げ・生産性向上のための税制)
改正案
(人材確保等促進税制)
適用要件 次の①、②いずれも満たすこと
  • ① 継続雇用者給与等支給額が前年度から3%以上増加
  • ② 国内設備投資額が当期減価償却費の90%以上
新規雇用者給与等支給額※3が前年度から2%以上増加
税額控除 給与等支給額の前年度からの増加額の15%の税額控除 控除対象新規雇用者給与等支給額※4の15%の税額控除
【上乗せ措置】
教育訓練費が比較教育訓練費(前期と前々期の年平均)に対して20%以上増加した場合は5%上乗せし、給与等支給額の前年度からの増加額の20%(15%+5%)の税額控除
【上乗せ措置】
教育訓練費が前年度の教育訓練費に対して20%以上増加した場合は5%上乗せし、控除対象新規雇用者給与等支給額※4の20%(15%+5%)の税額控除
控除限度額 法人税額の20%を上限 法人税額の20%を上限
  • ※3:国内の事業所において新たに雇用した雇用保険法の一般被保険者(支配関係がある法人から異動した者および海外から異動した者を除く)に対してその雇用した日から1年以内に支給する給与等の支給額(雇用調整助成金およびこれに類するものの額を控除しない)をいう。
  • ※4:国内の事業所において新たに雇用した者(支配関係がある法人から異動した者および海外から異動した者を除く)に対してその雇用した日から1年以内に支給する給与等の支給額をいう。要件の新規雇用者給与等支給額と異なり、雇用保険の一般被保険者に対するものに限られない。ただし、給与等支給額の前年度からの増加額が上限。

(2)所得拡大促進税制(中小企業者等の特例)の見直し

次に、中小企業者等※1について、現行制度と改正案の比較は図表3の通りです。現行制度では「賃上げ・生産性向上のための税制」との選択適用が可能ですが、改正後も「人材確保等促進税制」との選択適用が可能と考えられます。例えば、本特例の適用要件を満たさない中小企業は、「人材確保等促進税制」の適用を検討できると考えられますが今後の情報に注目が必要です。

<図表3> 所得拡大促進税制の見直し

  現行制度 改正案
適用要件 継続雇用者給与等支給額※5が前年度から1.5%以上増加 雇用者給与等支給額※6が前年度から1.5%以上増加
税額控除 給与等支給額※5の前年度からの増加額の15%の税額控除 給与等支給額※7の前年度からの増加額の15%の税額控除
【上乗せ措置】
継続雇用者給与等支給額※5が前年度から2.5%以上増加、かつ、次のa、bのいずれかを満たす場合は10%上乗せし、給与等支給額の前年度からの増加額の25%(15%+10%)の税額控除
  • a. 教育訓練費の額が前年度から10%以上増加
  • b. 中小企業等経営強化法の経営力向上計画の認定を受けたもので、経営力向上計画に従って経営力向上が確実に行われたものとして証明がされたこと
【上乗せ措置】
雇用者給与等支給額※6が前年度から2.5%以上増加、かつ、次のa、bのいずれかを満たす場合は10%上乗せし、給与等支給額※7の前年度からの増加額の25%(15%+10%)の税額控除
  • a. 教育訓練費の額が前年度から10%以上増加
  • b. 中小企業等経営強化法の経営力向上計画の認定を受けたもので、経営力向上計画に従って経営力向上が確実に行われたものとして証明がされたこと
控除限度額 法人税額の20%を上限 法人税額の20%を上限
  • ※5:雇用調整助成金およびこれに類するものの額を控除する。
  • ※6:雇用調整助成金およびこれに類するものの額を控除しない。
  • ※7:雇用調整助成金およびこれに類するものの額を控除して計算したものを上限とする。

3.中小企業の設備投資減税の見直し

中小企業向けの主な設備投資減税は、それぞれ次のように見直されます。

(1)中小企業投資促進税制

対象となる法人に商店街振興組合を加え、不動産業・物品賃貸業・料亭など(一定のものに限る)を対象となる指定事業に追加したうえで、適用期限が2年間延長されます。

① 制度の概要

青色申告書を提出する中小企業者等※1および商店街振興組合が、令和5年3月31日までに対象設備を取得などして指定事業の用に供した場合に、図表4に示す特別償却が可能です。資本金が3,000万円以下の中小企業者については、特別償却または税額控除の選択適用が可能です。

<図表4> 中小企業投資促進税制の概要

区分 資本金3,000万円以下 資本金3,000万円超1億円以下
特別償却 取得価額×30%
税額控除 取得価額×7%※8
  • ※8:「中小企業経営強化税制」と合わせて法人税額の20%が上限

② 対象設備

対象設備は図表5の通りです。新品が対象であり、中古品は対象となりません。従来、貸付用の設備は対象外でしたが、対象となる指定事業に物品賃貸業が追加されたことから、今後、法律や政省令の内容に注目が必要です。

<図表5> 中小企業投資促進税制の対象設備

対象設備※9 金額その他の要件
機械装置 1台または1基160万円以上
測定工具および検査工具 1台または1基120万円以上、または、
1台または1基30万円以上かつ合計120万円以上
一定のソフトウェア※10 一のソフトウェア70万円以上
普通貨物自動車 車両総重量3.5t以上
内航船舶 取得価額×75%が対象
  • ※9:匿名組合契約等の目的である事業の用に供するものを除く。
  • ※10:複写して販売するための原本、開発研究用のもの、サーバー用OSのうち一定のものなどは除く。

③ 指定事業

対象となる指定事業は次のいずれかの事業であり、図表5の対象設備をその事業の用に供することが要件となっています。事業は主たる事業である必要はありません。赤字部分は今回追加された事業です。

製造業、建設業、鉱業、卸売業、道路貨物運送業、倉庫業、港湾運送業、ガス業、小売業、一般旅客自動車運送業、海洋運輸業及び沿海運輸業、内航船舶貸渡業、旅行業、こん包業、郵便業、損害保険代理業、情報通信業、学術研究、専門・技術サービス業、宿泊業、洗濯・理容・美容・浴場業、その他の生活関連サービス業、映画業、教育、学習支援業、医療、福祉業、協同組合、サービス業(廃棄物処理業、自動車整備業、機械等修理業、職業紹介・労働者派遣業、その他の事業サービス業)、農業、林業、漁業、水産養殖業、不動産業、物品賃貸業、料理店業その他の飲食店業(料亭、バー、キャバレー、ナイトクラブその他これらに類する事業(生活衛生同業組合の組合員が行うものに限る)を含む)

  • (注)電気業、水道業、娯楽業(映画業を除く)などは対象になりません。
    また、性風俗関連特殊営業に該当する事業も対象となりません。

(2)商業・サービス業・農林水産業活性化税制

適用期限である令和3年3月31日をもって廃止されます。

(3)中小企業経営強化税制

対象設備にM&Aの効果を高める設備として「経営資源集約化設備(D類型)」を追加したうえで、適用期限が2年間延長されます。

① 制度の概要

青色申告書を提出する中小企業者等※1が、中小企業等経営強化法の認定を受けた経営力向上計画に基づき、令和5年3月31日までに対象設備を取得などして、指定事業の用に供した場合には、その対象設備について、図表6の通り、即時償却または税額控除の選択適用が可能です。
「中小企業投資促進税制」と比較して、即時償却が可能な点、資本金3,000万円超1億円以下でも税額控除が選択可能な点、資本金3,000万円以下では税額控除の割合が大きい点において優遇されています。

<図表6> 中小企業経営強化税制の概要

区分 資本金3,000万円以下 資本金3,000万円超1億円以下
特別償却 即時償却
税額控除 取得価額×10%※11 取得価額×7%※11
  • ※11:「中小企業投資促進税制」と合わせて法人税額の20%が上限

② 対象設備

「中小企業経営強化税制」の対象設備は、図表7のいずれかに該当するもので、新品が対象であり、中古品や貸付用の設備は対象となりません。
手続きとしては、設備を取得する前に、生産性向上設備(A類型)の場合は「工業会等による証明書」を、収益力強化設備(B類型)および新型コロナウイルス感染症等の影響に対応するため追加されたテレワーク等を促進するためのデジタル化設備(C類型)の場合には「経済産業局による確認書」を取得し、それらの写しを添付のうえ、事業に応じた主務大臣に経営力向上計画を申請し認定を受ける必要があります。今回追加されることとなる経営資源集約化設備(D類型)についても、B類型やC類型と同様の手続きになると考えられます。

<図表7> 中小企業経営強化税制の対象設備
■生産性向上設備(A類型)

対象設備 金額要件 販売開始時期 要件
機械装置※12、※16、※17 1台または1基
160万円以上
10年以内 旧モデル比で年平均1%以上向上する設備(ソフトウェアおよび旧モデルがないものは販売開始時期の要件を満たすもの)
測定工具および
検査工具※17
1台または1基
30万円以上
5年以内
器具備品※13、※17 1台または1基
30万円以上
6年以内
建物附属設備※14、※16、※17 一の取得価額
60万円以上
14年以内
ソフトウェア※15、※17
(設備の稼働状況に係る情報収集機能および分析・指示機能を有するものに限る)
一のソフトウェア 70万円以上 5年以内

■収益力強化設備(B類型)、デジタル化設備(C類型)

対象設備 金額要件 収益力強化設備
(B類型)要件
デジタル化設備
(C類型)要件
機械装置※12、※16、※17 1台または1基160万円以上 経済産業大臣の確認を受けた年平均の投資利益率5%以上の投資計画に記載されたもの 経済産業大臣の確認を受けた遠隔操作、可視化、自動制御化のいずれかを可能にする設備として投資計画に記載されたもの
工具※17 1台または1基30万円以上
器具備品※13、※17 1台または1基30万円以上
建物附属設備※14、※16、※17 一の取得価額60万円以上
ソフトウェア※15、※17 一のソフトウェア70万円以上

■経営資源集約化設備(D類型)

経営資源集約化設備(D類型)要件
計画終了年度に修正ROAまたは有形固定資産回転率が一定以上上昇する設備として、投資計画に記載されたもの
  • ※12:発電の用に供する設備にあっては、主として電気の販売を行うために取得などをするもの(経営力向上計画の実施時期のうちで発電した電気の販売を行う期間中の発電量のうち、販売を行うことが見込まれる電気の量が占める割合が2分の1を超える発電設備など)を除く。
  • ※13:電子計算機については、情報通信業のうち自己の電子計算機の情報処理機能の全部または一部の提供を行う事業を行う法人が取得または製作をするものを除く。医療機器にあっては、医療保健業を行う事業者が取得または製作をするものを除く。
  • ※14:医療保健業を行う事業者が取得または建設をするものを除くものとし、発電の用に供する設備にあっては主として電気の販売を行うために取得などをするものを除く。
  • ※15:複写して販売するための原本、開発研究用のもの、サーバー用OSのうち一定のものなどは除く。
  • ※16:発電設備などの取得などをして税制措置を適用する場合には、経営力向上計画の認定申請時に「発電設備等の概要等に関する報告書」およびその記載内容を証する書類の添付が必要。
  • ※17:働き方改革に資する減価償却資産であって、生産等設備を構成するものは、本制度の対象となる場合あり。

③ 指定事業

「中小企業投資促進税制」の指定事業と同様です。従来は、「中小企業投資促進税制」または「商業・サービス業・農林水産業活性化税制」の指定事業に該当する事業となっていました。今回の改正により、「商業・サービス業・農林水産業活性化税制」は廃止されますが、「中小企業投資促進税制」に対象事業が拡大されたことで、結果的に従来と同様の範囲となっています。

(4)中小企業防災・減災投資促進税制

対象資産の見直しなどを行った上で、適用期限が2年間延長されます。

① 制度の概要

令和元年7月16日から令和5年3月31日までの間に中小企業等経営強化法の事業継続力強化計画または連携事業継続力強化計画の認定を受けた中小企業者等※1が、図表9の対象資産をその認定を受けた日から1年以内に取得などをして、事業の用に供する場合には、その対象設備について図表8の通り特別償却が可能です。
なお、税額控除制度は設けられていません。

<図表8> 中小企業防災・減災投資促進税制の概要

区分 資本金1億円以下
特別償却 取得価額×20%
(令和5年4月1日以後に取得などをする資産については18%)
税額控除 なし

② 対象資産

<図表9> 中小企業防災・減災投資促進税制の対象資産(赤字は追加資産)

対象設備 取得価額 設備の例
機械および装置 100万円以上 自家発電設備、排水ポンプ、制震・免振装置、浄水装置、揚水ポンプ
(これらと同等に、自然災害の発生が事業活動に与える影響の軽減に資する機能を有するものを含む)
器具および備品 30万円以上 自然災害等の発生が事業活動に与える影響の軽減に資する機能を有する全ての設備、感染症対策のために取得等をするサーモグラフィ
建物附属設備 60万円以上 自家発電設備、キュービクル式高圧受電設備、変圧器、配電設備、電力供給自動制御システム、照明設備、貯水タンク、浄水装置、排水ポンプ、揚水ポンプ、格納式避難設備、止水板、制震・免震装置、防水シャッター、無停電電源装置(UPS)
(これらと同等に、自然災害の発生が事業活動に与える影響の軽減に資する機能を有するものを含む)
  • (注1)架台については、本税制の対象設備をかさ上げするために取得などをするもののみ対象となる。
  • (注2)これまで対象設備であった火災報知器、スプリンクラー、消火設備、排煙設備および防火シャッターは対象外となる。
  • (出典)経済産業省「令和3年度(2021年度)経済産業関係税制改正について」P34
    https://www.meti.go.jp/main/zeisei/zeisei_fy2021/zeisei_k/pdf/zeiseikaisei.pdf

4.その他の中小企業関連税制の見直し

上記以外にも中小企業に関連する税制のうち主なものについて次の通り、延長や見直しが行われます。

(1)中小企業の法人税率の特例

中小法人※1の年800万円以下の所得金額に対する税率を19%から15%に軽減する措置について、適用期限が2年間延長され、令和5年3月31日までに開始する事業年度まで適用されます。

(2)中小企業技術基盤強化税制

図表10の通り、中小企業者等※1の試験研究費の税額控除率および控除限度額について見直しが行われたうえで適用期限が2年間延長され、令和5年3月31日までに開始する事業年度について適用されます。

<図表10> 中小企業技術基盤強化税制の見直し(赤字箇所)

項目 現行制度 改正案
税額
控除率の
計算式

(注)税額控除率の上限は17%

  • ① 増減試験研究費割合※18>8%の場合
    税額控除率=12%+
    (増減試験研究費割合-8%)×0.3
  • ② 増減試験研究費割合※18≦8%の場合
    税額控除率=12%

【上乗せ措置】

  • ③ 試験研究費割合※19>10%の場合
    ①②で求めた税額控除率に次の上乗せ割合を加算
    上乗せ割合=税額控除率×控除割増率
    控除割増率(上限10%)=
    (試験研究費割合※19-10%)×0.5

(注)税額控除率の上限は17%

  • ① 増減試験研究費割合※189.4%の場合
    税額控除率=12%+
    (増減試験研究費割合-9.4%)×0.35
  • ② 増減試験研究費割合※189.4%の場合
    税額控除率=12%

【上乗せ措置】

  • ③ 試験研究費割合※19>10%の場合
    ①②で求めた税額控除率に次の上乗せ割合を加算
    上乗せ割合=税額控除率×控除割増率
    控除割増率(上限10%)=
    (試験研究費割合※19-10%)×0.5
控除
限度額

当期の法人税額の25%

【上乗せ措置】
以下の通り上乗せされ、当期の法人税額の35%が上限

  • ・ 上記①の場合の上乗せ額
    当期の法人税額×10%
  • ・ 上記②かつ③の場合の上乗せ額
    当期の法人税額×
    (試験研究費割合※19-10%)×2
    (当期の法人税額×10%が上限)

当期の法人税額の25%

【上乗せ措置】
以下の通り上乗せされ、当期の法人税額の35%が上限

  • ・ 上記①の場合
    当期の法人税額×10%
  • ・ 上記②かつ③の場合
    当期の法人税額×
    (試験研究費割合※19-10%)×2
    (当期の法人税額×10%が上限)

【5%の上乗せ措置】
ただし、令和3年4月1日から令和5年3月31日までに開始する事業年度において、次のa、bいずれの要件を満たす場合には5%上乗せされ、当期の法人税額の30%(25%+5%)
(上記①の場合、当期の法人税額の40%(35%+5%))

  • a. 当期の売上金額が令和2年2月1日前に最後に終了した事業年度の売上金額から2%以上減少
  • b. 当期の試験研究費の額が令和2年2月1日前に最後に終了した事業年度の試験研究費の額を超える
  • ※18:増減試験研究費割合=(適用年度の試験研究費-比較試験研究費)÷比較試験研究費
    比較試験研究費=適用年度開始の日前3年以内に開始した事業年度の3年分の試験研究費の平均
  • ※19:試験研究費割合=適用年度の試験研究費÷平均売上金額

(3)非上場株式等に係る相続税の納税猶予の特例制度(法人版事業承継税制)

現行制度では、後継者が相続により株式を取得する場合には、先代経営者が60歳未満で亡くなった場合を除き、相続の直前に役員であることが要件となっています。今回の改正により、次の①と②の場合には、後継者が先代経営者の相続開始の直前に役員でない場合であっても適用を受けることが可能になります。

  1. ①先代経営者が70歳未満で亡くなった場合(一般措置も同様)
  2. ②後継者が経営承継円滑化法施行規則の確認を受けた特例承継計画に特例後継者として記載された者である場合

なお、贈与税の納税猶予制度については、現行通り、後継者は贈与の日まで3年以上継続して役員であることが要件となります。

【税理士法人名南経営】

名南コンサルティングネットワークの一社として、幅広い顧客層にさまざまな経営コンサルティングなどを実践している。